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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
一幕目 君が親父の愛人か、腹違いの妹だとしても

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世界を救い運命を切り裂く




 俺がこれまで学んできた常識。

この世界は外の海と呼ばれる猛毒の水に包まれていて、その海の先から悪魔が人間を食べるためにやってきたこと。

意志疎通は部分的に可能だが、奴らは決して人を襲うのを止めない。

奴らこそ人類の敵であり、我々の領土を侵略する悪魔を止めないといけない。

そんな常識だった。


 この世界がどうなっているのか。

そもそも、俺達が何故悪魔から襲われるのか。

そんなことは教えられていなかった。


「ちょっと待て、つまりあれか? 俺達が魔王の世界に攻め込んでいるってことか?」


「昨日のように思い出すが、あれは百年と少し前だ。七人の神を名乗る者達がどこからか現れて俺達の世界に入り込んできたんだ」


「いやいや、信じられるかっての」


「君はこの……第一大陸だったか、この大陸の西の果てに何があるか知っているか?」


「そりゃ、あんたの城があるんだろ?」


 魔王は深いため息をついて、ボロボロの右腕で頭を抱えた。


「そう教えられているのか……ハァ、そんな城なんてあるはずがないだろう? 城を作るにしても何故お前達の大陸に作る必要がある? リスクだらけで何も俺にメリットがないじゃないか」


「そんなの言われても……確かにそうだけどさ、俺達にはそう教えられてんだよ」


「そもそも変だと思わないのか? 君達は何度か俺の本体を倒すために強者を送り込んできているが、君達の世界の強者は間違いなく神の座にいる者だ。その者達が戦わず、君達人間にすべてを任せているこの状況に違和感を持ったことはないのか?」


 それは俺も疑問に思ったことがある。

学校の先生は神様が戦うまでもないとか、人間の問題だからとか言っていたが、母さんと親父の答えは確か……。


『レイア様はまだ治療中なの、だから戦わせるわけにはいかないの』


 母さんはそう言ってたよな。

親父は……。


『詳しいことは知らん!』


 ダメだ、あのクソ親父の答えはなんの役にもたたねぇ。


「疑問に思ったことはあるけど、これは人類の問題だからと教えられてる」


「人類の問題だと? ふざけるな!」


 いきなり凄まじい風とそれに混じった異質な魔力が魔王を中心に吹き荒れた。

思わず身構えて銃を取り出して銃口を向けるが、殺意は感じない。


「アイツら七人が勝手にやってきて、それを人間の問題だと、人間のせいだと? 俺がどんな気持ちで戦っていると思っているんだ、全てあの神達のせいなのに……クソっ!」


「おい、少し落ち着いてくれよ!」


「ああ、すまない。だが銃はそのままでいいぞ? 俺の中の魂がお前に"油断するな銃は構えろ"とうるさいんでな」


 ロスの魂が俺を見ている!?

早く君を助けたいが……今は、コイツの語る真実とやらに興味がある。

俺や親父、母さん……いやこの大陸のみんなに教えられている常識は根深く俺に住み着いているんだ。

それを否定するのは難しく、ましてや敵と教えられてきた……親父が倒しにいったはずの魔王から語られる言葉で全てが払拭できるとは思えない。

けれど奴の言葉は聞く必要があるって、心中の好奇心と違和感が暴れているんだ。


「それで、俺に教えたいことってのはなんだよ」


「お前達の敵は俺じゃない、七人の神を名乗る邪神どもだ」


「ふざけるのもいい加減にしやがれ、作り話にしちゃなにもおもしろくねぇぞ」


 銃を握りなおして銃口を頭に向けるも、魔王は話を続ける。


「何故神はお前達に戦わせる? 転生者を送り込み、自分は出てこず、人々を守ることもしない。それで奴らは神を名乗り……何をしているんだ? 俺は自分の世界が襲われたから戦っているが、お前達の神は……本当に神と呼べる存在なのか?」


「レイア様はお前が現れた時に人々を守る為に戦ったはずだ、他の神がどうか知らねぇけど、レイア様は違う!」


「違わないさ、この作り出した俺の分身は本体の半分の力も使えないのに、アイツは俺に傷一つ付けることは出来なかったんだ。あの程度の力で神を名乗る資格は無い! その後に現れた壊滅と毒使いと闘士の三人の方が強かったのだぞ」


 確かにレイア様を助けに行った時……コイツは無傷だった。


「守る力は無い、責任は押し付ける。こんな邪神に支配されているのか、はたまた崇拝しているのかは知らないが、奴らは"この争いを終わらせる唯一にして簡単な方法"を知っているのにそれをしない! ただ君達を苦しめているだけじゃないか?」


「それは……でも、この争いを終わらせる方法なんてあるわけが」


「あるさ、そしてそれは君達の神だけでなく全ての神が知っている」


 常識が揺れる。

思考がまとまらない。

コイツがもし本当のことを言っているとしたら、俺達は……神ではない存在にコマとして支配されているってことになっちまう。

親父の努力と決意は?

それも全て……無駄だってのか!?


「もういい! 要点だけ言え!」


「君は神の力を持っている、残り六つを集めて残された人類を救え!」


「俺に……人類を救えってのか?」


「ああ、勿論俺も努力するがやはり君達の世界だ、人類と代表として君が人々を救え」


 何で人類の敵から人類を救えとか言われないといけねぇんだよ。

つーかそもそも、俺はそんな英雄なんかじゃないし、なりたいと思ってもいない。

今、俺が求めているのは……。


「俺はロスのために戦ってるし、彼女に惚れて欲しくて強くなろうとしてんだ。世界がどうとか、人類を救うとか、そんなもんに興味はない」


「君が協力してくれるなら、勿論俺も協力はする」


「なんだよ、悪魔の軍勢を引かせてくれるのか?」


「いや、俺が作り出す下僕はともかく自然発生する免疫は止められないが、俺でも弱めるぐらいはできるだろう」


 魔王は俺に一つの要求と、二つの見返りを提示した。

俺に残りの六つの神の魔術を集めて世界を救えと。

そして、俺がそれに協力している間は悪魔の軍勢を弱めてくれる。


「そして君に力をやろう、使うのはかなり先かもしれないし、もしかしたら使うことなく死ぬかもしれないが、世界を救い運命を打ち破る俺の力だ、受け取れ」


 魔王が手を伸ばした。

俺に触れろってことか?

敵意はないし、悪意もないが魔王から受け取る力なんてろくなもんじゃないだろう。

俺なんかに託したことを後悔させてやる。

母さんが見てたら触れるなって警告しただろうし、ロスが見てたら……なんて言ったかな。


「後悔するぞ、魔王」


「しないさ、俺に見える君の運命がそう言っている」


 ちぎれてしまいそうな腕に触れた瞬間、脳内に一つの……知らない何かが浮かんだ。

それは魔術ではなくて、どう使うのかわからないもので、一本の剣のような形をしている。

七つの穴が刀身にあって、そのうちの一つが埋まっているが残りには何も入っていない。

これが、神の魔術をセットする何かだってことはわかるけど……。


「それは運命断裂器(ディスティニー·キラー)だ、使う時にはそう詠唱しろ」


「俺は銃士だぞ、こんな剣みたいなの貰っても仕方ないって」


「期待しているぞ、壊滅の息子……希望よ」


 魔王に触れて一瞬しか経っていない。

まばたきを数回できるかどうかって時間しか経っていないのに、奴の体は粉々になって消えてしまった。

そして俺の体の中に確かに存在する新しい力と、手には丸い何かあった。

肉眼でそれを見ることはできないが、魔力を通して見ると……そこにはロスの魔力があった。


「魔王ってんだから、約束は守らないとおもってたんだけどな……まぁそれはいいや……おかえり、ロス!」


 手の中の魂からは、大きくて、武骨で、ひどく懐かしい温かさがあった。


 目的は、達成した。

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