35.ジェイコブの思い
ほぼジェイコブの回想です。
弱い自分を認め、傍に居てくれたのはリザ、エリザベスだけだった。
努力の天才には勝てやしない。
此方が必死に努力したところで、相手は文字通り血反吐吐く程の、常人であれば気が触れてしまいそうな努力を平然と行うのだから。
努力するのも、才能だ。
少しも休まず、努力を続けるなんて、才能としか言えない。
さも当たり前の様に、努力し続けるマルティーナと、凡人程度の努力しか出来ない俺。
差が生まれるのは当然だ。
それに気が付かず、両親は俺を責めた。
マルティーナは出来ているだろう?と。
苦しくて、辛くて。
自分にはなぜ出来ないのだと、ストレスで胃を痛めて。
いっその事諦めてしまおうと自棄にもなったが、マルティーナの姿がチラついてしまってどうしようもなかった。
マルティーナは今も頑張っているのに、なぜ俺はだらけているのだ、此処で頑張れば追いつくかもしれない。
泥濘にはまった場所の様に、俺はずっと同じ場所でもがいていた。
エリザベスはそんな俺に手を差し伸べてくれた。
貴方は頑張っている。休んでも良い、と。
天使か、女神だと思った。
やっと巡り合えた、救済に俺は呆気なく絡めとられた。
マルティーナから虐めを受けているとさめざめと泣くエリザベスから言われた時から、歯車が狂い始めた。
本当は、エリザベスと出会った時から狂っていたのかも知れない。
怒りが抑えきれず、八つ当たりの様にマルティーナに怒声を飛ばしたり、挙げ句の果てには怪我をさせたりもした。
落ち着いて考えれば、腑に落ちない点が沢山あったのに。
一方的に決め付けるなど、情けない。
マルティーナと落ち着いて話をして、長年すれ違っていた心情を整理出来て良かった。
マルティーナと一緒に過ごす未来は無いが、友として言葉を交わす未来は残った。
貴族学園を卒業し、俺は平民に降りるが、そこにエリザベスはいないだろう。
エリザベスは、悪魔に操られていただけなのだから。
俺への情は、悪魔を祓ったら綺麗さっぱり消え去る。
もし、俺への情が、悪魔と関係が無くて。
元に戻っても変わらずにいてくれたならば、改めて関係を作りたい。
俺を苦しみから救ってくれたのは、紛れもなくエリザベスなのだから。
「なぁ、エリザベス。お前につくのが、妖精だったら良かったのにな」
なんて、所詮はたられば。
エリザベスには悪魔が、マルティーナには妖精が味方についた。
負の感情に引き摺られたエリザベスは、目を血走らせてマルティーナに黒い魔力を浴びせている。
精神干渉の魔法は中々エリザベスの精神に届かない。
マルティーナの限界は近い様で、息も絶え絶え、紙一重で交わしている状態だ。
焦りは禁物、そう教えてくれたのは誰だったろうか。
気持ちが急いて魔力のコントロールが乱れた一瞬でエリザベスの魔力が上回る。
此方に矛先が向いた。
精神干渉の魔法は、集中力がいる。
弾かれた一瞬、生まれる隙は、命取りだ。
(やられる…)
その時、最後の力を振り絞ったマルティーナが飛び出して、エリザベスの攻撃を小さな身体に受けた。
ジェイコブは真面目で自分に自信が無いからこそマルティーナと比べ、落ち込んでしまった子です。




