37.クロウリーと誕生
卵のような其れは、亀裂から光を洩らしていた。目を惹かれていると、中から何かがむくむくと大きくなっていく。
目を開けているのが苦しいほどの光を放出した何かは、人の形をしていた。
マルティーナだった。
つるりとした頬に血の気は無く、まるで人形だった。
背中には透き通った蝶に似た羽が生えている。
ドレスはまるで花びらで拵えたかの如く、弾力と瑞々しさを持ち、裾に行くにつれて水色が濃くなっている。
「妖精に、孵ったのか…」
「あれが?」
何度も零された、孵ると言う言葉。
ジェイコブから、弟が言っていたと聞いた。
妖精たちが、孵るからもう魔力はあげないと言っていた。
よくわからないけど、孵るらしい、とマルティーナが首を傾げていた。
思わず、口から零した言葉に、ジェイコブが素早く反応を返した。
ギリギリの所で、精神干渉の魔法を繋いでいる手腕には正直舌を巻く。
ジェイコブは器用な男だ。
魔力が追いつけば、きっと更なる高みを目指せる。
マルティーナは優雅に片手を上げ、伏せていた目をゆっくりと開いた。
氷の色彩を持つ瞳は宝石の様に瞬く。
「集中、しなさいって」
マルティーナの挙げた手を中心に、魔力が広がった。
天井からは小さな氷の花が降り注ぎ、空気を凍らす。急激に冷やされる空気に、誰もが体を震わせる。マルティーナを除く、誰もが。
変わらず、強気に笑んで見せる彼女は何処までも気高く、美しい。
巻き込まれない様にと、隅に寄っている生徒達にもマルティーナの姿は見えている様で、小さなさざめきは広がる。
エリザベスは本格的に理解が追いついて居ない様で、ぽかんと口を開けたまま、生まれ変わったマルティーナに目を向けている。
その隙を見逃すジェイコブではないので、あっさりと悪魔を引き離す。
と、簡単に話が進む事はない。
魔力が足りず、ジェイコブと悪魔との一騎討ちになる。
なんともないとでも言いたげな、涼しい顔をし、平然と立っているジェイコブだが、魔力はかなり限界近い筈だ。
私もジェイコブに魔力を与えてはいるが、拮抗状態が続く。
「アル兄さん」
「ティナ」
マルティーナはふわりと、床に這いつくばったままのアルノルドの元に向かうと、濡れた頬を軽く撫でた。
「ごめんなさい、アル兄さん」
そっと腕を引き、アルノルドを立たせると、マルティーナは一度だけ瞬きをし、瞳から雫を落とした。一粒だけ。
いいんだ、とアルノルドは首を振る。
「居なくならなかったから、いいよ」
涙でぐちゃぐちゃのアルノルド。
メイクで隠していた筈の隈は濃く、くっきりと目の下に居座っている。
「ねぇ、エリザベス様。貴女は人間でいたいかしら」
呆けたままのエリザベスに、マルティーナは、微笑みかけた。
色々と伏線とっちらかしたままなのに気が付いて頭抱えてます。
小説書くのむずかしー!




