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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
二幕目 嫌だッ! 息子の子供なんて孕みたくないッ!

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いざ、本体へ




 クォーツとルイサの仲がもう最悪の域に達している。

正確には、バカ息子がクォーツの話を聞こうとせずに敵視しているだけだが。

今後の話クォーツと……俺が俺の体に戻るための話をしたいんだが、ルイサがそれを許さない。

なにより……。


「そろそろ解放して欲しいんだけど」


 ラタの部屋として割り当てられた場所で、魔術で作られた縄で縛られていて動けない。

なんとか魔術で対抗しようとしてるが、この化け物じみた頑丈さの縄に傷一つつけることができねぇ。


「そう言われても……ロスさんがクォーツさんに襲われそうになってからのルイサは怖いんですよ。あんなよわよわ男の言うことに従うのは癪ですけど……まるでお師匠様のような迫力です」


「ルイサがタリラ様と同じ迫力? いやいや全然違うよ、ルイサはまだまだヒヨッコだって」


「……お師匠様以外に命令されたのは初めてですし、従ったのも初めてです。頭では"このクソ男め、今すぐ女の子にしてやる"と思ってハサミを用意しようと考えていたのに、逆らえなかったんです」


 タリラの脅しはとても直接的だった記憶がある。

殺すぞとか、葬式の主役にしてやるだとか、次はお前が転生者になる番だとか、そんな誰が聞いても悪意と殺意が満ち溢れていると答えるような言葉だけが並んでいた。


 だがルイサはそれをほとんど口にしない。

さっきは静かに相手を睨み、静かに武器を構えていた。

若い頃のシアのように、隙を見つけ出そうと相手を観察し、静かに動く。

この部屋に連行される前、クォーツが和解の印にと持ってきてくれた"ワタガーシ"と言う白いフワフワを持ってきてくれた。

甘くていい匂いがして、この体はそれを求めていた。


『次は睡眠薬か? 安っぽい毒と同じ匂いがするぞ、変態クソ野郎』


 俺に手渡す前に、息子はそれを斬って捨てた。

斬られた白いふわふわが青色に変わり、粉になって消えていくあの光景は、小さな暗殺用の剣にアイツのカタストロフと同じ力が宿されていることを証明している。

息子は銃士であり、剣の扱いはそこまで得意じゃないはずだ。

なのに、勘違いとはいえ俺を守るために自分の力の限界を超えたような動きをしやがる。


 親としてはその力を褒めてやりたい。

だが今は話を聞いてくれ。

そりゃ、俺だってシアの胸を触っていた男の話なんて聞かないだろうし、お前と違って短気な俺はその場で殺していたかもしれない。

こんな話を聞かない所まで似なくていいのに……。


「はぁ、同志は変な人です。強いのか弱いのかと聞かれたら確実に私より弱いはずなのに……少しだけ、お師匠様みたいなカッコよさがあるんですよね」


 ラタは俺の話を聞いてはくれるが、本当に言葉を聞いてくれるだけ。

何一つ行動には移してくれないし、何故かルイサとタリラを重ねている。

こりゃ……言うだけ無駄だな。


「ラタさんは……その、タリラ様の妹? それとも娘?」


 マリラはあれから黙ってるし、ラタと二人きりになる機会はそこまで無いだろう。

折角だ、聞いておきたいことは全て聞いてやる。


「私はただのお師匠様の弟子です、妹や娘なんかじゃありません! 家族だったらお師匠様と結ばれることが不可能になるので……でも娘ならお師匠様の子宮に帰ることができますし、妹ならもっとお師匠様の警戒心が薄れているはずなので寝込みを襲えるし……」


 こんな奴に俺は息子をやらないといけないのか……ダメだ、涙が出そう。


「だったら……何で名前がラタ·ルリラなの?」


「自分の名前の全てを覚えていないからです。悪魔に殺される前の父が私をラタと呼んでいたらしいのですが、どこのラタなのかまでは分からなくて……だから、ルリラを名乗ってます」


「……軽率に聞いてすまん」


 いきなりの重い話。

どんな状況だったかは知らないが、ラタは父が殺される姿を見ているのだろう。

しかし、しかしだ。

今コイツは父を殺したのが悪魔だと言った、タリラが殺したとは言っていない。

忘れている……いや、隠している?


「いえ、両親の顔も殆ど覚えてませんし、あの出来事があったからこそお師匠様と出会えたんです。悪いことばかりではありません」


 口だけならどうとでも言える。

タリラに向けるあまりにも重すぎる感情も、自分の復讐を悟らせないために作り上げたカモフラージュだとも考えられる。

だがそれでも、俺の仲間だったあの傲慢な魔術師が人殺しなんかをするだろうかという疑問は消えない。

クォーツやセクション、タリラ。

三人とも、癖はあれど心から信頼できる友だったからな、なおさら殺したとかは信じられん。


「ちなみになんですけど、バルトロス様はどこにいるんですか? ネマさんでしたっけ、その魔術師と一緒なんですよね」


「だからネマを探さないといけないし、クォーツが居場所を知ってるはずだからそれを聞かないといけない。それなのに、ルイサは……ハァ、話を聞かないでしょ?」


「なるほど……じゃあ後で説得してきますが、さっき質問に答えたので、私からも一ついいですか?」


 俺が頷いたのを見て、ラタは口を開いた。

少しだけ言いずらそうに顔を歪めてから、俺の目をまっすぐ見つめて。


「黄金のラエルと、彼の神の魔術について何か知りませんか?」


 忘れかけていた、レイアの言葉を思い出させるような言葉を並べた。

あれは何年、いや何十年まえの話だったっけか。


『この黒いフードに長い赤色のマフラーの男を見つけたら必ず逃がすな、そして俺様の所につれてこい』


『んだよこの絵……こんな奴見たことねぇな。 どこの大陸の人間なんだ?』


『コイツは黄金のラエル。第七大陸の神だ』


『待て待て、第七? 第六の先は無いんじゃなかったか!?』


『無かったことにされただけだ、だがそれについて話すつもりはない、ただそうだな……俺様や他の神を裁く権利と力がコイツにはあるとだけ言っておこうか』


 くだらないいつもの雑談の中で、たまたま話題に上がっただけだった。

レイアから人探しなんて頼まれたのは初めてだったし、明るい空気だったから俺はいつも通りの反応を返してやったんだっけ。


『裁くって……流石レイア様だ、神クラスの悪事を働いたのか?』


 ニヤつく俺を見ながら、レイアは静かに。


『……ああ、俺様はアイツに殺されても文句は言えん』


 そう言って、笑っていたんだ。

シアも俺も知らない大陸に、知らない神。

調べても殆どおとぎ話だと断言できる程度の逸話と、記録は見つけることが出来たが……。


「名前は聞いたことがある、でも会ったことはないし、どんな人なのかも知らないよ」


 ラエルについて書かれていた石板は、もう何年前の記録か分からないぐらい古かった。

神がどれだけ長寿か知らないが、おそらく今この世にいないだろう。


「そうでしたか……ではここでこの話はやめましょう! 今から同志を説得してみますね」


 残念そうな顔してから、ラタは立ち上がって元気よく扉を開けた。


「少しだけ荒っぽいやり方をしますけど、いいですか?」


「ルイサを女の子にするやり方以外で頼む」


「わかりました、それじゃあ……さっき私に命令した罰として、ボコボコにしてきます!」


 満面の笑みを浮かべた彼女が部屋を出てから数分後。

地面が揺れて、爆発する音が響き、この白い石造りの家がぶっ壊れるんじゃないかってぐらいの暴力的な魔力が溢れていった。


「そんな奴の味方をすんじゃねぇ、ラタ!」


「味方はしてません! ただ、クォーツ様からバルトロス様とネマの居場所を聞いて案内して貰わないと貴方の父に会えないんですよ!?」


「んなことはわかってる! だが、俺はコイツを信用できねぇ」


「あーもー! とにかく、少し眠ってて下さい!」


 風に乗って届いてきた二人の会話が終わる時には、魔力も揺れも収まっていた。

おそらくルイサが負けたとは思うが、とにかくこれでやっと……。


「クォーツ、いるか? 」


「はいはい……あのですね、あんま言いたくないっすけど先輩の息子ヤバいですよね? 倒れてた先輩と途方にくれてた二人を助けた俺に平気で殺意向けてましたもん」


「相変わらずお前の魔術は便利だな、何度聞いても時を止めて移動できるなんて無敵だろ」


「五分間だけだし連発もしんどいし燃費も最悪ですけどね……」


 頭をかきながら笑う彼の案内で、ネマの所に。

俺、本体がある場所に行けるんだ。



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