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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
一幕目 君が親父の愛人か、腹違いの妹だとしても

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レイア·ロス·カタストロフ




 空に浮かぶ無数の刃は、一つ一つが滑らかに輝いている。

まるで芸術と言われても納得してしまいそうなその光を、俺達は綺麗だと言うことはできない。

光を放つそれは、鋭く、それでいて命を断つためだけに作られていて、一切の遊びや装飾がない。

無機質な鉄の刃。

ただ、それがあり得ない数浮かんでいた。


「魔王が神の魔術を使うとか聞いてないんですけど!」


「俺だって聞いてねぇよ!」


「あーもー! プロテクション……はまずいですよね」


「防御をすり抜ける時に威力が上昇するからな……来るぞ!」


 刃は文字通り、雨の如く降ってきた。

一つでも当たれば人間には致命傷になるだろうに、この魔術には必中となるレイアの魔術が使われている。

回避行動には意味がない。

防御はさらに事態を悪化させるだけ。

考えろ、どうすれば……。


「同志君! 刃にむかってレイアの魔術を込めたものを撃ってきた下さい! 必中の攻撃には必中の迎撃です!」 


 ラタが俺を連れてテレポートを連続発動する。

重力に従って降ってきたソレはさっきまで俺達がいた場所に正確に落ちて、そこから浮かび上がった。

心に少しだけあったレイアの魔術じゃないって思い込みたい思いは、粉々に砕け散っていく。


「流石レイア様が頭脳を補う存在だって認めるだけあるな、変態魔術師!」


「うるさいです! 早くしてください!」


 これ程の数の目標を破壊するのか。

カタストロフじゃ全てを消すことはできないし、そもそもレイアの魔術に狙った全てに当たるように弾が移動してくれる効果があるかどうかわからない。

もちろん可能かもしれないが、一つでも残しちゃダメなこの状況で実験をする程バカじゃない。

親父ならどうした?

きっと、巨大なカタストロフを使って全ての刃を消していた。


 なら俺は?

俺はどうする?

親父のようになれないこの現実で、ラタと俺を守るためには……。


「しつこいですね! 私は追う恋のほうが好きなんですけど!」


 カタストロフを連発するか?

いや、そもそもレイアの魔術には使える回数の上限があるんだし、そもそも俺の魔力が足りないだろう。


「金剛魔術は……意味ないんですよね! さっさとして下さいよこの変態ストーカーロリコンキモキモ独占欲丸出しの猿!」


「っせえ! 今考えてんだよ!」


「何を悩んでるんですか!? 初夜をどんな風に過ごすかとか、やっぱり眠ってるロスさんを襲っておけば子孫を残せたとか、そんな考えだったら許しませんよ!」


「お前の頭の中はどうなってんだよ! 違う、全部を狙うには魔力が足りないんだ、カタストロフで空間ごと削り取るにしても全部に当てられるとは思えない! そもそもカタストロフは目標に当たった瞬間に、当たった場所と共に消えちまうんだよ!」


 隣のラタは煩かったが、その顔には疲労の色が見て取れた。

刃の場所を確認し、次に移動した場所を割り出して、正確に移動する。

さらに空を飛ぶ魔術を併用し、死の恐怖にも襲われている。

極限の状態とも言えるこの場面で、それらを完璧にこなすなんてことは普通なら出来ることじゃない。

だから、この悪口の連打も我慢してやろう。


「あの、一つ提案があるんですけど」


「提案?」


「貴方のそのカタなんとかいう射撃はそもそも魔術なんですか? 実体のある弾丸に魔術を施したものですか?」


「弾事態が魔力で出来てるからその二択なら前者だ、だがなんで?」


「だったら、私に任せて下さい!」


「任せるって……」


「今は私を信じて、レイアの魔術を使って迎撃してください!」


 彼女はくるくると杖を回してから、これまで以上の高さにテレポートして、詠唱を始めた。


「……世界の理を流転する、私、ラタ·ルリラが流転する。旋回せぬ物を曲げ戻し、屈折せぬ物を回し戻す」


 何をしようとしているかはわからない。

けれど、コイツは信用できる。

表面上しか俺を理解しようとしなかった他の奴らとは違い、俺を理解して罵倒している。

バルトロスの息子だと知っていても、特別扱いもせず、無能や役立たずと批判する。

親父の影に対する遠慮の文字や、英雄の息子という飾りを無視して俺を見て、信じてくれているんだ。

 

「縛る運命すら流転する。闇は輝き、光は影に、私の運命が今ここに、新たな世界を刻み混む」


 なら俺も成功させるしかない。

小さくて、一度の射撃で無数の弾になるそんな射撃を……。


『ルイサならできるよ!』


 ありがとな、ロス。

脳内で浮かんだ彼女の笑顔に感謝をして、両手に金と銀の銃を握って、頭に浮かんだ新しい射撃をイメージする。

名前はそうだな……。


「レイア·ロス·カタストロフ!」


 両手の銃から凄まじい数の弾丸が飛んでいく。

しかしまとまりはなく、近距離で当てれば凄まじい破壊力を持つであろう。

だが、レイアの魔術と併用すれば話しは別。

当てる事は考えなくてもいい、けれどやはり刃よりも数が少ない。

 

「瀕死の運命をいまここに! 世界を刻む大魔術……アメア!」


 俺の作り出した青く光る小さなカタストロフが、紫色に変化した。

当たったら消えてしまうはずの紫色は、刃に当たってそれを空間ごと削り取った後もそこにあった。

一つ、また一つと刃を破壊して回るその光は、レイアの魔術で強化されているというだけでは説明がつかない。

カタストロフの術式から別物になっているような気さえしてくる。


「お前、何をしたんだ?」


「何って、貴方の魔術に私の魔術を合わせただけです」


「あの数の弾丸全てに……か?」


「じゃなきゃ意味がないですからね、ちゃんと狙ってアメアの魔術を混ぜましたよ! あと言っておきますがカタなんとかの術式に無駄が多すぎます、それに自分の魔術に恋人の……いえ、まだ恋人ですらない他人の名前を使うのは流石にキモすぎます」


 薄い胸を張っている彼女は、やはり信頼に足りる最高の魔術師だ。


「アメアの魔術か、多分だけどソレって神の魔術だろ?」


「第四大陸アメア=ローフィンの神の魔術です。アメアの魔術には付与した魔術の"こうあるべき"と定められた運命を書き換える力がありますから、同志の魔術の当たったら消えるってところを消えない運命に書き換えておきましたよ」


 紫の光が刃を破壊していく。

その光景は、先ほど見ていた殺意の込められた刃の光とは違い、とても幻想的に輝く星のようになっていた。


「隣にいたのがロスだったら、ここで結婚を申し込んでたんだけどな、こんなロマンチックな光景を背に言えば絶対成功しただろうに」


「付き合うって仮定をすっ飛ばしてバカなこと言ってる暇があったら、その緩みきった顔と考えを元に戻して下さい。ほら、まだアレが残ってますよ」


 ラタの杖の指す先の魔王はただ俺達を睨んでいた。

いや、まぁ瞳を見ることは出来ないからただ赤色の光がそう見ていると感じただけだけど……とにかく睨んでいた。


「もう一度さっきの魔術を使えますか? 威力的に近距離で撃ち込めばかなりのダメージになるはずです」


「そんなことしなくても、ここからさっきのやり方でやればいいだろ」


 銃を構えてもう一度……。


「無理です」


「何で?」


「……使えません」


 使えない?

え、まさかコイツ……まさか!


「アメアの魔術を連発はできないんです!」


「え、えええええ!?」


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