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31.マルティーナの考察


エリザベスの周りに纏わり付く黒いオーラは生徒にも見える様で。

怯えた様な騒めきが広がっていく。


怯えの中心が自分だと気が付かないエリザベスは、顔から怒りが消え、愉悦に歪んだ。


「皆、貴方に怯えているわ!そうよね、得体の知れないモノと手を組んで…」

「黙りなさい」


ぱちんと指を鳴らすとエリザベスは口を噤んだ。

否、私が口を閉じさせた。


魔力が限りなく限界に近い今、エリザベスが黙っているのはきっと少しの時間にしかならないだろう。


「得体の知れないモノと手を組んでいるのはエリザベス様でしょう?」


妖精から借り受けた眼鏡を徐に取り出して掛ける。

悪霊などの類は姿を隠すのに長けている。この眼鏡は目眩しを見破ることが出来る逸品。

なるべく顔を動かさず、目だけで探す。出来るだけ早急に済ませたい。


果たして、それはいた。

エリザベスの足元でこちらをちらりと窺っている小さな人型の、妖精にも似た者が。


妖精は透き通った、蝶の様な羽を持つ。

個体により色や形は様々だが、どれも蝶の羽と酷似している。


だが、エリザベスの側にいる者は、黒い、蝙蝠の様な羽を持っている。


妖精からの話と、今まで読んだ本の知識から、其れは悪魔であるだろう。

妖精が、妖精の国に閉じこもることになった原因を作ったのは悪魔だ。


妖精と悪魔は対立しており、妖精を邪魔だと思った悪魔はあらゆる手を尽くした。

妖精達は減っていく仲間の数に心を痛め、妖精の国に篭ることにした。


妖精の事を愛し、危害を加えない心優しき人間だけが扉を潜れる様にした。

人間の事を嫌いになれなかったのだ。


悪魔に唆され、自分たちに危害を加えたとしても。


妖精達は自分達の国で過ごす様になったが、悪魔は変わらず辺りに跋扈していたらしい。

目を凝らせば其処此処に存在している。


悪魔は巧妙に姿を隠しながらその力を強めたのだろう。


妖精は人間に力を貸すが、悪魔は人間を操る。

悪魔の囁きと言うのは実は比喩では無いかも知れない、などと考えてしまうくらいにエリザベスは悪魔と親しげである。


悪魔はエリザベスの顔近くに浮遊し、何やら耳打ちしている。

エリザベスは、私に徐に手を伸ばした。


「その眼鏡貸しなさい!」


予想通り、エリザベスの口を塞ぐ時間は僅かなものだった。

目を血走らせ、髪を振り乱さん勢いのエリザベスは正直、怖い。


なによりも怖いものは人間だな、とふと思った。


ジェイコブが素早く私と体を入れ替えた。

私の前に盾の様に立つジェイコブの背中を見上げる。


そろそろ、頃合いかも知れない。


「ジェイ様…何故…!」


エリザベスが憎悪に燃えた時、悪魔はニヤリと嗤った。

黒い魔力は膨れ上がり、エリザベスを包み込んだ。


更新遅くてすみません…。

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