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38.クロウリーは見守る


マルティーナの発言に対し、エリザベスの返した反応は、眉を顰める事だった。


「なんの魔法使ったかは分からないけど、脅すつもり?」

「そんなつもりは全く。なんの対価も無しに膨大な力を借りれると思ってるんですね」


表情こそ穏やかではあるが、マルティーナの声にはトゲがある。

それを察知したエリザベスは不快そうに顔を歪めた。


イライラは行動に現れていた。

エリザベスは腕を組み、ドレスの下で爪先で床を叩いている。コツコツコツコツ…、その音は耳に障る。


マルティーナは軽く首を傾げ、薄紅色の唇を薄く開けた。


「限界を超え、魔力を補填して貰ってますよね。今日、何度も」

「だから何よ」

「ずっと続けていたら貴方もこうなりますよ」


マルティーナの細い指はエリザベスの影に隠れようとしている悪魔を指していた。

悪魔はマルティーナを憎々しげに睨み付け、牙をちらりと覗かせた。


誰もが、二人の様子を遠巻きに見ている。

余りにも理解の及ばぬ域での争いに逃げる事も忘れ、その場に縫い止められてしまっていた。


悪魔に、妖精。

御伽噺の中の話が目の前で繰り広げられている現状に、困惑を隠しきれない観衆。

そして、私もジェイコブも、アルノルドも、二人を見ていた。


「悪魔は百害あって一利なしの、毒の様なもの」


マルティーナはゆっくりとエリザベスの方へ歩を進める。

音もなく、滑るように。


エリザベスはぎくりと顔を硬らせ、後退りした。無駄に高い踵の靴を履いている為に、地面に引っ掛かり尻餅を着いた。


「妖精と手を取り合っていた世界を壊した」


エリザベスは立ち上がる事もせず、ずりずりとドレスが汚れる事も厭わずに腕と足を使って後ろに這う。


「妖精は希望を、悪魔は欲望を好んだ」


マルティーナはぱちん、と指を鳴らし、天井から花を降らせる。

大量のガーベラは床に落ちる前に光の粒になって溶けていく。


「欲望は際限のないもの。過ぎたる欲は、身を滅ぼす」


エリザベスの周りだけは、ガーベラが消える事なく、黒く染まった花がこんもりと積もっていた。


もっとテンポ良く話が進まれたら良いんですけど…

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