大切な遊び相手
「……負け……か」
再びHPがゼロになった黄昏。
もう既に手札がないことから、リバイブをすることも出来ない。
だからこそ、黄昏はその負けを素直に認めた。
「うん……ユーリの……勝ち」
そしてユーリは、少し寂しそうに自分の勝利を宣言した。
(終わっちゃった)
この決闘はユーリに取って、これまでにないくらい楽しい時間だった。
だが、その決闘ももう終わり、ユーリの勝利で決着は付いてしまったのだ。
「なに全てが終わったみたいな顔をしてるんだよ」
「そんな顔してる?」
「してるさ」
そんなユーリに、消えゆく黄昏が話しかけた。
「カードゲームなんて所詮運ゲーだ。今日は引きが弱くて負けたが、次は俺が勝つ!」
「――え?」
思いがけない一言に、ユーリは思わず戸惑いの声を上げた。
これまでのVRでは、決着が付いたらそれで終わりだった。
お互いの力量の差が決定付けられ、もうその相手と競い合うことはなくなっていた。
――だが、ブレイブカードでは、カードゲームでは、そうではないのだ。
カードゲームなんてものは所詮は運ゲーだ。
どれだけ強いデッキを作ったところで、その時のカードの引き次第で、弱い相手にだってあっさりと負けてしまうこともある。
そう言った面で言えば、一部の人から不況を買うものであるだろう。
どれだけ強くなっても、絶対的な強さは手に入らないのだから。
どれだけ強くなったとしても負けることがある。
どれだけ弱かったとしても勝つことがある。
運というどうしようもない要素によって、天秤が傾くからこそ、その負けを、その勝利を、自分の実力だけのせいにせず、その運のせいにすることが出来る。
だからこそ、心の底から笑って、こう言うことが出来るのだ。
――もう一度遊ぼうぜと。
運のせいで負けたのなら、次は自分が勝てるかも知れない。
本当の意味で、自分が敗北したと思わないでいられるからこそ、容易に次に挑める。今度こそ勝てるように次に期待する。
それこそがカードゲームの一番の良さ。
カードゲームでは負けることなど、当たり前のことなのだ。
どんなデュエリストであろうとも、何回も負け、そしてその度に立ちあがり、強くなって次の戦いを、楽しみながら進んでいく。
――だから、ここで物語は終わらない。
「じゃあ、またな」
そう言って、黄昏は笑顔で消えていく。
それは黄昏からユーリに語りかけた再開の約束だった。
こうしてまた新たに黄昏とユーリの物語は始まる。
次はユーリが負けるかも知れない、次もユーリが勝てるかも知れない。
どうなるか分からない不安定な未来。
だが、どちらになったとしても、そこから更に二人の物語は進んでいくだろう。
(ユーリは……)
ユーリはその言葉を聞いて気付いた。
自分が真の意味で求めていたのはこれだったのだと。
今までのように勝つことで終わってしまうのではない、勝った先も続いていく関係性――何処までも何度でも付き合ってくれるような自分だけの遊び相手。
「うん! またね!」
黄昏の言葉に、ユーリは笑顔で言葉を返した。
ユーリはもう一人じゃない。
これから先もずっとゲームを楽しんでいけるのだ。
大好きな遊び相手と共に。
――だってこの場所は、楽しい自分達の大切な遊び場なのだから。




