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その後の二人 エリザベス


私の世界は、突如として崩壊した。


良いことなのか、悪いことなのか、私は未だに答えを見つけ出せていない。

手首にぐるりと一周、浮かんだ赤黒いアザの様なものが何かを執拗に訴える。


この国では、悪魔の手を取ることは許されてはいない。

とは言え、悪魔憑きが判明するのは何十年、何百年と無かった為に、私の扱いに困った偉い人達は牢に入れるか、監視人を付けるか、厳重注意で済ませるか、対処法にそれはそれは悩んだらしい。


それもそうだ。

悪魔憑きは悪魔憑きと判明する事なく、罪を犯しそのまま投獄される。

今回私が悪魔憑きと判明したのはマルティーナが暴いたから。


そして、悪魔憑きから悪魔が祓われたと言う状況も事例がかなり昔の話であり、まともな文献が残っていなかったらしい。


結局、悪魔を祓ったジェイコブが私を監視する形で落ち着いた。

学園を卒業する迄に、ジェイコブが一人でも悪魔を祓えるほどの実力が備わっていれば、の条件付きではあったが。


ジェイコブは学園を卒業する迄に、それこそ血反吐を吐くような努力を重ね、遂には王宮から直々に声が掛かるほどの力を手に入れた。


彼は、今では王宮勤めの魔法使いとなった。

ただの下っ端ではなく、今回の件で新設された悪魔祓いの部署の代表魔法使いになった。


周りの反対を押し切り、私と結婚したジェイコブは、妻の私が言うのもなんだが、立場と言うものを理解していない節がある。

元悪魔憑きの女で、尚且つ監視対象。

恋仲では無かったがそれに近い関係ではあったが、あれは結局私が、いや、悪魔に唆された私の影響を受けていただけだと言うのに。


求婚をされた際に、伝えた。

『貴方が私に執心だったのも、婚約者に冷たく当たったのも、私の魅力魔法と洗脳魔法のせいだったのよ』と。


ジェイコブは、不思議そうに首を傾げた。


「それでも構わない。あの時、希望をくれたのは君だったから」


真っ直ぐな視線が、私の胸を貫いた。

火照る頬を隠す為に暴言を吐いてその時は逃げた。


でも、ジェイコブは周りの意見を聞かず、私と結婚をすると主張し続け、度重なる求婚に私が折れた時には、周りから祝福も貰った。

悪魔憑きであった事を理由に拒み続けていた私の姿に、反省の色が見えたから、らしい。


私の家、ランティーヌ家は子爵の位を剥奪され平民になった。

元々成り上がりの商家で、私財はたんまりとあったので貴族でなくなった以外変わりはなかった。悪魔の手を取ったが大罪を犯したわけではないので財の没収は無かった。


私は平民のエリザベスとなり、元悪魔憑きのエリザベスは贖罪に毎日教会で奉仕活動を行う事に。

家を追い出され、行く宛も無く、教会に住み込みで掃除や炊き出しなどを行った。


誰もが最初、私に対してどう扱えばいいのか分からず遠巻きに見ていた。

石を投げられる事もあったが、報復を恐れすぐにそれは無くなった。私の手首には悪魔憑きであった印がある。


またいつ、悪魔の手を取るか分からないから。


そんな陰口は風に乗って私の耳にも届いていた。

学園を退学し、教会に身を寄せ、毎日奉仕活動をしていたある日、ローブを身に纏ったジェイコブが現れた。


無事、悪魔を祓える程の力を手に入れたのだと。

だからエリザベスは教会で過ごす必要が無いのだと。


宛ても無く教会に身を置いていた私だったが、教会には悪魔が近付けないらしい。

曰く、私に住み込みで奉仕活動をする様にと勧めた司教は私の監視をする命を受けていたらしい。不審な動きをしたら私の首は体とさよならしていたかも知れないと聞いた時にはゾッとした。


そして、ジェイコブは迎えにきたのだと、緊張した顔で告げたのだった。


「迎え?何故?貴方はこれから私の監視役でしょう」

「監視はしなきゃ行けない。けれど俺は君を妻として迎えたいと思い努力をして、遂に悪魔を祓える力を手に入れた」


なにを言ってるのだ、この男は。

驚きと呆れ、そして、よく分からない感情がぐるぐると体の中を駆け巡る。



「貴方が私に執心だったのも、婚約者に冷たく当たったのも、私の魅力魔法と洗脳魔法のせいだったのよ」

「それでも構わない。あの時、希望をくれたのは君だったから」


首を傾げるジェイコブに、私は思わず暴言を吐き逃げた。

それから毎日求婚されるなどこの時の私は知らなかった。

次はジェイコブ視点で書く予定です。

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