起死回生
(さて、ユーリはどうでる? 状況は限りなく詰みに近いが……)
黄昏は思考するユーリの様子を見ながら考えた。
(唯一可能性があるとするならば、氷造の守護者ミミックの効果だ。氷造の守護者ミミックは破壊された時に、墓地にあるユニット以外のカード一枚を、使用回数を一にして手札に加えることが出来る。それで氷結の一閃を手札に加えればまだ目はある)
黄昏はちらりと、灼界機龍バハムート・炎・ギアへと目を向けた。
(コネクトは複数のカードを新たな一つのカードにするブレイブカードの機能だ。
ゲームボーイアドバンス世代には、ロックマ○エグゼのプログラムアドバ○スと言った方が通りがいいか、あれはチップという扱いだったけど、アクションカードゲームとしては最高峰の出来だったよな~)
横道に思考がそれたところで、黄昏は頭を振った。
(いかんいかん。話がそれた。
まあそんな風に、手札のカード同士を融合するのがコネクトだ。
これによって作り出されたカードの残数やHPは、元となったそれぞれのカードの残数やHPによって変化する。
……バハムートは死にかけだった、フレアエンチャントは一回分しか残っていなかった。
つまり、その二つによって生み出された灼界機龍バハムート・炎・ギアは、既に死に体ってことだ)
先程と殆どHPが変わらず、あと一回でも攻撃を受ければ倒れてしまいそうな、灼界機龍バハムート・炎・ギアを見ながら、黄昏は考える。
(だからこちらに攻撃を当てられないようにキカイの効果を選んだ。氷造の守護者ミミックの効果で氷結の一閃を得たとしても、当てられる場所に来なければ意味がない。
――そう。問題は、この近づくために如何すればいいか、その一点! ユーリはどんな答えを見つける? どう言った手でこちらに近づく?)
黄昏はユーリへと視線を戻し、じっくりとその様子を伺う。
何か行動すれば、直ぐにでも対処が出来るように。
『冷たき凍土の果てに座する守護者よ』
(お! 口上! 氷造の守護者ミミックを召喚するか!)
『領域を侵犯せし、蛮族に鉄槌を齎すため、その姿を現せ!』
「顕現せよ! [氷造の守護者ミミック]!!」
ユーリの前に光が集まり、やがてそれは氷で出来た大きなミミックを形作る。
あれこそがスターターデッキ[氷造の守護者]のエースカード、氷造の守護者ミミックだ。
(さあ、どうする?)
召喚されたミミックとユーリの様子を見守る黄昏。
そんな中、ユーリは、ミミックの上に飛び乗った。
(ほう?)
その行動を興味深く見ていた黄昏は、その後のユーリの行動に、度肝を抜かれることになる。
なんとユーリは、ミミックに食われたのだ。
「え?」
突然の自爆に、思わず黄昏も、そんな間抜けな声が漏れる。
だが、黄昏も歴戦のデュエリスト、直ぐさまユーリの意図に気付いた。
「あ――いや、そうか! 不味い! ふ……いや、撃ち落とせ! バハムート!」
黄昏が一瞬停止していた間に、ユーリは動いた。
ユーリを飲み込んだミミックが、大きく跳ねて、バハムートへと向かう。
黄昏の指示を聞いたバハムートは、かなり近づかれながらも、ミミックをブレスで撃ち抜いた。
(駄目だ! 間に合わない! 判断が遅すぎた!!)
黄昏には見えていた、ブレスによって破壊されたミミック、その中にいることでブレスから守られたユーリが、消えていくミミックから飛び出していく姿が、彼女の手札には、ミミックの効果によって、墓地から手札に加わった氷結の一閃の姿があった。
「これで今度こそ終わり! [氷結の一閃]!」
バハムートの目の前に飛び出したユーリは、そのまま氷の一閃によって、バハムートを切り抜いた。
HPがゼロになったバハムートは、今度こそ光の粒子となって完全に消滅していく。
地面に着地したユーリは、近くに居るはずの黄昏を探した。
「あとは黄昏だけ……!」
DPが溜まる前に倒さないと、とはやる気持ちを抑えて黄昏を探すユーリ。
しかし、バハムートが倒される前に既に逃げ出していた黄昏は、かなり離れた場所で、逃げるために全力疾走していた。
(ははは! まさかあんな方法でバハムートを倒すとはやるな~!
だが、勝負はまだ終わってない。このまま逃げきって、カードをドローさせて貰うぜ!)
黄昏は固定武器を失っている。
このまままともにやり合ったら、武器持ちのユーリに瞬殺されるだけだろう。
頼みの綱は、あと少しで溜まるカードのドローだけ。
(最強デュエリストのデュエルは全て必然! ドローカードさえもデュエリストが創造する! なんてね。みせてやるぜ、俺のデスティニードローってやつを!)
実際にカードを創造するなんてことが出来るわけではないが、そんな俺ルールご都合ドローによってカードを引くようなつもりで、神引きをしたいと思う黄昏。
そんな黄昏のデュエルリングが、遂にDPが溜まった事により、光輝いた。
(来た!)
「DPが溜まった! どうやらツキは俺を見放さなかったらしい!」
足を止めて、ユーリの方向へと振り返る。
ユーリがドローさせまいと走ってくるが、それよりも黄昏が引く方が速い。
「俺のターン! ドロー!」
〔マジック〕【逢魔が時】回数:6(残数:6)
「う……なっ! 来るのがおせーよ!!!」
この状況では何の役にも立たないカードを引いて、妙な呻き声を上げたあと、黄昏は心からの本音を大きく叫んだ。
そしてそんな黄昏の元に、ユーリが迫る。
「ちょ……まっ! ぐあぁああ!」
ユーリの剣で、たたっ斬られて、HPがゼロになり、エクストラタイムに入る黄昏。
「[リバイブ]!」
『[逢魔が時]をコストにリバイブを発動』
リバイブが発動し、黄昏のHPが急速に戻って、部位欠損の状態異常が回復していく。
(んだけど回復したところで~!)
「くっそ! 負けるか!」
果敢にも、剣を握った相手に肉弾戦を挑もうとする黄昏。
だが、その攻撃はすらりと容易く躱され、返しの刀で切り裂かれた。




