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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
一幕目 君が親父の愛人か、腹違いの妹だとしても

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もはや神の魔術は敵じゃない



 神の魔術には種類があると聞かされたけど、まさかそれぞれに発動条件があるんだろうか。

確かに魔術の運命を書き換えるなんてとんでもない物だから、連発できたら無敵なのはわかるし、それができたら魔王に負けてないだろう。

驚きはしたけれど、ラタ責めるつもりはないし、そもそもそんな余裕はない。


 魔王が俺達の所まで飛んで来ているんだ、この話は後でいい!


「来るぞ、ラタ!」


「わかってます! 魔術:フォグストーム!」


 伸ばした腕の先すら見えない程の濃霧が立ち込める。

さらにソレが激しい竜巻のようになって、よく見ると中には氷の刃がいくつも隠されている。

空気が動くなら、俺の魔術も混ぜ込めるはずだ。


「魔術:壊死をもたらし冥府に送る(ミラクトラ)!」


「私の魔術に何を混ぜたんですか!?」


「体の内側から壊死させる魔術だ、本来は効果範囲が狭くて相手の吸い込む位置まで近づかないといけねぇけど、この霧の流れに混ぜれば使えると思ってな」


 白色の霧が黒くなっていく。

巨大な霧の竜巻を回避したとしても、少しでも周囲を漂う霧に触れれば俺の毒がお前を殺す。

さあ魔王、どうする?


「なるほど、ならば! セイ!」


 ラタと俺の魔術は、奴が剣を横に振っただけで書き消されていく。

黒い霧は消え、竜巻は無かったように綺麗な空間が出来上がり、そこから魔王が突っ込んできた。

引金を引いて射撃をするも奴のボロボロの鎧に弾かれて、俺の目の前まで距離を詰められる。


「毒の銃士、まずお前からだ」


「テレポート!」


 剣が当たる寸前でラタが俺を動かして、魔王の背後に移動した。

後ろから見ても、奴はかなりボロボロで何故動けるのかが理解できない。

おそらく母さんが切ったであろう刃の傷が首にあるのが一瞬見えたが、断ち斬るまではできなかったみたいだ。

だが、母さんがただ斬るだけとは思えない。

確実に奴の体内に何か毒を仕込んでいるはずだか、毒が効いていないのか?。

だけど、俺の最初のカタストロフが当たった腕をコイツは自分から切り落として……。


「魔術:アクセスチェーン!」


「鎖ごときで俺を止められると思うなよ!」


 ラタに近づく魔王に向かってカタストロフを撃つが、レイアの魔術を使っていない俺の射撃はまるで第三の目があるかのように躱されて、あやうくラタに当たるところだった。


「私じゃなくてアッチを狙ってください! そもそも私にはお師匠様がいるので狙わないでください!」


「うるせぇ! どっちの意味でも狙ってねぇよ!」


 どうする、レイアの魔術が使える回数にも限度がある。

火力で押しきる……しかねぇよな!


「レイア·ロス·カタストロフ!」


 両手の銃からもう一度無数のカタストロフを撃ち出した。

だが、魔王はそれを見てから剣を空にかがげて。


「レイア·ダガー」


 剣を呼び出してカタストロフの全てを打ち消していく。

さっきはラタの力で消えない状態にしていたが、ダガーに当たると消えていき、膨大な魔力を消費する俺の攻撃が完全に防がれてしまった。

いや、それどころじゃない。


「それの攻略法は、君が教えてくれたな」

 

 奴は、俺の授かった力を完全に防ぐ方法を学習してしまったんだ。

これじゃいくら俺が魔力を削ってレイアの魔術を使ったとしても、奴を狙う攻撃を狙われれば意味が無くなってしまう。

さらに、俺が銃士である以上……レイアの魔術を防御に回されれば攻撃が完全に無効化される。


「マズいな……」


 銃はほぼ無効だと思っていいだろう。

少なくとも、当たったとしても消えない射撃をする必要がある。

こちとら弾が全部魔力で作られてんだぞ?

どれだけ強力に魔力を込めて弾を作ったとしても、何かに当たったら威力は確実に削れていく訳で……。


「マズいですね、これでは同志君が無能種無しになってしまいます」


「一応銃じゃなくても戦えるけど、そこまで得意じゃないんだよな」


 銃を魔術で作った空間に投げて、代わりにそこから剣を取り出して構えるが、どうにもしっくりこない。

銃ばかり使ってきた弊害だ。

つーかそもそもこの剣って特別な物じゃないのに、アイツを切れるんだろうか。

あと……。


「どうしましたか、同志君」


「剣は使えるんだけどさ、母さんに教えられた暗殺術しか使えないんだよ」


「それがどうしましたか?」


「斬る時に音が出ないとか、確実に動脈を斬るとか、そんな技しか覚えてないんだ。だから、この戦いで使えそうな物がない」


 ラタは顔をしかめた。

だけどすぐに真面目な顔に戻り、魔王から目を離さない。


「一応いつでも銃は取り出せるようにしておいてくださいね、対処方法を考えます」


「すぐ取り出せるのはもちろんだし、考えるのはお前の役目だろ!」


「前衛がいないのが響きますね……言っても仕方ないけどさっ!」


 魔王の移動は早く、剣の攻撃が作り出す風圧は凄まじい。

時々、奴の剣から斬擊のようなものが飛んでくるから、しっかり距離を取っていないと、アレに当たってしまうだろう。

俺の防御魔術じゃ風圧をどうにかするので手一杯だからな、振るう剣に直撃するのは絶対に避けなきゃいけない。


 苛烈な攻撃は更に激しくなっていく。

フェイントが織り交ぜられ、詠唱無しの細かな魔術が正確に俺とラタを狙ってくる。

だが、ラタは確実にそれを見てテレポートで距離を取りつつ何かをブツブツと呟いていた。


「あれに近づけるとは思えねぇな……」


 どうするかを考えて、ラタがテレポートで死角に退避させてくれた一瞬の隙にポケットに入れてあったスクロールを取りだそうとした時。

ポケットの中に、蛇がいた。

とても小さくて気付かなかったが、これは母さんの蛇だ。

それを捕まえると、不思議なことが起こった。


『やっと繋がったわ! ルー君、聞こえる!?』


「母さん!? どうやって……まさかこの蛇か?」


『その蛇は連絡用の蛇だけど今はそんなことはどうでもいいわ、色々と怒りたいし、私じゃなくていきなり現れた泥棒猫を選んだことも許せないけど……まだ魔王と戦ってるの?』


 泥棒猫って表現は気になるけれど、母さんの言うとおり今はどうでもいい。


「ああ、レイアの魔術が完全に無効化されたところだ」


『それも詳しく知りたいわね、でも今は一つ教えておくわ。私が魔王に首から流した毒の話よ』


 首にあったあの傷だ。

やっぱり、母さんは毒を仕込んでいたんだ!


『色々と試したけれど、魔王に一番効くのは感覚を奪う毒よ。本体と影のつながりを少しの間なら途切れさせることが出来るってことがわかってるわ』


 感覚を奪う毒か、それなら俺にも使える。

視力、手足、嗅覚、平衡感覚。

それらを狂わせたり奪う毒は、母さんにいやと言う程教えられてきた!


「わかった、やってみるよ」


『お願いだから死なないでね……ルー君』


「死なないためにも、やってやるさ」


『私の可愛いルー君……死んだら、許さないから』


 冷たく、理解不能な感情が込められた声で体にゾワゾワ感が襲ってきた。

母さんからこれまで感じてきた圧力のどれとも違う……明るく暗いソレは、魔王という一番の強敵がいるのに、目の前の強敵から感じるものよりも強い恐怖を感じさせる。


「ラタ!」


「作戦が決まりました! 同志君、合図したらレイアの魔術抜きでさっきの射撃を正面にして下さい」


 テレポートでさらに上空に飛び、ラタの言うとおりに銃を取り出してまっすぐに構える。

やることは分かってる、多分だけど一瞬だけアイツの近くにテレポートしてこれを近距離でぶっぱなすってことだろう。

そのついでに、母さんに言われた毒を流し込んでやる。

カタストロフに混ぜこむ毒の種類を変更し、ラタが「今!」と合図を出した。


「ロス·カタストロフ!」


 銃本体が当たりそうな程近くにテレポートし、レイアの魔術が無くてもこの距離ならば外さない。

俺が腕を動かさずとも、二つの銃口が魔王のひび割れた鎧を捉えている。

凄まじいテレポートの精度だと感心しつつ、俺はトリガーを引いてカタストロフを撃ち込んだ。



 

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