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咆哮が、[樹海の決闘場]に降り注ぐ。
木々が揺れ、土煙が舞う。
きっとここにユニットが残っていたら、その存在を恐れて逃げ惑っていただろう。
そう考えたユーリ自身も、明らかなボスの風格を持つそのユニットに怯み、思わず動きを止めてしまっていた。
そんな中、黄昏がユーリの方を指差す。
その指先が指し示す方向に、バハムートは顔を向けた。
「バハムート! 攻撃だ! 崩界のエクストリームバースト!」
強烈なエネルギーが、バハムートの口内に集っていく。
逃げなきゃ、とユーリが思い至ったその時には、その口から万物を破壊するブレスが吐き出されていた。
「――っ!?」
ユーリの真横をブレスが通り過ぎる。
ビームのような強力なエネルギー放射は、地面を抉り、木々をなぎ倒し、炎上させながら、下からすくい上げられるように放たれる。
被害はユーリの周囲だけに留まらず、ユーリの後方、かなり遠い位置でも、ブレスによる破壊の影響が現れていた。
(わざと外してくれなかったら、確実にHPがゼロになってた)
ユーリはその事実に気付き、恐れ戦く。
そんなユーリを見て、黄昏は煽るように言った。
「偉大なる遊○王のキャラの言葉に準えて言わせて貰おうか! 強靭! 無敵! 最強! これが俺の力だ!!」
その黄昏の言葉に合わせて、それを肯定するようにバハムートは唸る。
まさにそれは、この強大なユニットを、黄昏が使役していることを知らしめていた。
「ユーリ! 改めて言っておくぜ! ゲームは楽しまなくちゃ意味がないんだ! どんな形であれ! 自分が楽しいと思えること全力でやらないと意味がない!」
ユーリに語り聞かせるように、黄昏はそう明言する。
人それぞれにプレイスタイルは異なるだろうが、そこにその人だけの楽しみを見出だすことが出来るから、人は飽きること無くゲームを楽しむことが出来るのだと。
「だからこそ! 自分の持てる全てをさらけ出して全力でこい! どんなものであろうとも! 俺が全力で! その全てを受け止めてやる!」
「いいの? ユーリは強いよ? 化け物だよ?」
黄昏の思いを込めた言葉に、ユーリの心の壁が解かされる。
そうしてふと言葉に出たのは、これまでの日々の中でユーリを苦しめた事実だった。
黄昏はその言葉を聞いてもなお、強く宣言する。
「お前がどんな存在だろうが! どんな力を持っていようが! 関係ない! 俺は、俺の持てる全力を尽くして、それを打ち砕くまでだ!」
そこまで言った黄昏は、優しい表情になってユーリに語りかける。
「だから、もう怯える必要はない。何処まででも一緒に遊んでやるからさ」
そして最後に最も大切なことを伝えるように言った。
「――このゲームを一緒に楽しもうぜ!」
「――っ!!」
黄昏のその言葉に、ユーリは自分の胸が高鳴ったのを感じた。
――化け物と言われた。
ただ頑張って言われたとおりに生きてきただけなのに、いつの間にか恐れられて捨てられることになった。
だからこそユーリは何処かで求めていたのだ。自分が以前のようなただの人として見られる場所を、以前のように、ただの子供として全力で遊び惚けることが出来る場所を。
それはここにあったのだ。
そうしてくれる相手はここにいたのだ。
黄昏の目は決して化け物を見るような目ではなかった。
人として相手を敬い、その個人に対して警戒を行う純粋な瞳。
ユーリはそれを見て、求めていたものがここにあると強く実感した。
(全力でやってもいいんだ)
ユーリの心に、その言葉が溢れる。
(心の底からこのゲームを楽しんでいいんだ)
気付けばユーリの顔に笑みが浮かんでいた。
そしてユーリは、自らの意思でデュエルリングに手を当てて、カードを取り出す。
現出した白いカードを握り、天を高く掲げた。
黄昏がこちらの様子を優しく見守る中で、ユーリはこれまでの自分と決別するように、大きく叫んだ。
「[氷造のゴーレム]! 召喚!」
氷で出来たゴーレムが、ユーリの目の前に現れる。
そしてそれを召喚したユーリは、やる気に満ちあふれた笑みで黄昏をみた。
「本気でいくからね!」
「ああ、こい! さあ、全力で楽しんで行こうぜ!」
それは本当の意味で、ユーリがブレイブカードを始めた瞬間だった。




