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第27話:『排除プロセス』

『排除プロセスを開始します』


 機械的な声が部室に響いた。


 誰も動けない。


 ひよりの手の中でスマホが震え続ける。


「な、何これ……」


 ひよりの顔から血の気が引いていた。


 翔も冗談を言えない。


「……悪質なイタズラ、じゃないよな」


 澪はすでにスマホを睨んでいた。


 その目は明らかに警戒している。


「切れ」


 榊が言う。


 ひよりは慌てて通話終了ボタンを押す。


 だが。


 切れない。


 画面が真っ黒になる。


 そして。


 白い文字だけが浮かび上がった。


 《TARGET LOCK》


「っ……!」


 次の瞬間。


 部室の照明が一斉に消えた。


 真っ暗。


「きゃっ!?」


 沙良の声。


 智は顔を見るからに動揺している。


「おいおいおい!」


 翔も焦る。


 そして。


 窓の外が、一瞬だけ赤く染まった。


 翼は息を呑む。


 その景色を知っている。


 どこかで見た。


 何度も。


 壊れた未来で。


 赤い空。


『翼』


 誰かの声。


 知らないはずなのに懐かしい。


『今度は間違えるな』


「っ!」


 頭痛。


 視界が揺れる。


 その時。


 バチン!


 照明が戻った。


 全員が息を呑む。


 部室は元通り。


 だが。


 ひよりのスマホは完全に壊れていた。


 画面に蜘蛛の巣みたいなヒビが走っている。


「……何なんですかこれ」


 ひよりの声は震えていた。


 澪がスマホを受け取る。


 数秒確認し、


 顔をしかめた。


「未来側の観測システム」


「未来?」


 沙良が聞き返す。


「正式名称は知らない」


 澪は真剣な顔だった。


「でも私達がいた時代にも存在した」


「敵なのか」


 翼が聞く。


 澪は即答しなかった。


「敵というより……」


 一度言葉を切る。


「管理者」


 その単語が妙に不気味だった。


「時間軸が大きく乱れた時に介入する存在」


 智が腕を組む。


「じゃあひよりが危険認定された?」


「おそらく」


 ひよりが青ざめる。


「私そんな悪いことしてませんよ!?」


「そういう問題じゃない」


 榊が低く言う。


「ひよりは未来の情報を見ている」


「本来知るはずのない情報を」


 澪が続ける。


「だから観測対象になった」


 部室が静まり返る。


 その時。


 翼のスマホが震えた。


「……?」


 画面を見る。


 知らない番号。


 さっきと同じだ。


 全員の顔色が変わる。


「出るな」


 榊が言う。


 だが。


 画面に表示された文字を見て、


 翼は固まった。


 《橘翼へ》


 名前が表示されている。


 番号じゃない。


 明らかに自分宛てだった。


「翼?」


 沙良が不安そうに聞く。


 翼は画面を見つめる。


 すると。


 着信画面の下に、さらに文字が現れた。


 《記憶復元率 17%》


 澪が目を見開く。


「あり得ない……」


 翼の心臓が大きく鳴る。


 そして。


 最後に一文だけ表示された。


 《被験者認証完了》


 その瞬間。


 翼の頭の中で、


 何かが大きく軋んだ。

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