北條悠真
たくさんの想い、たくさんの人を救済する物語。
自分の人生に納得がいかない。僕はいろんなことに挑戦してきた。だけど一番大好きだったこの仕事。この趣味はどこまで行っても自分のことが嫌いみたいだ。僕はこの仕事をする。だったそれだけのためにどれだけの心血を注いで取り組んできたのか。挫折なんかいくらでもできる。僕がつまずいても自分で立ち上がることもできなければここにいる資格なんか得られない。僕は絶対に負けることを、ましてや、勝つことを諦めたくない。ならば答えは一つだけ。僕はどんなになったとしてもこの仕事をやり遂げることを諦めたくない。
「もう上がりますよー。いいんですかー?もうドア閉めますよー。」
「うん、いいよー。頑張るからねー。」
また一人。いつまでこの作業をしなくてはいけないのか。ここまでボロボロの職場を見たことがない。全て引き受けて全てのバグ、コードの取捨選択、解析を少しずつかけてまだまだやることが山積みになっている。この仕事は終わりがなく、膨大なマニュアルに沿って‘’道‘’を書かないとみんなで考えた道筋が全て無くなってしまう。自分の役割は一つだけ。ただ作業をこなすだけ。
僕は一体なんのためにこの仕事を引き受けたのだろう。僕はこの会社に居続けることはできるのだろうか?もうダメなのかな?
そんな不安をかき消すようにこの仕事に無心になって取り組んでいる。なんなんだ、これって簡単だった。始めはそう思い込んでいた。その自信を全て台無しになっていく。自信たっぷりの顔に思いっきり殴られたように頭がグラグラする思いを何回も何回も。僕はこんなに情けない人間だったのだろうか?
面白くない面白くないなんなんだこれは僕が考えたことだろなんであんたの手柄になっている。僕が最初に企画を出したんじゃないのか?
僕の思いは一つだけ。僕の勝手にさせてくれ。もうあんたらの話なんか聞きたくない。これであんたらは仕舞いにしてほしい。もう嫌だ。ずっと頭にへばりつくような悪い考えが巡っていく。
僕の大切なことはなんだったのだろう?僕はずっとこのまま使い古されるような人生だったか?僕のワクワクして楽しい生活は一体どこに消えたのだろう?ずっとこのキーボードを叩く作業はいらないんじゃ無いか?
「よし、今日はここまでにするか。明日は昼まで作業して帰ろう。ひと段落つけるだろう。」
もう3時。早く仮眠して明日の作業で詰めだな。僕の会社生活も詰みだけど。
「おはよー」
「うん、おはよう。」
「はい、あげる。何か食べたか?」
「いや、食べてないよ。もらうね。ありがとう。」
「もうほとんど終わったの?」
「うん、あとはみんなで今日数時間作業するだけ。あとは任せるな。」
「よし、お疲れ様。あんた、どうするの?」
「僕はこのまま作業して昼で上がります。」
「ん。分かった。」
この作業はいろんなところで起きていた。自分の生活を守るため?いや、人の人生を終わらせようとする災厄が襲ってくるよな。何してるんだろうな。こんなこと仕掛けるやつ、人間じゃない。僕たちの奴隷制度もこの徒労で全て終わるんだろうな。頭の悪い人たちが作った技術。本当にいらない。
「帰ります。お疲れ様でした。」
「はい、お疲れー」
「お疲れー。もう大丈夫だな?」
「はい、大丈夫です。もう無理ですけどね。」
「はい、ありがとー。」
外を出た。僕は新鮮な空気を身体全身に浴びながら伸びをする。もうやることは終わった。もう自由だ。好き勝手に動けばいいか。会社はもういいかな。必要なものはもう全部頭に入れてるし。もう簡単な作業でいいよな。
外を歩きながら景色を見る。昼だから活気のある町並みが目に映る。僕の足取りは少し軽くなった。自分が本当に欲しかったものは責任じゃない。信用や信頼ではなかった。一人の時間でもみんなと笑いながら楽しく暮らす、これで良かった。何かをずっと我慢することも、もう無くなった。これでいいよな。もうしがらみを持ったまま生きるのはとても辛い。
やっと自分の家に帰ってきた。ここには家族は住んでない。僕の家族は実家の山梨の山学地帯に位置したとても緑豊かな自然が多いところ。僕は実家に帰ってのんびりいろんなことに取り組みたい。昔のみんなを集めればなんとかなるのかな?山梨か。みんなを呼んで一緒に暮らそう。きっと楽しく暮らせるはずだから。父親と母親と兄妹たちがいる。大丈夫。もう帰ろう。
マンションを出払うために管理棟に連絡をする。またいろんな請求書が溜まっている。この調子じゃどれだけ働いても余計なものばかりくる。早くしよう。玄関のドアを開ける。僕は家族がいた。笑顔が絶え間なく続いて幸せだった。僕はいろんなことに取り組むのが好きだったから、自分の仕事は好きなことに取り組むことだった。僕は楽しみながら、この仕事がうまく行っている実感があった。
でもある時から家族の様子がおかしくなった。僕はいつも通りに仕事をする。たまにしか部屋を出で来ない僕に奥さんの花鈴はキツく僕に当たるようになった。僕が何をしたのか、娘も不安そうにしていた。そんなはずはない。僕はずっと週4日は部屋にこもって仕事をしている。何も不満が出ないように家族と旅行も行くし、5時に仕事は切り上げている。なんでダメなんだ?何かおかしいのか?
「ねぇ!あなた、いつも私に冷たくなってないの!?私はずっと家のこと手伝ってって言ってるでしょ!?私は何か悪いことしてた?なんか言ってよ!」
「ごめん。何か悪かったのかな?何か不安なことがあるの?」
「私が寂しい思いしてるのに!なんで構ってもらえないか、分かってくれないの!?」
「お父さん、お母さんは違うところに住みたいって…..。」
もうなにが悪いのか、わからないまま縁を切られた。もう何が何だか。僕は何か悪かったのか?心が塞がって身動きがとれなくなった。悪いことなんかしてないのに。この気持ちのまま時間が過ぎていく。焦りと自信とやる気が無くなっていった。
自分の仕事のやり方が上手くやり遂げられなくなって、仕事をする所を会社にすることにした。奥さんの不満は所属していないことなんじゃないのか。あの言葉が消えなくなって楽になりたいと思うようになった。楽に働いてあとは知らないふりの方が良いな。そう思うことにした。
荷物がまとまった。実家に帰省して後のことを考えるか。
「まぁ、今なら少しあの言葉はわかるけどな。難しくなかったけど、どこで何してるかぐらいは話してみるか。」
長距離バスに乗ってスマホを見る。僕は奥さんのやりとりはもう3年前に止まってしまった。復縁なんかしなくても話をするだけ。
『元気?仕事辞めて実家に帰るよ。花鈴はどこにいるの?』
メッセージはすぐには出ない。そんなものだろうな。もう目を瞑って眠るか。
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視界が明るくなる。もうこんな時間か。早く寝過ぎたのかな?もういいからはやく帰りたい。スマホのメッセージは無いな。うん、帰って良かったか。
山梨の家に着くまで何時間かかるんだろう?困ったことに離婚したことも両親に伝えてない。ここに帰るまでなんで黙ってたんだろう?疑問がまた、自分のせいだったと自身の心を重くする。もうやめようこんなこと。
実家に着いた時には何かの違和感。あの車なんだ?誰か来てるのか?
「ただいまー。」
「悠真。お帰り。はやく上がって。お友達帰ってきてるよ。」
「え?うん。」
「悠真!お前もしかして離婚したんじゃ無いだろうな?ちょっと来い!面白いもの見せるから。」
「うん。何かあったの?」
「いいから。これ見てみ。」
一枚の写真がある。みんな男友達で馬鹿騒ぎしてる写真。
「なあ、もう全員結婚してるのになんで離婚したんだ?」
「うん、なんで知ってるの?」
「いや、お前の嫁さんな、なんであんなに怒ってたんだ?俺それが知りたい。」
「僕はずっと….仕事してただけだって。そりゃあ簡単に稼げるわけないから。いつも違うことしながら、家族にも時間作って。何も悪いことしてなかっただろ?」
「なぁ、この写真のお前ってなに?」
「心底楽しそうにしてるな…….。」
「あのな今な…..うん、いいや。また来るぞ!」
「え?うん。」
「お母さん、任しといてね。」
「はい。ありがとう。」
「いや、だからどういう事なの?わからないって言ってるの。」
家に帰ってきてもやることが無い。さぁ何しようか。
メッセージは…..うん、来てるな。どうしよう。
「お久しぶり。実家なんだ。山梨にあるよね。帰って大丈夫なの?こっちの方がまだいいと思うけど。」
「もういいから。連絡しただけ。」
「うん。私は別に構わなくてもいいけど。仕事はどうするの?」
「いろんなことやるために模索する。やること決まってるけどね。」
「うん、分かった。」
朝、目が覚めた。今は6時前か。よく寝たのかスッキリしたみたいだ。スマホを手に持つ。またメッセージが入っている。なんだ?写真?開くとまたあの写真。なんだ?何かおかしいのか?今度はなんだ?
お前の顔面白く無くなってるぞ!理由、分かれよ。花鈴ちゃんはどうしたいんだ。
よくわからない返事。なんだ?何したいんだこいつ。
『なぁ、花鈴ちゃん素直に言ったら?私と一緒になった理由ってんなんだったの?って』
『そんな恥ずかしいこと言えない』
『それじゃあもう自分でなんとかしてくれな。俺疲れるから』
『それじゃあ私はどうしたら悠真くんが迎えに来てくれるか、わからない。』
『もう山梨来れば?もういいだろ?』
『そんなことできない。子供はどうするの?』
『いや、実家で育てれば?何かおかしいか?今な俺らで悠真戻してるから。時期来たら話せよ。悠真くんのこと好きだってな。』
『あのな、別れる理由がいつも結婚記念日忘れてるはどっちも馬鹿みたいだからやめてな。それだけだろ?』
『うん、分かった。待つ』
『もういいな?もう言うぞ。悠真に会わせるから。あと自分でなんとかしてな』
「悠真くん、帰ってきたよ」
「あぁ、うん。花鈴ちゃん。久しぶり」
「うん、今度は結婚してること忘れないでほしい。」
「うん、分かった。」
「結婚したんだったら、私も娘もちゃんと見てね。いい?私は悠真くんの楽しい顔が見たいの。責任感とか世間体なんかいらないの。いい?頑張って私と一緒にいてね。」
「うん。」
「悠真くん、楽しんで仕事して楽しんで私と一緒にいてね。私は悠真くんの楽しい顔と気持ち好きだからね。いい?私と楽しくここで遊ぶの。頑張ってね。悠真くん!」
「うん。」
「まだ言うね。悠真くん私が寂しいときはずっと悠真くんの寂しい顔。ずっと楽しい悠真くんが見たいだけ。いい?楽しかったらお金いらないの!お金なくても貧しくても一生懸命頑張る悠真くん好きだから。お金稼げなかったら私も働くよ。いいからね?遊んでいたら悠真くんはお金稼げるんだからね。いい?笑顔で取り組んで、それで私と一緒に人生歩んで!楽しくしよ!ね?大好きな悠真くん!」
「うん。分かった。付き合って一緒に仕事してた頃に戻っていいの?」
「うん。いいよ。」
「うん!分かった。僕一生懸命遊ぶな!花鈴ちゃん!僕のこと頼むな!花鈴ちゃん助けてくれな!」
「うん。それじゃあもう一回結婚する?いい?悠真くん。」
「うん。よろしくな花鈴ちゃん!」
遊んで暮らす〜人生甘くないかな〜一体誰のこと言ってんだろうな〜怖いな〜怖いな〜




