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妖精と悪魔 6


視界の端でオリバーが半笑いを浮かべているのが見えた。

使えるものは使わないと勿体無い。僕は生まれ持った、両親から分け与えられた整った顔を最大限利用する。

天からの恵みものとも言うけれど、魅力を引き出すのは自分自身に間違い無いのだから。


少し眼力の強い赤い瞳は、口元を綻ばせるとつられて柔らかく細まる。

薄すぎない唇は笑むために弧を描くと、可愛らしく写る。


僕は、どうすれば自分を引き立てられるのか、鏡の前で研究をした過去がある。

友達が欲しくて、必死だった。見目がいいだけでは駄目で、近寄り易い雰囲気を作り出すためにはどうすればいいのか。

数日間部屋に引きこもり、鏡と向き合い、近くに色んな本を積んで、それを読み。

お母様は、ワールヴォルの血をしっかり引いているわ、と少し嬉しそうであった。

お父様は、程々に、と珍しく心配そうな表情を浮かべていた。


「ねぇ、ルシア…」


勿論、声の高さや話す速度、口調に至るまでしっかりと研究し、身に叩き込んでいる。


「わ、わかったわよ!でも気軽に触れないで頂戴!」

「ありがとう!えへ、はじめての友達が君で嬉しいな」


とは言え、嘘を吐くのは嫌いだ。

僕が口にする言葉は本心で、表情や話し方で相手に良い印象を持ってもらいたいだけ。


魔力不足が一時的に改善され、顔色が少しだけ良くなったルシアは、むっつりとしたままだが、僕の手を振り解こうとはしなかった。

気を良くした僕は手を握り直す。


「…俺の意見はあってもなくても関係なさそうだな」


僕らの様子を見て肩を竦めたジェイコブ様はため息混じりに呟いた。


* * *


例のトランクは、ジェイコブ様が持って帰って行った。


夕食を食べ、部屋で寛いでいると、オリバーがお茶を運んできた。

カップは二つ。僕とオリバーの分。

いつも僕らは二人でハーブティーを飲む。


「ありがとう、オリバー。はぁ、ルシアは将来可愛くなるよ」

「本当、一目惚れしたんだな。それにしても、悪魔憑きの子ねぇ。天敵じゃないのか」

「悪魔本体ならね。でも、ルシアは悪魔に恨まれているだけ。被害者だよ」


かつて、悪魔の手を取り、そして裏切った。

ジェイコブ様の奥様が元々悪魔憑きだったと言うのは誰もが知っている。そして、ジェイコブ様は表向きは元悪魔憑きの女性の監視だと思われている。


実際には二人の間には愛がある。

でなければ、ルシアが産まれている訳がない。


悪魔は執念深い。

一度手を取った癖に、見捨てられた。それは深い恨みとなり、子供に矛先が向けられた。

それは呪いとしてルシアを蝕んでいる。


普通に生活しているだけで、酷く魔力を消費し、強い疲労感に、食欲不振や体調不良、睡眠不足に繋がる。

結果、成長が阻害される。


魔力は生命線。

足りなければ疲労感に襲われるし、枯渇すれば死に至る事もある。


ルシアは、綱渡りのような生活を余儀なくされている。

罪のないルシアが苦しんでいる。


おそらく、無意識に足りない魔力を吸い取ってしまう為に人との触れ合いを避けてきたのだろう。

僕が近付こうとした時、微かな怯えが見えた。


優しい子だと思う。

だから、助けたいと思った。


「ルシアは、良い子だよ。これから成長して、綺麗になって、僕の手を振り払って行くんだろうな」


僕は妖精の子。人と同じ時間は生きていない。

オリバーが、何か言いたげに見ていたが、素知らぬふりをした。


まだ、恋か分からない感情に振り回されていたから。

ジェイコブはルシアに触られても魔力が吸われない様な細工をしてあります。

出せそうであればネタバラシ(と言うほどでもないですが)したいです。

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