第34話:青い石の記憶
ペンダントの青い石が、
微かに光を放った。
「光った……?」
ひよりが目を丸くする。
翔も信じられないものを見る顔だった。
「いやいやいや」
「今絶対光ったよな?」
「光った」
智が即答する。
「見間違いじゃない」
翼の手の中で、
青い石は鼓動のように明滅していた。
まるで。
何かに反応しているみたいに。
「そのペンダント……」
澪が呟く。
翼が顔を上げる。
澪は石を見つめていた。
「見覚えがあるのか?」
「ある」
即答だった。
しかし。
次の瞬間には苦しそうに眉をひそめる。
「でも思い出せない」
まただ。
A-01に関する情報だけ、
何かに遮られている。
「記憶封鎖」
榊が低く言う。
「しかもかなり強力なものだ」
「未来の技術か?」
智が聞く。
「おそらく」
榊はペンダントを見る。
「だが、この石は違う」
「違う?」
「未来のものではない」
その言葉に全員が反応する。
「どういうことだ」
翼が聞く。
榊は少し考え、
静かに答えた。
「正確には分からない」
「だが未来の技術とは構造が違う」
翔が頭を抱える。
「また謎が増えた」
「いつものこと」
智が言う。
「慣れるな」
その時だった。
青い石が強く輝く。
「っ!?」
翼の視界が揺れる。
そして。
頭の中に声が響いた。
『聞こえる?』
少女の声。
A-01だ。
「……!」
翼が息を呑む。
『時間がない』
優しい声。
でもどこか焦っている。
『まだ思い出しちゃ駄目』
「お前は誰なんだ」
無意識に口に出していた。
周囲の全員が驚く。
「翼?」
沙良が聞く。
だが翼には聞こえていない。
『ごめん』
少女の声が揺れる。
『今の私は名前を言えない』
「なぜだ」
『言った瞬間に消されるから』
背筋が冷えた。
「誰に」
数秒の沈黙。
そして。
『観測者』
その単語が響く。
以前スマホから聞こえた、
あの機械音声。
『もう私を見つけてるはずなのに』
『まだ観測されてない』
少女は続ける。
『だから今だけ話せる』
翼はペンダントを強く握る。
「何をすればいい」
すると。
少女は少しだけ笑った。
懐かしそうに。
『やっぱり同じこと聞くんだね』
その言葉に胸が痛む。
そして。
『澪を守って』
「え?」
翼は目を見開く。
『これから起きることを止めるには』
『まず澪を守らなきゃいけない』
その瞬間。
通信が乱れ始めた。
『まずい』
少女の声が遠ざかる。
『もう見つかった』
「待て!」
『翼』
最後に。
今までで一番優しい声が聞こえた。
『約束、忘れないで』
そして通信は途切れた。
部室に静寂が戻る。
翼はゆっくり顔を上げる。
全員がこちらを見ていた。
「……今、誰と話してた?」
智の問いに、
翼は静かに答える。
「A-01だ」
そして。
「澪を守れって言われた」
その瞬間。
部室の窓の外で、
誰かの影が一瞬だけ通り過ぎた。




