妖精と悪魔 7
ルシアと対面した次の日。
ルシアはつっけんどんな態度は変わらないものの、僕と言う存在には慣れてくれた。
僕は、あれこれと理由を付けジェイコブ様のお宅に突撃をしていた。
きちんとジェイコブ様には許可を得ている。ルシアは露骨に嫌そうな顔を向けてきたけど。
初めて、ジェイコブ様の奥様にも会った。
ルシアに似て、突き放す様な態度を取る人だったけれど、表情は誤魔化せない。
きっと、優しい人だろうと思った。
明日は貴族学園の入学式。
ルシアは心配そうである。
僕がいるから大丈夫、と告げたら、アンタが居るから余計不安なのよ、と言われてしまう。
「僕、要らない?」
「えぇ、要らない。アンタ、自分が何者か自覚ある?それに、私がなんなのか」
「僕は妖精の子で、ルシアは悪魔の呪いを受けている。ただそれだけだよ」
「それだけ、で済む話じゃないわ。本当能天気ね。悪魔に誑かされてるって言われるわよ」
「なんだ、僕の心配してくれてるの?ふふ、ありがとう」
ルシアはぽかんと口を開け、僕の顔をまじまじと眺めた。ちょっと照れる。
ぷるぷると震えたと思えば、ルシアは顔を真っ赤に染め上げた。
「ち、ちがうわよ!調子に乗らないで!」
「わぁ、積極的ぃぃい」
眉を釣り上げ、ルシアは僕の頬を両手で掴む。
ぐいぐいと左右に引き延ばされる僕の頬。
昨日、今日と僕が魔力を分け与えているお陰で、ルシアは体の不調を感じずにいるだろう。
ルシアから触ってきたのは初めてで、ついつい頬が緩みそうになる。
「あ、ご、ごめんなさ…」
「僕、すぐ魔力回復するから気にしなくていいのに」
ルシアは直ぐに手を離した。魔力を吸い取ってしまった感覚に、顔を青くしている。
本当、優しい子だ。素知らぬ顔で魔力を奪ってそこら辺に転がす人間だっているだろうに。
性根が優しいルシアだからこそ、僕は仲良くなりたいと思った。
「ねぇルシア。学園に入学したら、君のことを口さが無い言葉で傷付ける人はいると思うんだ」
「だから、アンタが傍にいる必要はないわ。アンタは、爪弾きにされるべき人間じゃない」
「本当に優しいんだなぁ。でもね、聞いて。僕は僕の意思でルシアの傍に居る。君の盾になる」
ルシアの手を握り、真っ直ぐ見つめ、僕は言う。我儘を押し付けているのは、理解している。
でも、引くつもりは無い。
「どうして」
「君が優しいから。孤独な者同士、手を取り合わない?」
やや冷ややかな視線をルシアから貰う。
でも手は振り解かれなかったので、了承と取って良いだろう。
「明日、うちから馬車を出すよ。迎えに来る」
「は!?ちょっとやめてよ!」
「いいですよね!ジェイコブ様!」
「もう勝手にしてくれ」
ジェイコブ様は眉間を人差し指と親指で挟んで揉んでいた。
近くに控えていたオリバーは、目が死んでいる。
「うん。決まり」
そうして、わりと無理矢理ルシアと登校する約束を取り付け、ジェイコブ様のお宅を後にした。
あぁ、明日が楽しみだ。




