42.クロウリー達の幸せ
学園主催の夜会の翌日から私は動いた。
ワールヴォル家と実家に婚約の承認を得るために手紙を出した。
勿論どちらからも、快い返事は貰えなかったのでしつこく、執念深く何通も送った。
学園を卒業する前に漸く渋々と言えるが許可が降りた。
妖精についても調べた。
人間から妖精に孵る事についても。
やはり碌な情報は得られなかった。
森の一番大きな木の根本に有る扉を潜って妖精界にも行った。
妖精達は最初は孵ったマルティーナに「だから言ったのに」と怒ってはいたが、仲間が増えた事に関しては喜んでいた。
「久しぶりよぉ、孵った子は」
「昔にも居たのね」
マルティーナと一番仲の良いリア。
穏やかな口調で話していて和む。
敢えて私は二人の会話に口を挟む。
「どれくらい前だ?」
「うぅんと千年くらい前にかしらぁ」
「ついでに、妖精と人間の間に子供は儲けれるのだろうか」
きょとんと首を傾げたリアは、直ぐににこりと笑う。
「えぇ、うんと可愛い子。ただ普通の子じゃないわ、妖精の血を引く子はね」
リアは秘密話をする様に私の耳に顔を寄せ、囁いた。
「特別、ーーー…」
* * *
その後、学園を卒業し、私はマルティーナを連れて領地に帰った。
元人間の妖精に家族は勿論、領民も戸惑いを隠せない様子ではあったが、マルティーナが当たり前に生活しているのを目の当たりにして、徐々に目が慣れた様だった。
本来、妖精は食事も睡眠も必要ない。
だがご飯は食べれない事は無いし、夜は本を読んだり、私の寝顔を眺めて過ごしている、らしい。
寝顔は冗談だと思いたいが、朝、目を覚ますとマルティーナが至近距離で此方を眺めていた事が有るのでなんとも言えない。
マルティーナを連れて領地に帰って一年後、結婚をし、その後に子供も儲けた。
妖精の子と言うだけあって、とても可愛らしく、美しい子が産まれた。
マルティーナと同じ銀の髪に、私と同じ紅の瞳を持つ男の子。名をリエル。
リエルは他の子と比べて成長が遅かったが、リアにかつてそういうものだと教えて貰っていた。
『特別、寿命が長くて成長が遅いのよぉ』
私だけが先に老い、先に逝く。
リエルは私が居なくなっても長く生き続けるだろう。
だが、マルティーナが側にいる。それだけで安心できる。
「ティナ、君は今幸せか?」
「えぇ、素敵な旦那様と愛しの息子。旦那様は領民達からの信頼も厚くて此処は希望に満ち溢れている」
出逢った時と変わらない姿で、表情だけが成長したマルティーナが私に笑んだ。
まだ足元が覚束ないリエルが私達を見つけるとどてどてと走ってきて脚に抱きついた。
「幸せよ、とても」
リエルを抱き上げ、小さな額に唇を触れるマルティーナはまるで女神の様。
この一瞬を瞳に焼き付けようと思った。
「もう、そんなに見られたら穴が空いちゃう」
ぷくり、と頬を膨らませたマルティーナと真似をするリエル。
あぁ、なんて幸せなんだろう!
目眩がしそうな程に。
幸せを噛み締め、リエルごとマルティーナを抱き上げた。
幸せがこんなに軽いなんて、かつての自分は思ってなかった。
こんなに軽いと、直ぐに飛んでいってしまいそうだ。
「出逢えて、良かった」
「私もそう思うわ」
きゃっきゃっと嬉しそうに手を叩いて居るリエルが花を降らせた。
その花は、ベゴニアだった。
ベゴニアの花言葉、『幸福な日々』
紆余曲折あり、迷走していた時期もありました。
と言うか、最後まで迷走したまま爆速した感が否めませんが。
これにて完結です。とは言え、小話などちょろちょろ書く予定なのでまだ完全に完結では無いです。
本当、もっと勉強が必要だな、と何度も思いました。何度も書くのをやめてしまおうと、頭を抱えた事もありました。
ひとえに読んでくださった方々、ブクマや評価、誤字報告やコメントをして下さった方々の存在のおかげです!
語り足りないのですが長く書きすぎても読むのが大変だと思うので此処までで。
またいずれこの作品が完全に完結したら活動報告とかで一人つらつら語りたいと思います。
此処までお読み下さりありがとうございます!
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