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30.マルティーナの対峙


標準よりも低い背の私と、標準よりも高い背で尚且つ高いヒールを履いたエリザベス。

向かい合うと自然と私は彼女を見上げる形となる。


毅然とした態度で迎え撃つその態度にエリザベスはいくらか狼狽し、忌々しげに唇を噛んでいた。

淑女たる者、感情を表に出してはならない。そう教えられた私は気を引き締める為目に力を込める。


上目遣いに睨んでいる気がしないでもないがこの際仕方がない。

元々キツイ顔立ちに色彩の低い見た目はより一層冷たさを感じさせることだろう。


氷雪の騎士一家は見た目も意味している。

ワールヴォル家の血を色濃く受け継ぐ者は例に漏れず銀髪と色素の薄い青い瞳を持つ。

それはまるで氷の様。


血の気を感じさせない白い肌は化粧を施さねば体調不良と疑われる程だ。

それに加えて寝食を怠り徹夜を敢行するので眼の下にはクマが居座り唇は貧血からかやけに青い。


私もアル兄さんも、そして父様や兄さん達も同じく毎日必死に死人と見紛いそうな顔色を隠している。


私は今、妖精の魔力を与えてもらえず文字通りフラフラなので今日はいつもよりも時間をかけて化粧を施した。


つまり、いつもよりも化粧が濃い。


エリザベスは強い眼光に怯んで数歩後ずさったぐらいだ。

周りも息を呑んで見守っている。


どっちが悪役なのか困惑しそうだ。


「皆様にご迷惑を掛けるのは忍びないので手短に済ませましょうか」

「な、なによ偉そうに!」


狼狽ながらもエリザベスは噛み付いてきた。あのまま私だけで進めるのもな、と思っていたのでありがたい。


「私、知っているのよ。貴方が変なのと手を組んでいること!」

「あら、エリザベス様の事ではなくて?」


声高らかに宣言したエリザベスに対し、眉一つ動かさず言い返した私。


「ふん、いい気になって居られるのは今のうちよ」


てらてらと光る唇は歪んでいた。


余程自信があると見える。

エリザベスに憑いている者は上手く彼女を操っているらしい。

彼女の瞳にはメラメラと炎が燃え立つ様だ。


「大方、禁忌の術でも犯したのかしら。婚約者を盗られるかもと焦ったのでしょう?」


そもそも、気に入らないのよ貴方。

ふん、と鼻を鳴らすエリザベスを私はただ冷ややかに見上げていた。

しょうもない入れ知恵で踊らされ、滑稽にも思える。


「私は貴方に何もしておりませんが」

「その余裕綽綽な態度、本当に嫌い。馬鹿にされてるみたい」


カツカツとエリザベスの足元から音が鳴る。

苛立ちから爪先で地面を叩いているのだろう。ドレスの裾に隠れて見えはしない。


「人形みたい!気持ちが悪いわ!」


一人で騒ぐエリザベスは顔色一つ変えない私に詰め寄り、頬を摘まれた。


「触らないで。魔力を持っていかないでくださる?」


手の甲でエリザベスの手を払い除ける。

エリザベスが触れただけで魔力がごっそり減った。本人はきっと無自覚なのだろう。意味のわからない因縁をつけられ憤慨している。


思わず、身体が傾ぐ。

ただでさえ魔力が減っているのに、魔力を吸われ、枯渇しそうだ。

ジェイコブが素早く私を支えてくれた。


エリザベスは信じられないと言いたげに瞳を見開いた。

次第に彼女は怒りに身を震わせ、黒いオーラを纏い始めた。


「…きっとエリザベスに憑いているモノね」

「あぁ、無理はするなよ」


小声でジェイコブと言葉を交わし、頷き合って、エリザベスに向く。

怒りに染まった瞳はギラギラとした光を放って居た。


誤字報告ありがとうございます!

いつも助かっております。

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