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俺が惚れた少女は、何故か親父の面影を抱いている  作者: ケイト
一幕目 君が親父の愛人か、腹違いの妹だとしても

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接ぎ木を切り落とす正義の味方



 俺達は博士の案内の下、道なき道を進んでいった。

暗くなる空の下で、湖近くの森の中を進むのだから、予想をはるかに越える暗さに襲われるも、光源になるようなアイテムや魔術は使用するなと母さんに言われて、足元が見えにくい状態のまま。

俺達は、白銀を見た。


 ソイツは、そんな状況でもハッキリと見えたんだ。


 赤色のマントをなびかせて、全身が輝く鎧で覆われている。

左手には煌びやかな剣を持ち、右手には円形の白色の盾を持つ。

剣や盾、鎧には宝石が散りばめられているが、そこに成金のような下品さはまるで無い。

洗練された動き。

そして装備に負けない王者の風格。

白色の兜の隙間から、浮かび上がるように赤色の瞳が覗いていて、そこからはまるで……"正義を背負う英雄"のような力強さと、信念が感じとれる。


「俺の、いや俺達の世界を守るため、お前達異物は排除する! この腐った"接ぎ木"を切り落とすまで、この俺は止まらない!」


 その声はどこまでも響くようで、風に揺れる木々が鳴らす自然の音楽に一切負けることなく、一言一句が耳に届く。

性別は……声的に男性だろう、悪魔に性別があるかは知らないけど。

しかしまぁ、これが魔王、親父の勝てなかった悪魔の王か。

まるでこっちが"悪"かのような……。


「壊滅と崩壊がその身を喰らう(デュアル·カタストロフ)!」


 白と黒の銃から、それぞれの銃と同じ色の弾丸が放たれる。

ロスだ、彼女が先手を打ったんだ。


「レイアを返してもらうぜ、クソ野郎!」


 光の後に、カタストロフが空間を削り取った後を世界が修復するように音が遅れてやってくる。

俺の毒を混ぜこんだ射撃とは違うが、普通のカタストロフでもない。


「ほう、新手か? やれやれ……」


 俺がロスに気を取られているうちに、母さんは姿を消している。

ライフさんも両手に白色の手袋をして、魔王の影を睨み付けている。

対する魔王は、ロスのあの射撃を盾で受け止めてから、俺達を睨んだ。


「この厄介な射撃……貴様、あの男の……」


「……あれだ、君達の神様はあそこ!」


 怯み、足が止まりそうになるも博士に肩を叩かれて、近くの木にもたれ掛かるように座るレイア様を見つけた。

博士がレイア様に触れたのを確認してから、迷わずテレポートを起動する。

二人を一つの塊として、俺自身も認識して……飛ばす!


「頼んだぞ、ルイサ!」


 視界からロスが消える瞬間、そう言っているのが見えた。



 術式は完璧だ。

魔力も正常に消費されている。

視界の端が歪み、一瞬で"テココス湖"の畔から街の避難所へと転移する――はずだった。


 だが、数回テレポートした所から世界は変わらない。

俺の後ろには博士が、博士の腕には意識を失ったレイア様が、そのままの形でそこにいた。

まるで空間そのものが、目の前に立つ"化け物"の発する殺意によって、ガチガチに凝固しているかのようだ。 

これまでに経験したことのない、異常な事態。


『実戦じゃ、予想外なんて予想内だ』


 落ち着け、ライフさんからそう聞いていただろ、俺。


「うぬら、その男を置いていけ」


 俺の前に立ちはだかるのは、血のように不気味な赤色の鎧を着た悪魔だった。

ヤツは腰から"銀"の剣を、ゆっくりと、しかし微塵の隙もなく引き抜いた。

周囲の空気を圧し潰すほどの苛烈なプレッシャーを放ちながらも、剣を構えるその姿はどこか貴族のように優雅で……だからこそ、この殺伐とした状況には不釣り合いで、心底不気味だった。


「博士……ッ! アイツは、一体何なんですか!?」


 動揺を押し殺し、絞り出すように背後の博士に問う。


「えっと、た、確か、上級悪魔の"赤鬼"。……"白銀"が呼び出す、特殊な悪魔の一体だよ」


 博士の声も、恐怖で震えている。

俺は視線を一瞬、博士の腕の中にあるレイア様に向けた。

片目に黒と金の装飾が入った眼帯を着け、眼帯と同じ柄の服はボロボロに裂けている。瀕死の状態にあって、意識を失っていてもなお、両手からは杖とナイフが離れていない。

その武器は、明らかにこの世界の理で作られた物ではなかった。

俺の持つ銃に近いアイテムなのかもしれない。


 こんなに近くでレイア様を見るのは初めてだが、この第一大陸の"神"に、今頼ることはできない。

博士はレイア様の治療中で両手が塞がっているし、俺の"テレポート"は封じられている。

逃げることは叶わず、コイツから隠れるのも難しい。

そうなりゃ、もうやるしかない。


「倒すしか……ないよな」


「うん……! シアコトル達三人が"白銀の影"を押さえているうちに……彼らが生きているうちにコイツを倒して、"テレポート"で戻らないといけないから……。私にできる限りのサポートはする!」


「ああ、わかった!」


 母さん達が、今この瞬間も戦っている。

あの"白銀"が姿を現した瞬間の、ロスの表情を俺は一生忘れないだろう。

これまで対峙したどの悪魔とも違う、数段上の、世界を滅ぼすほどの純粋な殺意がそこにはあった。


 レイア様にトドメを差そうとする"白銀"に立ち向かったロスのため……親父の覚悟を宿した彼女を守るためにも。

俺はコイツを、一刻も早く屠らなければならない!

俺は親父の遺した二挺の銃、"銀色"と"金色"を抜き放ち、"カタストロフ"の魔力を込めた。


「くらえ!」


 カタストロフに猛毒を混ぜこむ。

親父の破壊力に、母さんの猛毒だ。

仮に外れたとしても、空間にばらまく毒からは逃れられないだろう。

親父は外さないだろうが、カスっただけで傷口から毒が素早く回るこれなら……!


「いざ、勝負」


『プロテクション!』


 プロテクション、タリラさんの防御魔術が発動した。

バカな、魔力でも目でも追っていたのに……見えないレベルの速さで、俺が射撃するよりも早く動いているってのかよ。

腕に叩き込まれた剣撃は俺の左腕を切断しようと、確実に振り下ろされていて、この防御魔術がなければ……腕を失っていたに違いない。


「固いな」


「近寄るなッ!」


 真横にいる赤鬼に蹴りをいれるが、金属でできた鎧は予想よりも固くて、魔力で足を被っているにも関わらず、足に痛みが走る。

一応母さん仕込みの蹴りで、普通の人間相手なら一撃で無力化できるはずだし、防具の上からでもダメージは避けられないはず。

だけど、コイツにはそれすらない。

本物の化物かよ!

やっぱり射撃だ、撃って殺すしかない!


「魔術:大地はお前から離れない(フレンズ·オブ·ガイア)! バックブースト!」


 相手を地面に拘束する魔術と共に後方に飛ぶ。

そして、カタストロフを構築して毒を混ぜていく。

赤鬼の足は足首まで地面に飲み込まれ、動きようがないし、躱せるはずがない。

この拘束魔術は俺が使える魔術の中でもかなり高位にある血反吐を吐きながら学んだものだぞ、逃がさねぇよ。

持てる力を全て注ぎ、最高威力のカタストロフを撃ち込んでやる!


「拘束魔術か……我も得意だぞ、魔術:アルター」


 悪魔が魔術を使うだと!?

しかも知らない魔術……足元かッ!

魔術は基本的に魔術として出力されるまでは目視で確認ができない。

だが、術式に組み込まれた魔力の動きを感じとることはできる。

もちろん、魔力が動いていることがわかったところで、その魔術式が何を命令する物なのかわからないと防げないんだが……実態を持つようになる一瞬だけは、目で確認ができる。


「全身を覆う(トラゾリン)!」


 ヤツの魔力は細長く、俺の足元に広がっていた。

そして、実体化する一瞬も確認できた。

多分、縄か何かを呼び出して人を縛る魔術だろう。

そう思った俺は全身に薄い猛毒の壁を張った。

剣や銃には無力だが、魔力で作られたアイテムや人体に有害な猛毒。

母さんの常軌を逸した教育の賜物で、この毒が効かない俺にしかできない、本来は武器や盾に付与するはずの確実に意表を突ける魔術!


「毒の鎧だと? うぬ、死ぬ気か?」


「俺には毒が効かねぇんだよ、死ぬのはお前だけだ!」

 

 俺は両手に握る銃の重いトリガーを、赤鬼に狙いを定めて引いていた。


「カタストロフ!」


 両手に握る銃から、青色の弾丸が二発飛んでいった。

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