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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
二幕目 嫌だッ! 息子の子供なんて孕みたくないッ!

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チヅラ·スメラ




 洞窟の中とは思えない程、大陸間移動洞窟の中は明るく、うすぼんやりとした記憶の中の光景とまったく変わらない。

まるで地上にいるかのような青空、雲、そして足元の草原。

涼しい風に暖かい気温、草の優しい香り。

全てが地上と変わらないどころか、こっちの方が自然らしい自然だろう。

すくなくとも、レイアーウの悪魔の血液を吸って育った木々よりもマシだな。


「ラタ、大丈夫か?」


「わ、私は大丈夫ですけど!? 全然へっちゃらです!」


「そうは見えねぇよ、震えてんじゃねぇか」


「これはその……とにかく何でもありません!」


 ラタを見ていて思ったが、彼女の年齢を考えれば俺とタリラが知り合った時には既にタリラがラタを産んでいないとおかしいよな?

だが、あのタリラが師匠以外の人物に体を許すとは思えないし……タリラの師匠は女性だった。

そうするとコイツは他人ってことになる。

だが、名前はラタ·ルリラなのだからルリラの一族にちがいない訳で。


「俺さ、そばにいた女の子すら守れない男はダメだってロスにフラれたんだよ」


「いきなり自分語りですか?」


「まぁ聞けよ。親父に会うまでお前を守るってロスと約束したんだ、だから心配すんな」


「つまり私は練習ってことですか、ずいぶんロスさんも性格が"いい"みたいですね」


 睨むな。

タリラの……多分妹。


「お前もタリラ様もさ、俺と違って傷を誇りに思ってないだろ? それがわかったんだ、今度こそ俺がお前を守ってやる。 誰であろうとお前に指一本触れさせやしねぇ」


 雑談としてうかんだ疑問をラタに話しかけようとしていたが、息子がめちゃくちゃいい話をしている。

ラタも驚いているし、俺は彼女以上に驚いている。

流石俺の息子だ!

素晴らしい、よくここまで恥ずかしいセリフを真面目な顔で言えるな、もう凄いとしか言えん!

これが若さってやつかな……フフッ。


「えーっと……その、同志君?」


「なんだ?」


「今のセリフ、めちゃくちゃ気持ち悪かったです」


 カッコいいこと言ってたと思うんだが、違うのか!?


「んなっ!?」


 息子と同じ反応をしてしまった俺をラタがジッと見るので、素早く地図に視線を戻して歩みを進める。


「誰であろうと私に指一本触れさせないとか異常者です、悪魔から守るだけで十分ですから、そこまで縛るのはやめて下さい。そういうのは恋人に、つまりロスさんにだけやっていればいいんです!」


「けど俺はお前を守るってロスと約束をしたんだ。だから……ほら、今はお前を恐怖から守りたかったんだよ」


「恐怖……ですか」


「洞窟に入ってから指先が震えてたろ? だから少しでも気を紛らわせようと思ってさ。ま、俺そこまで話の引き出しがあるわけじゃねぇから、お前にとってどうでもいい話しかできなかったけど」


 振り返ってラタを見ると、指先の震えはなくなっている。

そもそも俺は震えていたことに気が付かなかったから、ルイサの勘違いかどうかまではわからない。

けれど、勘違いってことはなさそうだ。


「私のこと見てたんですか!? このキモキモロリコン!」


「俺はお前のために頑張ったんだぞ!?」


「勝手にまじまじと見られて気分最低です! でも……一応ありがとうと言っておきます」


 もしそうなら、ラタはあんなにも綺麗な笑顔を見せたりしないだろう。


「同志君がいれば……私が逃げる時間を稼ぐ駒には困りませんね!」


「お前が逃げるレベルの戦闘になるなら全員で逃げるっての」


「ずいぶんと頼りない男ですね、よわよわルイサ君!」


 二人の距離が少しだけ、縮まったような気がした。


 

 道中で教団らしき人影を見ることは多く、横穴に隠れたり、ラタの姿を見えずらくする魔術で乗り切ったり、バレずに動くのが無理な場所ではルイサが団員の背後をとって倒し、毒の蛇を呼び出してシアのように綺麗にさばいていく。

そして、二日程歩いて俺達は洞窟を抜けた。


「ここが第二大陸、チヅラ·スメラか。ラタはレイアーウに来る時に来てるんだっけ?」


「いえ、私は第一大陸に急ぐためにここで洞窟から上がらずに進んでましたから、初めて来ますね」


 この空気がとても懐かしい。

レイアーウとは違う植物に、知らない鳥や魚。

うちの大陸に比べて圧倒的に自然が残されているこの場所に来るのは何年ぶりだろうか。


「ルイサ! あれ、あれって方舟ですか!?」


「俺も初めて見るけど、多分、あれが方舟だ」


 ラタの指差す先、第二大陸の空には輝く星よりも少し大きな舟が飛んでいる。

俺は近くで見たことがあるから言えるが、アレは舟なんていいもんじゃない。


『方舟って、結局は船なのか?』


『船は船なんですけど……そうですね、生きた人は乗せてない幽霊船っすかね』


 クォーツの説明はフワフワとしていたし、奴の大陸の話に首を突っ込む必要も、意味もないと思ってあれ以来その話はしなかったから、そこまで詳しい話はしらないが、まともな物じゃないのは間違いない。


「見ろよロス、方舟だぞ!」


「あれが方舟……凄いね」


 さて、まずはネマが何処にいるかだな。

俺の今の魔力じゃ大陸全てを探知するなんて無理だし……うーん。

まずはこの大陸一番の街を探すか?

でもこの大陸の地図は持ってないし、こうなればクォーツ達の拠点があった場所を目指そう。


「さてと、行こっか」


「俺他の大陸に来たのは初めてなんだけど……ロスと初めてを過ごせて嬉しいよ」


「はいはい、私はもう何回他の人の初めてを奪ってるかわからないけれどありがとね」


「あぶぶぶ……脳が……」


 白目になってルイサがすぐに真っ白になっていく。

効いてる、レイアから教えてもらったワガママ傲慢嫌な女ムーヴがルイサに効いている!

曲がりなりにも流石は神、そして義理の父。

帰ったら礼を言わねぇとな。


「その言い方だと私で初めてを経験したみたいに聞こえるからやめて下さい、キモ猿君」


「お前は眼中にねぇよ……」


「イチャイチャするのはいいけど、とにかくスメラ·スゥバブに向かうよ」


「バブってそんな……ロス、流石に子供は早いって……」


 それはボケだよな!?

いきなり元気になって俺の背後を取りやがって、魔力探知で気付くよりも先に動くとか、シアに似てきたな。

嬉しいが、とにかく俺をそんな目で見るな。


「行こっか、ラタさん」


「はい、あの変態はここに捨てて行きましょう」


「冗談だって! 軽い冗談だってば!」


 そういうネタで女に近づくとか……やってることがガキ丸出しなんだっての。


 スメラ·スゥバブはチヅラ·スメラの西の街だった。

大陸間移動洞窟から数日歩いた所にあったのは覚えているんだが、具体的な場所まではわからない。

普通なら道が整備されていたり、悪魔に滅ぼされた村や集落をたどって大きな街に行けるもんだが、この大陸にはまったくソレがない。

あるのは手付かずの自然、それだけだ。


「ずーっと同じ景色ですね」


「進んだ所に小さな村があって、そこから北に進めばいいと覚えてたんだけど……おっかしいな」


 人の気配がしない。

今の俺で探知できる最長の距離を魔力で探るが、野生動物が少し見つかるだけで、人が出すゴミや音、熱。

そのどれも感じとることができない。


「ロス、あれはなんだ? あの黒のやつ」


「あれは……なんだろ」


 長方形の黒色の石に見えるソレには、何かの文字が刻まれている。

異世界の言葉なのか、それを全て読むことはできないが。

その中にも、読める言葉があった。


「墓か?」


 そしてどうやらこれは。

 

 "ウェルハの裁きを受けし者"。


 "アヤヤ·フェーリ"はここにいる。


 俺の知らない人物の墓だった。

手入れされておらず、少し叩けば壊れてしまいそうなそれをよく見ようと近づくと。


「ルイサ君、見てください!」


「言われなくても見えてるっての!」


 似たような墓が、草木の間にいくつも置かれている。

等間隔に間が開いていて、確実に人が作って置いた物。

墓石を探すように魔力を集中してもう一度周囲を確認してみると。


「見えてるのが全部じゃなさそうだね、二人とも、一回集中して周囲を探ってみてよ」


 四方に墓が広がっていて、俺達の足元さえ、この踏んでいる草の下には墓が広がっていた。



 



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