表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイブカード  作者: きしと
Enjoy Game
22/36

Enjoy Game


 咆哮が、[樹海の決闘場]に降り注ぐ。

 木々が揺れ、土煙が舞う。


 きっとここにユニットが残っていたら、その存在を恐れて逃げ惑っていただろう。

 そう考えたユーリ自身も、明らかなボスの風格を持つそのユニットに怯み、思わず動きを止めてしまっていた。


 そんな中、黄昏がユーリの方を指差す。

 その指先が指し示す方向に、バハムートは顔を向けた。


「バハムート! 攻撃だ! 崩界のエクストリームバースト!」


 強烈なエネルギーが、バハムートの口内に集っていく。

 逃げなきゃ、とユーリが思い至ったその時には、その口から万物を破壊するブレスが吐き出されていた。

 

「――っ!?」


 ユーリの真横をブレスが通り過ぎる。

 ビームのような強力なエネルギー放射は、地面を抉り、木々をなぎ倒し、炎上させながら、下からすくい上げられるように放たれる。


 被害はユーリの周囲だけに留まらず、ユーリの後方、かなり遠い位置でも、ブレスによる破壊の影響が現れていた。


(わざと外してくれなかったら、確実にHPがゼロになってた)


 ユーリはその事実に気付き、恐れ戦く。

 そんなユーリを見て、黄昏は煽るように言った。


「偉大なる遊○王のキャラの言葉に準えて言わせて貰おうか! 強靭! 無敵! 最強! これが俺の力だ!!」


 その黄昏の言葉に合わせて、それを肯定するようにバハムートは唸る。

 まさにそれは、この強大なユニットを、黄昏が使役していることを知らしめていた。


「ユーリ! 改めて言っておくぜ! ゲームは楽しまなくちゃ意味がないんだ! どんな形であれ! 自分が楽しいと思えること全力でやらないと意味がない!」


 ユーリに語り聞かせるように、黄昏はそう明言する。

 人それぞれにプレイスタイルは異なるだろうが、そこにその人だけの楽しみを見出だすことが出来るから、人は飽きること無くゲームを楽しむことが出来るのだと。


「だからこそ! 自分の持てる全てをさらけ出して全力でこい! どんなものであろうとも! 俺が全力で! その全てを受け止めてやる!」

「いいの? ユーリは強いよ? 化け物だよ?」


 黄昏の思いを込めた言葉に、ユーリの心の壁が解かされる。

 そうしてふと言葉に出たのは、これまでの日々の中でユーリを苦しめた事実だった。

 黄昏はその言葉を聞いてもなお、強く宣言する。


「お前がどんな存在だろうが! どんな力を持っていようが! 関係ない! 俺は、俺の持てる全力を尽くして、それを打ち砕くまでだ!」


 そこまで言った黄昏は、優しい表情になってユーリに語りかける。


「だから、もう怯える必要はない。何処まででも一緒に遊んでやるからさ」


 そして最後に最も大切なことを伝えるように言った。


「――このゲームを一緒に楽しもうぜ!」

「――っ!!」


 黄昏のその言葉に、ユーリは自分の胸が高鳴ったのを感じた。


 ――化け物と言われた。

 ただ頑張って言われたとおりに生きてきただけなのに、いつの間にか恐れられて捨てられることになった。

 だからこそユーリは何処かで求めていたのだ。自分が以前のようなただの人として見られる場所を、以前のように、ただの子供として全力で遊び惚けることが出来る場所を。


 それはここにあったのだ。

 そうしてくれる相手はここにいたのだ。


 黄昏の目は決して化け物を見るような目ではなかった。

 人として相手を敬い、その個人に対して警戒を行う純粋な瞳。

 ユーリはそれを見て、求めていたものがここにあると強く実感した。


(全力でやってもいいんだ)


 ユーリの心に、その言葉が溢れる。


(心の底からこのゲームを楽しんでいいんだ)


 気付けばユーリの顔に笑みが浮かんでいた。

 そしてユーリは、自らの意思でデュエルリングに手を当てて、カードを取り出す。

 現出した白いカードを握り、天を高く掲げた。


 黄昏がこちらの様子を優しく見守る中で、ユーリはこれまでの自分と決別するように、大きく叫んだ。


「[氷造(ひょうぞう)のゴーレム]! 召喚!」


 氷で出来たゴーレムが、ユーリの目の前に現れる。

 そしてそれを召喚したユーリは、やる気に満ちあふれた笑みで黄昏をみた。


「本気でいくからね!」

「ああ、こい! さあ、全力で楽しんで行こうぜ!」


 それは本当の意味で、ユーリがブレイブカードを始めた瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ