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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
二幕目 嫌だッ! 息子の子供なんて孕みたくないッ!

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Vano·Dite




 やっと砦に戻ってこれた。

ルイサの奴は俺がビシッと言ってやった後からトボトボと歩いていて、顔に生気がなかったし、息子が壊れているのにシアは何も言わないし……空気がとにかく重かった。

俺はそんな変なことは言ってないし、親だからこそ言ってやるべきことを……うん、しっかり言ってやっただけだ。

少し頭を冷せ、そして反省しつつ心を入れ換えるんだ。

俺の息子なんだからそりゃミスもするだろうさ、だがお前は優秀なシアの子でもあるんだから賢いはず。

こんな少女の体で出来ることは、言ってやることぐらいだが、お前なら成長出来るって信じているぞ。


「よし、それじゃあまずはレイア様に」


「悪い……少し一人になりたい」


「ああ、その……ルイサ」


「俺……確かに勝手に舞い上がってた……ごめん」


 昔、シアにフラれた時の俺みたいに真っ白になった息子が自室に当てられた部屋によろよろと向かっているのを見送ってから、シアと共にレイアのいる大部屋に向かって歩く。


「ルイサが反省してくれるといいんですけど」


「そうね」


「ずいぶんさっきから悩んでいるみたいですけど、何かありましたか? 私で良ければ相談に乗りますよ」


「そうね……貴女があの人からどこまで聞いているかわからないのだけど、この嫌な魔力に心当たりはない?」


 真面目な顔をしながら胸を強調するように腕を組む彼女を見て、今確実にふざけてはいないと確信し、目を閉じて魔力探知に集中してみる。

感じられるのはルイサ、レイア、シアに……あれ?

ライフと博士がいない?

いやシアが言ってるのはこれじゃないよな、えーっと、もう少し広げてみるか。


 感じ取れるのは街の人々の持つ微弱な魔力に、未だ処理されていないであろう悪魔の死体から放たれるやつら特有の魔力。

鳥や動物も見えてきたが……ダメだ、今の俺じゃこの街全体を見るのが限界だ。

昔なら大陸の半分は感知できたんだがな……トホホ。


「街の中には特に気になる魔力はありませんけど」


「この街じゃないわ、"疎開都市テイテオ"の方よ」


 そんな見れて当然みたいな顔しないでくれ。


「すいません……私じゃそこまで見れないんです」


「あら……まぁいいわ、とにかく禍々しい魔力があるの」


「禍々しい、ですか?」


 禍々しい魔力と聞いて嫌な予感がした。

十四年前、第一大陸に邪悪な教えを広めようとした剣士をレイアと共に追い払った記憶が蘇る。

アイツは……危険な奴だったし、使う魔術や剣技もとにかく異質だったっけ。

まぁ、この俺がコテンパンにしてやったんだ、もう来ないだろう!


「この魔力……とにかく嫌ね、とにかく暗くて底が見えなくて気持ち悪い」


「気にしすぎですよ! それよりもその……ルイサもいないことですし、たまにはルイサだけじゃなくて私のことも抱き締めてくれても……」


「えっと、それはどうして? 何で私がロスちゃんを抱き締めないといけないのかしら?」


「ほら! えーっと、女子会ですよ女子会! それにこれからも一緒に第二大陸にいくわけですし、仲良くなるに越したことありません」


 ルイサにあんな説教をしたばっかりだが……いや違う!

シアはもう俺の女だ、これはまったくルイサと状況と事実が違う。

この女の体になっても、俺の魂と心はシアを求めている。

特にあの大きな胸に飛び込みたいって気持ちは全く衰えない。

この体じゃなかったらシアをベットに連れ込んで……うぅ、この女の体はやっぱり不便だ。


「なんだか目線が気持ち悪いから嫌」


「そんな!」


 シアに俺の心を読まれたのか、華麗に俺の欲望が回避されていると、レイアの待つ部屋についてしまった。

アイツの前じゃシアはめちゃくちゃガード固くなるし……また今度チャレンジよう。

絶対に胸に顔を埋めてやるからな!


「来たか三人……あ? シアコトル、息子はどうした?」


「息子はこの子に心を壊されて部屋で休んでます」


「ああ、成る程な……ロスはずいぶんとモテるなぁ」


 ニヤニヤしがって、ふざけんなよコイツ!

お前も自分の息子から狙われてみやがれってんだ。

……いや血の繋がりは無いとはいえ、育てた娘は俺が貰ったからそれを経験する日は来ないな。


「レイア様の前で何故立っているの? しっかり跪きなさい!」


「ひっ! ご、ごめんなさい!」


 シアが完全にバルトロスの体の時の対応をしていた俺を、目線だけで殺せるような瞳で睨んでいる。

思わず素直に謝ってしまったが、英雄と呼ばれた俺が妻に頭が上がらないってのはどうなんだろうか。


「フフッ……ざまあみろ、神に対する不敬をよく指摘したな、シアコトルよ」


「当然です」


 口を手で押さえて笑いをこらえるレイアと、頭を下げて膝をつき畏まる妻。

このムカつくが懐かしい光景を俺はよく覚えている。

この部屋の趣味の悪い黒と金色の、奴の眼帯と同じカーテンや、この風の匂い。

レイアのふざけた態度、微動だにしないシア。

少しだけ……昔に戻ったような気がした。


 あの頃となんら変わらない。

変わったのは、俺の体ぐらいなもんだ。

そしてここまで変わらないってことは、この後の流れも変わらないだろう。

来るだろうなと構えつつも、俺の心はこの一瞬を頼んでいた。


「さてと……Vano·Dite教団がこの大陸にもやってきたとの情報が入ってな、今ライフと転生者が調査に向かっている」


「やはり、あの魔力は聖女ギアマトゥルの物でしたか」


「ちょっと待ってください!」


 俺が声を上げ、二人の会話をぶったぎった事に対してシアは怒って睨んでくるが、それどころじゃない。

あの教団がまた来たってのか!?

いや、でもあそこは俺とレイアでほぼ壊滅させて追い払ったはずだ。


「不敬な! 待つのは貴女です、神の前で金言に割って入るなんて!」


「それは謝ります、私はバルトロスからレイア様と二人であの教団を壊滅させたと聞いていましたので、驚いてしまって……」


「ロスが"どこまでバルトロスから聞いているか"は知らんが、俺様からあの教団について説明しよう。シア、お前は少し黙ってろ、今はなにもしなくていい」


 レイアがそう釘を刺すと、シアはほんの少しだけ黙ってから、「わかりました」とだけ答えた。

そんな妻の手にはナイフが握られていて、俺のいつもの無礼が許せなかったのだと伝わってくる。


「さてと、十四年前に俺様とバルトロスで教団を追い払ったところまでは知っているよな?」


 レイアめ、俺がバルトロスだって分かってんだろうが。

言われなくても覚えてるし、忘れられねぇっての。


「はい、そこまでは知ってます」


「始まりは第二大陸で方舟計画が始動して、それに巻き込まれないように、逃げてきた人々がいてな、それで……」


 俺の記憶と完全に一致することをペラペラ話やがって、記憶力アピールか?

自分の娘にお義父さんはこんなにもすごいんだぞってアピールしてんのか?

やってることが小物すぎる、本当に神なのか?

そう何百回と頭に浮かんだ疑問がレイアのアピールを無視させていくが、知らない単語を俺の耳は聞き逃さなかった。


「今この大陸に来ている素敵な、招かれていないお客様は三人だ。"灼熱"のナーパム·エストス、聖魔術師ミファ·オンブラ、それに元聖女の騎士ギアマトゥルの三人が確認されている」


 灼熱と聖魔術師は知らない称号だ。

それに邪教が聖魔術師ってのはどうなんだ、極悪魔術師とかの方がいいんじゃねぇのか?

まあその二人はいいとして問題は……ギアマトゥルだな。

それに……。


「ギアマトゥルが元聖女なら、今はいったい……」


「それは」


「聖女ミウク、それが今の教団のトップですよ、ロスさん」


 扉がいきなり開いて、部屋にラタが入ってきた。

アレがタリラの弟子……もとい、タリラの娘か。

ちっとも似てないな、本当に娘か?

中身が終わっているのと、実力があるのは魂が魔王の中に閉じ込められていた時に見ているが、今の彼女は幼い見た目通りの、ただの怯える少女になっていた。


「代わりに説明ありがとう、だが今は黙ってろ」


 ラタは一礼をしてから、シアを見て、ぎこちない動作で跪いた。


「お前達も知っているとおり、このレイアーウから第二大陸に行くには大陸間移動洞窟を使わねばならん。だがこの大陸に現れたということは教団が洞窟を押さえている可能性が極めて高い。そしてアイツらが街に入ってくれば一般人の被害が多数出ることも予想できるだろう」


 つまり俺が自分の体に戻る前に、教団ともう一度争わないといけないってことかよ。

この体で……勝てんのか心配だが……。


「戦わないと、第二大陸には行けないってことか」


「レイア様、発言してもいいですか?」


「いいぞ、タリラの弟子」


 しかし困ったな、あの頃でさえかなりギリギリだったってのに今回は名前の知られている仲間が二人もいやがる。

人数的にはまだ有利だろうが……。


「私もお師匠様も教団の加護を受けています。ですから、ミウクが出たら私は操られてしまう可能性が高いです」


 に、人数有利なくなりそうなんですけど!?

驚いているのは俺だけじゃない。

レイアも、シアだって驚いてラタを見ている。

そしてラタは少しだけ深呼吸をしてから。


「私もお師匠様も、無理矢理ミウクに聖魔術師の称号を押し付けられました」


 そう言って、彼女とタリラの身に何があったのかを話始めた。



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