018話 異常だって
説明回
また展開が遅くなってしまう…
夕食をとった後、部屋に行きクリスに詰問された。
「そう言えば、あれ以来ずっと放置してたけど、あんたのステータスはどうなってるのよ。」
うまくはぐらかそうとしたが、全く諦める気配はない。
「いやぁ…普通だよ、普通。」
「やってることが異常だから聞いてるんでしょ!」
この世界でのステータスというものは、基本的に自己申告制だ。
中にはステータスを見るスキル、なんてものもあるらしいが、使い手はひじょうに少ない。
そもそも、スキルというのは個人の素質などによるものらしく、『生命刀』や『気配察知』などの訓練をすれば身につくと思える物以外、基本的にユニークスキルという扱いになるそうだ。
もちろん、素質があれば使えるわけでもなく、訓練することによって使えるものばかりだ。
少なくとも俺の初期のスキル『原理理解』『成長促進』はユニークに近いだろう。
『熱操作』は…多分他にも使える人がたくさんいると思う、ぶっちゃけ雑魚スキルだし。
「…どうしても言わなきゃダメ?」
「当たり前でしょ!一緒に戦ってるんだから仲間の実力くらい把握しとかないと!」
ごもっとも。
ここで適当な数値を言うのも、信義に反するかなぁ。
いや、『成長促進』のスキルを隠しといてなんだが。
「わかった…誰にも言わないでくれよ…」
俺は観念してステータスを伝えた。
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シン
駆け出し冒険者
HP :3000
MP :1000
力 :200
体力:150
敏捷:200
魔力:500
スキル
生命刀、熱操作(40℃~0℃)、剛剣
高速連続剣
→連続剣より更に高速に相手を切り刻む。ダウンタイムなし。
原理究明
→受けた攻撃の原理を素早く理解することができる。自分が受けていない攻撃でも、見ただけで理解できることがある。
成長促進(+)※クリスには秘密
→能力値やスキルが結構成長しやすい。
気配遮断(+)
→自分の気配が更に周りに気づかれにくくなる。
気配察知(+)
→自分の周りの気配を探ることができる。情報量は少なめ。
武具メンテナンス(+)
→武具のメンテナンスができる。修理は不可。
植物鑑定中級
→見た植物の名前と有毒・無毒の鑑定ができる。
飛翔剣
→斬撃を飛ばすことができる。
飛翔剣・五月雨
→五月雨のように斬撃を飛ばすことができる。
心魔変換
→MPと魔力を犠牲にし、犠牲にした分をステータスに上乗せできる。上乗せする分に応じて精神・肉体への負担は大きくなる。全てを上乗せすると間違いなく肉体が崩壊する。
魔法
ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアーストーム
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「…なにそのでたらめな数値。」
俺がステータスを伝えてから、クリスはずっと額を抑えてうつむいている。
少なくとも俺が嘘を言っているとは思っていないのだろう。
だが、嘘でなければこの数値を認めることになる。
それはそれで信じることができない。
でも嘘は言ってないはず…という葛藤が垣間見える。
「ギルドの人達の気持ちがわかったわ…」
そんなところで共感しないでください。
実は俺自身も驚いている。
きっかけはやはりバロックとの死闘だろう。
あの時、俺は『連続剣』を使った。
だが、本来五回連続で斬りつけるはずが、それを優に超える回数でも切り刻み、あまつさえダウンタイムが感じられなかったのだ。
確実に『連続剣』のスキルを叫んだ、だが実際に発動されたのは『高速連続剣』。
つまりは、あの時にスキルが成長(するのか?)したとしか考えられない。
そして戦いが終わってクリスと下山をしている時、実はこっそりステータスを確認してみたら、『成長促進』にプラスがついていたのだ。
更に他のスキル、ステータスも軒並み上昇していた。
MPや魔力の伸びが異常なのは、『心魔変換』を使ったせいだろう。
全乗せしたら死ぬはずだったが、クリスのエリクサーのおかげでギリギリ生き延びれた。
死にかけて強くなった、というのを身をもって体験したのだ。
俺をこの世界に導いた案内人もこうなるとは思ってなかったろう。
だけどきっと勇者はこれよりずっと強いんだろうなぁ…
「あたしもよく知らないけど、そのステータスはかなり高いはずよ。少なくとも、Bランク冒険者くらい。」
でしょうね。
ギルドの人の話を信じるなら、俺はBランクパーティーが担当するような魔物を一撃で屠ったんだから。
「…さっきの狩りでのあんたの強さ、それは理解できた、でもね!」
クリスがさらに詰め寄る。
「そもそも何でそんなにステータスが高いのよ!!しかもスキルの数!!十ある人でもかなり多い方なのに、何なのそれ!?」
そうなのか?
「いやぁ…やっぱ『ウバワレ』になる前の俺が変に強かったとしか…」
都合が悪くなれば『ウバワレ』を使わせてもらう。
「そんなに強かったらあんたを知ってる人の一人や二人はいるでしょう!」
ですよねぇ、言い返せない。
「正直マジで何も思い出せないから、なんとも言いようがなくて…」
「はぁ…あんた、実は『勇者』だとか言うんじゃないでしょうね?」
……!!
勇者ってのはやはり共通認識であるのか!
勇者じゃないけど同じ『転生者』ってのは合っている。
どうはぐらかしたもんか…
「…勇者か…勇者だったらもっと強かったのかな…」
そんな何気ない呟きが口から漏れてしまった。
勇者の強さ、それがあればあの場で黒ローブの奴を倒して村の人達を…そう考えてしまったのだ。
「あ…ごめん、そういうつもりじゃなくて…その、冗談で言っただけだから…」
短い付き合いだけど、クリスは俺の考えを正確に読み取ってくれたようだった。
あまり褒められた形ではないが、勇者疑惑はなくなったらしい。
「いや、こっちこそ暗くなってごめん…」
いずれ、クリスにはすべてを話そう、こっちの世界に来てから世話になりっぱなしだし。
そもそも転生者ってのを隠してるのだって、特に意味があるのかと聞かれれば、無いと答えるような事なんだ。
「そ、そういえば、クリスのステータスは?」
重い空気を振り払うかのように、俺はクリスに切り出した。
「え?あ、う、うん、こんな感じ。」
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クリスティーナ
駆け出し冒険者
HP :1000
MP :100
力 :120
体力:110
敏捷:150
魔力:10
スキル
生命刀、連続剣、気配遮断、剛剣
魔法
ファイアーボール、ファイアーアロー
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そういうクリスもステータスがかなり上がっていた。
魔法系には適正がないんだろう、上がりが悪い。
でもスキルは『気配遮断』と『剛剣』を新しく覚えたみたいで、普通に考えたらかなりの成長だ。
俺の異常な成長を見た後だと見劣りしてしまうだけで、クリスも所謂天才の部類だろう。
剣も新調したし、実力としては数値以上だと思う。
「はぁ…あたしもかなり強くなってるから、自慢しようと思ってたのにさ…ガルーダでいいとこみせようかと思ったら、全部持ってかれるんだもん…」
すみませんです、はい。
それにしても、ちょっと考えたら俺達は二人でもかなりレベルの高いパーティーじゃないか?
これかなり上位まで、と考えてふと思った。
「…そう言えば、パーティーってどうやって組むんだ?」
「え?そりゃぁ………どうやるんだろう。」
ギルドのお姉さんの説明を思い出しても、特にパーティー結成についての件はなかったはず。
「明日聞いてみようか、どうせ呼び出されるだろうし。」
「そうね。別に急ぐ必要もないし。」
パーティーか…
なんていうか、元の世界で見た冒険者のパーティーって言うと、信頼とか強固な絆で結ばれてて、"ここは俺に任せて先に行け!"的なセリフも言ったりする、まさに憧れだったんだよなぁ。
後々はメンバーも増やして、みんなで協力して強くなって…
一緒に村の人達を取り戻すんだ。
そんなことを考えながら、俺達は眠りについた。
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