表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/36

第29話:A-01

 澪が頭を押さえる。


「っ……!」


 冷静そうな澪が、苦しそうに顔を歪めていた。


「澪!」


 翼が駆け寄る。


「大丈夫か!?」


 澪は息を荒げながら写真を見つめる。


「知ってる……」


「え?」


「絶対に知ってるの……!」


 震える声。


 だが次の瞬間。


「名前が……出てこない……!」


 まるで見えない壁に阻まれているようだった。


 榊も険しい表情になる。


「記憶の操作か」


「そんなことできるのか」


 智が聞く。


「未来の技術なら不可能じゃない」


 榊は写真の少女を見る。


「だが、ここまで完全なのは異常だ」


 翔が写真を覗き込む。


「俺は普通に知らない子にしか見えねぇぞ」


「それが普通」


 澪が苦しそうに言う。


「問題は私達」


 写真を見るたびに、


 胸の奥がざわつく。


 知っている。


 だが思い出せない。


 そんな矛盾した感覚。


 その時だった。


 ピッ。


 ひよりのスマホに新しい文字が表示される。


 《閲覧権限確認》


「また出た……」


 ひよりが青ざめる。


 さらに文字が続く。


 《対象コード:A-01》


 《保護対象》


 《検索許可》


「検索許可?」


 沙良が首を傾げる。


「つまり探していいってことか?」


 翔が言う。


 しかし。


 その直後だった。


 画面がノイズで乱れる。


 そして最後の一文が現れる。


 《ただし接触は推奨されない》


 全員が固まった。


「は?」


 翔が声を漏らす。


「探せ。でも会うな?」


「無茶苦茶だろ」


 智も眉をひそめる。


 榊は静かに目を細めた。


「……嫌な予感がするな」


 その時。


 翼の頭に再び断片が流れ込む。


 夜。


 雨。


 駅のホーム。


 金髪の少女が立っている。


 振り返る。


 そして微笑む。


『見つけないで』


 優しい声。


 なのに。


 どこか悲しかった。


「っ!」


 翼は頭を押さえる。


「翼くん!?」


 沙良が支える。


「今度は何見たの!?」


 翼は荒い息を整える。


「駅だ」


「駅?」


「それと……」


 写真の少女を見る。


「この子の声を聞いた」


 部室が静まり返る。


「何て言った」


 榊が聞く。


 翼はゆっくり答えた。


「——見つけないで」


 澪の顔色が変わった。


 その反応を見て、


 全員が気付く。


 この少女はただの重要人物じゃない。


 もっと深く、


 未来の橘翼に関わる存在だ。


 そしてその時。


 ひよりのスマホに最後の通知が届く。


 画像ファイル。


 添付されたのは一枚だけ。


 現代の風景だった。


 どこかの駅。


 そしてホームの端に、


 金色の髪の少女が小さく写っていた。


 写真の右下には日時。


 撮影時刻:3時間前


 全員が息を呑む。


 A-01は。


 過去でも未来でもない。


 今、この時代にいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ