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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
二幕目 嫌だッ! 息子の子供なんて孕みたくないッ!

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魔術師 ネマ·ブライアの失敗




 魔術師ネマ·ブライアは、少し変わった魔術師だ。

彼女に使えない魔術は転生者特有の"転生魔術"と、神の魔術ぐらいだろう。

だがその力は、普通ではあり得ない方法で手に入れた物であり、かつての仲間のタリラ曰く"燃費悪すぎて使い物にならん"らしい。


「ネマ·ブライアさんか……どんな魔術師なんだろ」


「変わってますよ、見た目はとにかく美人ですけどとにかく変人であの人に長く関わっているととにかく金がかかります」


「ラタといいネマさんといい……魔術師ってのは変人しか居ないのか?」


「ラタって、あのタリラの弟子か……まぁうん、確かに変な人が多いよね……」


 タリラの奴め、弟子にどんな教育してやがるんだ?

多分望んでああした訳じゃないだろうが……それにしてもあの女は人として歪んでやがる。

自分の師匠を孕ませるのが目標って……しかもタリラもラタも同性だぞ?

とにかくイカれてる。


「また女……つまりそのネマって言うのが夫の愛人で……成る程、繋がったわ」


「つ、繋がった?」


「ええ、つまりそのネマこそ真の愛人でロスちゃんはその娘ね!」


 どうしてそうなるんだよ!

何故!

なんで!

いったいどうして!

シアの奴普段は賢いくせに、どうしてこういう時は知能が下がるんだよ。


「私の夫によくも……たっぷり"お礼"しなきゃね、許せないわ」


「母さんまた……あのさ、いつも親父の話になると壊れるのやめろよ」


 俺の話になると壊れる?

つまり、俺への愛が深すぎてこうなってるって事だよな。

そっか、俺を……エヘヘ。

俺も愛してるぞ、シア!


「ネマさんは親父の体を悪魔から守ってくれてるいい人だろうし、あとロスの母親かもしれねぇんだぞ? 流石に娘の前で母親を許さないって言うのは違うだろ」


 ……ルイサ?


「それもそうね……ごめんなさいロスちゃん」


 シア?


「そもそもだ! ネマさんが愛人だとしても、それになびいた親父が全部悪い! ロスもネマさんも悪くない、悪いのは全部クソ親父だ」


 ルイサーッ!

俺が浮気するはずねぇだろうが!

お前ならわかるだろ、シアがいるのに浮気なんかしてみろ、確実に殺されるだろうが。

落ち着け二人とも、落ち着いてくれ。


「大丈夫だぞロス、お前もお前の母親も悪くないからな」


「そうね、悪いのは全部あの人よ」


 だから、それは俺が悪いってことだろうがーッ!


「それじゃあ第二大陸に行くってことでいいんだよな? ライフさんや博士、あとラタにもそれを教えないとな、親父の亡命か第三次魔王討伐隊のメンバーとしてか知らないけど、迎えに来てくれてんのは確かだし」


 亡命するって、この俺がか?

家族を置いて逃げるわけがない。

そもそもだ、育ての親であるレイアのいる大陸からシアが離れるとは思えないし、俺が勝手に決められることじゃない。

あとその……第三次魔王討伐隊ってのは何だ?


「ルイサ、その第三次魔王討伐隊っていうのは何?」


「そっか、ロスは魔王に魂を持っていかれて聞いてなかったんだっけ。ラタが言うには、前のメンバーとプラスで強い人を集めてもう一度魔王に挑むらしいぞ」


「もう一度魔王に挑む……」


「ああ、親父はそのメンバーの一人だってさ」


 誰がそんなふざけた計画を立ててんだ?

そりゃ魔王を倒して平和な世界を手に入れるってのはやらなきゃいけないことだろうさ。

だが……もう俺は戦えない。

この体じゃ魔王本体どころか、半分の実力しか出せない魔王の影にすら負けちまうんだから挑んだって負けるのが確定している。


 仮に俺が元の体に戻れたとしても……もう戦うなんて出来ないだろう。

それに他の仲間だって、レイアですらアレをどうやって殺しきるのか分かってないんだ。

それがわからない以上、何度挑んだところで意味はない。


「それはラタさんが言ってたんだよね?」


 後で話を聞いてみるか……タリラが言い出すとは思えないけど。


 この話題になってから一言も話さずに何かを考えているシアコトルを連れて、俺達はレイアの待つ街中央の砦兼城に向かって歩きだした。

シアが無口で何かを考えている時は大抵……よくないことがある前兆なんだよなぁ。

ルイサも黙っちゃって空気が重い。


「そういやこの街は治安が悪いから気を付けてよ、ルイサ」


「ああ、わかってるよ」


「本当かぁ? 俺……じゃなくて私なんてさっき痴漢されちゃったよ。まったく、こんな傷だらけの女の体なんて触る物好きがいるなんて」


「ロス、それはどいつだ?」


「……ルイサ?」


 まるで昔のシアコトルを見ているような気持ちになった。

懐かしいが、それ以上にヤバイ。

吹き出る殺意と、どす黒い魔力は昔の妻そっくりだ。

周囲で歩いていた人々も距離を取って、俺達を中心に小さな円が出来上がっていく。


「俺の女に手を出したクソ野郎はどこだ?」


 そうだった、コイツもこの顔や体に傷が入りまくったこの体が好きな物好きの一人だった!


「落ち着けルイサ! 私はなんともないし、気にしてないから」


「ごめんな……怖かったよな? 俺が少し離れたばっかりにこんな怖い思いをさせちまって……」


「いや怖くはなかったというか……」


「だからお前のことはもっとしっかり見るようにするよ! どこいても、何をしていても……俺がお前を見ているよ」


 ……タリラの奴にラタは教育失敗だと怒ってやろうと思っていたが、うちも対してかわんねぇな、これ。

うちの息子がそのうちストーカーとかになりかねんぞ。

成長してくれるのは親として嬉しいが、女を愛するって事は自由を奪って支配することとは違うってことを教えてやらねぇと。


「ロス、手を繋いでくれるか?」


「えーっと……うん」


 断ったら暴走しそうだし……ここは従おう。

それにしてもコイツの手は、ずいぶんとゴツくなったもんだ。

昔は銃なんて握ってなかったから綺麗な少年の手をしていたが、今は手にいくつかの傷があって、肌も固くなっている。

まるで俺の手みたいじゃねぇか。


「フフッ」


 昔はルイサが戦わなくていいような世の中にしたいってずっと思っていた。

銃や剣じゃなくてペンを握って、学校のテストに苦しんで彼女を作って、クソ親父なんて言われながら親子喧嘩をする光景を夢見ていた。

けれど今、コイツは戦場に立っている。

申し訳ないとも思うが……やはり、親として息子が俺に近づいてくるってのは嬉しいな。


「そんなに握りしめなくても俺はずっと側にいるよ、ほら、これでどうだ?」


「ひゃいっ!?」


 繋いでいた手は離れていくが、その代わりにルイサの手が肩に回された。

そのまま引き寄せられて、まるで……コイツが"俺を俺の女だぞ"と見せびらかしているみたいで恥ずかしい。


「ルイサッ! ち、近い!」


「まだ服があるんだ、近くないよ」


 息子が俺に近づいてきてくれて嬉しいとは思ったがな、こういう物理的な距離は適度なままでいてくれ!

それに服があるからまだ近くないだと!?

そんなセリフ……俺がシアと結婚してからも言ったことねぇぞ!

コイツこのままだと……『俺が責任を取る』とか言っていきなり襲ってくるかもしれん。

息子が犯罪者になるのは嫌だし、俺が息子に襲われるのも嫌だ。


「ルイサ、私はね……」


 言うべきだ。

もう俺がお前の親父だって、その女に対する接し方は間違っているって……それが親としての……。


『忘れないで、その体に入っているのがバルトロス様の魂だってバレちゃダメよ? 少しなら大丈夫かもしれないけれど……お姉さんは魂が消えても責任取らないゾ♡』


 長い髪の女の姿がちらつく。

シアに引けを取らない程の体と美しい美貌は、これまでに何人もの人間を誘惑しただろう。

クォーツから、アイツが結婚詐欺で金をむしり取っていて犯罪者として追われていると聞いた時は何の疑問もなく、成る程と納得したんだっけ。


『バルトロス様にかけた魔術はかなり不安定なのよ、もっと金目の物があれば安定させれたのに……』


 最後に見た彼女はそんなことを言いながら、ちぎれた俺の体の腕を持って笑っていたんだ。


『知られることが、この魔術の欠点よ♡』


 レイアにはもうバレている。

俺が、ロスがバルトロスだと知っているのはまだ四人だけだ。

だが、五人目は大丈夫なのか?

ここでルイサとシアに正体をバラしたら俺は、消えてしまうんじゃないのか?


 もう二度とルイサやシアに会えないのは……絶対に嫌だ。


「どうした、ロス?」


「私はルイサの女じゃありません! 貴方のその態度は自分の女にすべきで……ううん、貴方にはまだ女を愛する資格がありません!」


 弱い俺は、家族と離ればなれになるぐらいならと、この体を受け入れてしまった。




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