第32話:再開?
部室の空気が止まった。
誰も声を出せない。
ドアの前に立つ少女。
金色の髪。
写真で見た顔。
A-01。
間違いない。
「……え?」
最初に声を出したのはひよりだった。
少女は全員を見渡す。
そして。
翼を見た。
その瞬間。
少女の表情が固まった。
「……」
何かを言いかける。
でも言葉にならない。
翼も動けなかった。
写真でしか見たことがない。
それなのに。
なぜか懐かしい。
胸が苦しい。
会ったことなどないはずなのに。
「きみは……」
翼が呟く。
少女の肩が小さく震えた。
数秒。
沈黙。
そして。
少女はゆっくり笑った。
どこか寂しそうに。
「やっぱり」
小さな声。
「覚えてないんだね」
部室が静まり返る。
「知ってるのか」
翼が聞く。
少女は答えない。
代わりに視線を落とした。
「……ごめん」
「何が」
「来ない方がよかった」
その言葉に、
澪が反応する。
「待って」
少女が振り向く。
澪は苦しそうな顔をしていた。
「あなた……」
頭を押さえる。
「知ってる」
少女の瞳が揺れた。
「……澪」
その名前を呼んだ瞬間。
澪の顔色が変わる。
まるで封じられていた記憶が、
一瞬だけ揺らいだようだった。
「っ……!」
しかし。
次の瞬間には消える。
思い出せない。
届かない。
少女は悲しそうに微笑んだ。
「やっぱり駄目か」
翼は一歩前へ出る。
「教えてくれ」
少女が顔を上げる。
「きみは誰なんだ」
聞きたかったこと。
ずっと引っかかっていたこと。
少女は少しだけ黙った。
そして。
ゆっくり答える。
「私の名前は——」
その瞬間。
部室の照明が激しく明滅した。
バチッ!!
窓ガラスが震える。
「なっ!?」
翔が立ち上がる。
少女の表情が変わる。
初めて焦りが見えた。
「まずい」
「どうした!?」
翼が叫ぶ。
少女は窓の外を見る。
夕焼けだった空が、
一瞬だけ赤黒く染まった。
澪が息を呑む。
「時間軸干渉……!?」
榊も立ち上がる。
「ここまで早いのか」
少女は翼を見る。
真っ直ぐ。
今までで一番真剣な目だった。
「翼」
初めて名前を呼ぶ。
懐かしそうに。
そして。
少しだけ泣きそうに。
「今はまだ、思い出さないで」
その言葉と同時に。
少女の身体が、
光の粒になって崩れ始めた。




