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ブレイブカード  作者: きしと
Enjoy Game
29/36

大切な遊び相手


「……負け……か」


 再びHPがゼロになった黄昏。

 もう既に手札がないことから、リバイブをすることも出来ない。

 だからこそ、黄昏はその負けを素直に認めた。


「うん……ユーリの……勝ち」


 そしてユーリは、少し寂しそうに自分の勝利を宣言した。


(終わっちゃった)


 この決闘デュエルはユーリに取って、これまでにないくらい楽しい時間だった。

 だが、その決闘デュエルももう終わり、ユーリの勝利で決着は付いてしまったのだ。


「なに全てが終わったみたいな顔をしてるんだよ」

「そんな顔してる?」

「してるさ」


 そんなユーリに、消えゆく黄昏が話しかけた。


「カードゲームなんて所詮運ゲーだ。今日は引きが弱くて負けたが、次は俺が勝つ!」

「――え?」


 思いがけない一言に、ユーリは思わず戸惑いの声を上げた。


 これまでのVRでは、決着が付いたらそれで終わりだった。

 お互いの力量の差が決定付けられ、もうその相手と競い合うことはなくなっていた。


 ――だが、ブレイブカードでは、カードゲームでは、そうではないのだ。


 カードゲームなんてものは所詮は運ゲーだ。

 どれだけ強いデッキを作ったところで、その時のカードの引き次第で、弱い相手にだってあっさりと負けてしまうこともある。


 そう言った面で言えば、一部の人から不況を買うものであるだろう。

 どれだけ強くなっても、絶対的な強さは手に入らないのだから。


 どれだけ強くなったとしても負けることがある。

 どれだけ弱かったとしても勝つことがある。

 運というどうしようもない要素によって、天秤が傾くからこそ、その負けを、その勝利を、自分の実力だけのせいにせず、その運のせいにすることが出来る。

 だからこそ、心の底から笑って、こう言うことが出来るのだ。


 ――もう一度遊ぼうぜと。


 運のせいで負けたのなら、次は自分が勝てるかも知れない。

 本当の意味で、自分が敗北したと思わないでいられるからこそ、容易に次に挑める。今度こそ勝てるように次に期待する。


 それこそがカードゲームの一番の良さ。

 カードゲームでは負けることなど、当たり前のことなのだ。


 どんなデュエリストであろうとも、何回も負け、そしてその度に立ちあがり、強くなって次の戦いを、楽しみながら進んでいく。


 ――だから、ここで物語は終わらない。


「じゃあ、またな」


 そう言って、黄昏は笑顔で消えていく。

 それは黄昏からユーリに語りかけた再開の約束だった。


 こうしてまた新たに黄昏とユーリの物語は始まる。

 次はユーリが負けるかも知れない、次もユーリが勝てるかも知れない。

 どうなるか分からない不安定な未来。

 だが、どちらになったとしても、そこから更に二人の物語は進んでいくだろう。


(ユーリは……)


 ユーリはその言葉を聞いて気付いた。

 自分が真の意味で求めていたのはこれだったのだと。


 今までのように勝つことで終わってしまうのではない、勝った先も続いていく関係性――何処までも何度でも付き合ってくれるような自分だけの遊び相手。


「うん! またね!」


 黄昏の言葉に、ユーリは笑顔で言葉を返した。


 ユーリはもう一人じゃない。

 これから先もずっとゲームを楽しんでいけるのだ。

 大好きな遊び相手と共に。


 ――だってこの場所は、楽しい自分達の大切な遊び場なのだから。


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