表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/35

第25話:消えかけた右手

 ひよりの右手が、一瞬だけ透けた。


「……っ!?」


 沙良が息を呑む。


 翔も目を見開いた。


「今、消え……」


 ひより自身も固まっていた。


 震えるように、自分の右手を見る。


「な、なんですか今……」


 透けた手は、すぐ元に戻っている。


 でも。


 全員、確かに見た。


 “存在が薄れた”。


 部室の空気が冷たくなる。


「……始まってる」


 澪が低く呟く。


 翼は反射的にひよりの腕を掴んだ。


「大丈夫か」


「は、はい……」


 だが声は震えていた。


 いつもの元気さが消えている。


「どうすれば止まる」


 翼が澪を見る。


 澪は唇を噛み、


 そして静かに言った。


「時間軸を安定させるしかない」


「具体的には」


「原因を探す」


 榊が続ける。


「今の歪みは異常だ。本来ここまで急激には進まない」


「つまり誰かが原因?」


 智が聞く。


「可能性は高い」


 澪は部室を見回した。


「最近、何か変わったことは」


「変わったことしかないだろ」


 翔が真顔で言う。


 少しだけ空気が緩む。


 でも次の瞬間。


 ひよりが小さく呟いた。


「……あ」


 全員が見る。


「どうした?」


 翼が聞く。


 ひよりは少し迷いながら答えた。


「最近、変な夢見るんです」


 空気が変わる。


「夢?」


「知らない場所で、知らない人達がいて」


 ひよりは自分の頭を押さえる。


「でも、“知ってる気”がするんです」


 澪の表情が一気に険しくなる。


「どんな夢」


「えっと……」


 ひよりはゆっくり話し始めた。


「赤い空で」


 翼の心臓が止まりそうになる。


「壊れた街で」


 澪と榊が顔を見合わせた。


「みんな走ってて」


 ひよりの声が少し震える。


「誰かが、“クロスリンクを止めろ”って……」


 部室が静まり返った。


 翼の頭に激痛が走る。


『翼!!』


 知らない声。


 崩壊する街。


 赤い警報。


『時間がない!!』


「っ……!」


「翼!」


 沙良が支える。


 息が乱れる。


 でも。


 今の言葉で、一つだけ分かった。


 ひよりは関係している。


 この崩壊に。


「……なんで」


 澪が低く呟く。


「磯部ひよりが、“向こう”を見てるの」


 智が静かに聞く。


「向こうって未来か」


 澪は答えない。


 その沈黙が、逆に重かった。


 翔が不安そうに言う。


「なあ……これマジでヤバいやつ?」


 榊が短く答える。


「ああ」


 そして。


「最悪の場合、ひよりだけじゃ済まない」


 その言葉に、


 全員の顔色が変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ