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23.ジェイコブの話し合い


マルティーナの父親、ティベリオ様は頭を上げ、マルティーナと同じ色の瞳が俺に向いた。


「この婚約は、ティナの為だった。君が改心した今、解消は出来るだけしたくない」

「マルティーナが婚約解消を望んでおります。私も、また」


ティベリオ様は、手を組み、目を伏せた。

マルティーナの母親、アメリア様が遠慮がちにそっと口を開いた。


「どうしても、なのね?それが二人の答えなら反対しても仕方ないわ」

「友人にはなれても、家族にはなれません。今迄の事を考えると」


お互いに、傷付けあって生きていた。

認めたく無い俺と、認めて欲しいマルティーナ。

漸く隣に並び立ったが、あくまでも友人としてだった。友人になる事で、水に流した。


怒りに身を任せ、マルティーナに暴力を振るった事もある。

本来ならば、謝罪で済むものでは無い。マルティーナの心に深い傷を付けてしまっている。


マルティーナは、傷は残っていないから、と言ったが、それでも、許されるものでは無い。

婚約破棄されてもおかしく無いのだ。だが、解消で終わらせるのだとマルティーナは言った。


ただ、両親は認めないだろうとも。


その場合は何がなんでも婚約破棄をする。

貴方も巻き込む事になるから覚悟しておいて、とマルティーナは冷たい笑みを浮かべた。今までやった事を思えば仕方ない。

きっと、エリザベスと俺のあれこれを詳かにするつもりだろう。

証拠はしっかり残してる、もしもの為にと用意していた。さらりと恐ろしい事をマルティーナは言っていた。


今思えば、マルティーナはいつでも冷静だった。

エリザベスに文句を言われようと毅然とし、俺に対しても声を荒げる様な事はなかった。


振り返れば、おかしいと思う点はいくらでもある。

不思議なほどに、エリザベスと共にいた俺は、何も気が付かなかった。


ほんの少しの綻びだった。

それをエリザベスがこじ開けた。


「人は直ぐには変われない。君は、まるで別人だ」

「自分でも、不思議に思います。何故、あんなに愚かだったのかと」


沈黙が落ちる。

ティベリオ様は組んでいた手を解いた。布が擦れる音が静かに部屋に染み込んでいった。


「エリザベス嬢と君が一緒にティナを非難する場面を観たんだ。まるで君は何かに取り憑かれている様だったよ」

「観た…?どういうことですか」

「あぁ、ティナが魔導具で映像を保存していてね」


きっと、マルティーナが言っていた、もしもの時の証拠だろう。

それにしても、映像として場面を保存するとは。間違いなく動かぬ証拠となるだろう。映像だから動くが。


「その映像を見たのは最近でね。ティナが必死に何かを探していたからその手伝いをしようと言ったら映像を見せてくれたんだ」


マルティーナの目の下にはくっきりとした隈が居座っていた。

だが、まさか自分が関連しているとは思いもよらなかった。


「ティナは、君に何かが取り憑いているかも知れないと色んな本を漁っていた」

「そう、ですか」


結果的に無理をして、倒れてしまったのだろう。

何故そこまでするのか、聞かないと分からない。


聞かなければ、と思った。


両親が何故反対しているのかは次の話で書きたいと思います。

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