017話 初クエスト
今回はちょっと長め(当社比)
森へと続く街道をただひたすらに歩き続ける。
魔物も人間の作った道のそばにはそれほど近寄らないのだろう、ほとんど魔物も襲っては来なかった。
「…使い心地を試したいのに…」
クリスが不満気につぶやく。
「もうすぐ森だから、すぐに試せるよ。」
少し早足で移動したので、もう森は目の前だ。
森はそこまで広いものには見えなかったが、手付かずで大きな木が何本も生えている。
「なんか違和感を感じるな。」
入った瞬間、村の近くの森とは違う感じを受けた。
空気が違うというか、森の鬱蒼とした感じがそれほどないというか…
うまくは言えないが、"軽い"感じがする。
「確かにそうね、村の近くの森とそれほど変わらないはずなのに…」
生い茂っている植物も、特に変わっている感じがない。
住み着いている魔物が違うせいか?
暴れうさぎなんて、聞いたことも見たこともなかったからな。
もしくは、頻繁に冒険者が森に入っているから、半分くらい人間の空気みたいなものが滞留しているのか?
まぁ別にいいか。
「とにかく、暴れうさぎを探そうか。」
そう言って『気配遮断』と『気配察知』のスキルを展開する。
何匹か生き物の気配を察知する。
気配の大きさから言って、ウルフドッグより二回りくらい小さいか?
多分こいつが暴れうさぎなんだろう。
「右奥、歩いて二十歩くらい進んだ所に何か生き物がいる。人間じゃないから気にしないでやってくれ。」
「オッケー」
小声でやり取りし、クリスが獲物の方へ向かう。
数歩進むとクリスにも確認できたらしく、こちらに目で合図をしてくる。
それに対し頷き、クリスが剣を構えた状態から飛びかかった。
------ドガッ!!!
地面を叩きつけたような音がした。
え?なんの音?
瞬間、クリスの前方に土が舞った。
「……」
クリスは微動だにしない。
「おーい、なにがあったん…!?」
俺が近寄ると、暴れうさぎが(地面ごと)真っ二つになっていた。
しかもその周りの地面にも半径五十センチほどのクレーターができている。
「……力加減間違えちゃった。」
いやいやいや。
地面が抉れてますけど?
それ剣だよね?槌じゃないよね?
どうやら黒鉄の剣は切れ味もさることながら、頑丈だからか単純な鈍器としての威力も高いらしい。
「気をつけてくれ、今の音で感知できる範囲の魔物が一斉にどっかに行っちゃったよ…」
おニューの剣でクリスのテンションも高かったんだろう、仕方ない。
その後は同じ失敗は繰り返さずに、獲物を狩っていった。
いや、『気配察知』はマジ便利。
今までは村の分の食料を適当に狩るくらいだから気にしなかったが、こういうクエスト系ではその力を存分に発揮できる。
暴れうさぎの群れもすぐに発見できたし、一時間ほどで依頼数の暴れうさぎを狩ることができた。
「楽勝ね!」
俺も数匹倒したが、やはり剣に慣れる意味もあって、クリスが存分に剣を振るった。
狩りの結果も剣の状態にも満足したんだろう、いい仕事した!って顔をしている。
「そうだな、じゃ街に戻る…ん?何だこの大きな気配?」
察知範囲のギリギリに、ビッグボア並の気配がチラチラしていた。
「しかもこの感じ、空を飛んでる…"怪鳥"か?」
ギルドで見せてもらった、要注意の魔物一覧を思い出す。
魔物名:ガルーダ
---通称、"怪鳥"
ギルドで冊子を見せてもらった時はRPGでよく見るガルーダと同じ感じの絵だった。
ブルムの街周辺では、一番気をつけなければいけない相手らしい。
強さもそうだが、何より空を飛んでいるため魔法使いがいないパーティーでは、まず間違いなく勝てない、とのことだ。
「……ちょっと見てみるか。」
俺もクリスも初級程度の魔法は使える、最悪逃げ出すくらいはできるはずだ。
この辺の魔物の強さを測る意味でも、一番強いやつを見ておきたい。
決して好奇心に負けたわけではない。
ということをクリスに伝える。
「まぁあたしたちならやられはしないだろうし、いいんじゃない?」
クリスの機嫌がいいから、あっさり許可してもらえた。
許可も得たことだし、俺達は気配のする方に進んでいった。
気配は時たま地面に降りる感じを出しつつも、遠くに行く素振りは見せない。
このまま行けばもうすぐ姿が見えるはずだ。
そう思った時、前方に少し開けた場所が見えた。
そこにいたのは、冊子で見たのと同じか、それ以上の大きさのまさしく怪鳥だった。
広げれば片方五メートルはあろう大きな翼、大きく禍々しい嘴、人間くらい簡単に掴める足と、間違いなくそこらの剣より鋭いであろう爪。
「…獲物を食べているのね。」
その足と爪と嘴を器用に使い、獲物をついばんでいる。
あれは…鹿のような生き物だ、それが数匹骨ごと食われていっている。
嘴に歯でも生えてるのか?それとも丸飲みなのか?
その様子を少し見ていたが、怪鳥の動きが急に固まり、瞬時にこちらに顔を向けた。
「…っ!やばい!気づかれた!!」
やはりここら一帯のボスなんだろう、一筋縄ではいかない。
瞬時に戦闘態勢を取り、動きやすい広場に出て行く。
それと同時に、怪鳥がけたたましく鳴き大空へ舞い上がった。
「空を飛ばれたら攻撃手段がなくなる!今のうちに魔法を叩き込むわ!」
クリスが『ファイアーアロー』の魔法を撃ちまくっている。
だがガルーダは、魔法があたっても何一つ気にした様子はない。
やはり威力が低すぎるのか。
ていうか倒す流れになってるし…
まぁ俺は遠距離攻撃を魔法以外にも持ってるんだが、クリスは忘れてるのか?見てないのか?
「いや、大丈夫だ。『飛翔剣』!」
スキルを発動し、剣を振るう。
最初に使った時よりもうまく扱えている気がする。
これは『連続剣』を使った時にも感じたな。
斬撃はそのまま高速でガルーダに向かって飛び、難なくその首を両断した。
「……は?」
ガルーダはそのまま重力に逆らわず、血の雨を降らしながら真っ逆さまに落下してきた。
「一撃か。もうちょい強いと思ったんだけどなぁ。」
実は気配を感じた時、なんとなく強さも大したことがないと感じたのだ。
いや、今までそんなこと感じたことはなかったが。
「……………思い出した。」
お、俺が『飛翔剣』を使えることを思い出してくれたみたいだ。
「あんたが"規格外"だってことを。」
ものすごいジト目で見られた。
え?そっち?
その後、ガルーダも解体しアイテムボックスに入れ足早に街へと戻った。
その間ずっとクリスはジト目だった。
機嫌が良くなったと思ったんだが。
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「は?え?もう?いや、ちょっと待って下さい!」
街に着いた時、まだ時間も体力もあったので、その足でギルドにクエスト完了の報告をしに行った。
報告をすると、お姉さんはいやに驚いていた。
「ちょっと整理させてくださいね………はぁー……ふぅー……」
お姉さんは大きく深呼吸をした。
「えーとまず、クエストからですね。
これは今朝受注したクエストに間違いありませんね、はい、私が受付したんですもんね、間違いないですね。
次に、そのクエストがもう完了したってことですね。
いやいや、歩いて半日のとこにある森まで行って、三十匹狩ってまた戻ってくるって、相当おかしいですからね?
なにか不正しました?いいえ、それもギルドカードの履歴からしっかり今朝はなかった暴れうさぎが三十匹分増えてますね、間違いないです。」
お姉さんはここで一旦区切って、また大きく深呼吸をした。
「ここまではいいです、有り得なくはないですから。
でも、その討伐履歴に残ってるこれは何ですか?"ガルーダ"?
何言ってるんですか?この辺で一番強い魔物ですよ?つまりは『暴れうさぎを狩りに行って、ついでに倒してきちゃったよ(笑)』的なノリなんですか?え?ほんとなんなんですか?やっぱり不正ですか?
いえいえ、違いますよね。アイテムボックスから出していただいたガルーダの死体は、間違いなかったですもんね。ならホントだってことですよね。」
駄目だ、お姉さんが完全に混乱している。
一人ノリツッコミの亜種、一人ノリツッコミ説明だ。
「……嘘は何一つ。こいつの言ってることは全部本当です。」
何故かクリスが申し訳無さそうに答える。
いやいや、あなたもそれに加担した一人ですよ。
そう、俺達はギルドに戻ってすぐにクエスト完了報告をしたのだった。
その際に早すぎたせいか、詳しく詳細にと言われたので、洗いざらい全てを報告した。
もちろんガルーダを倒したことも含め。
最初はお姉さんも「そういう冒険者を目指してくださいね」と微笑んでたのだが、信じてもらえず俺もムキになってしまい「ほら、これが証拠」とアイテムボックスから採れたて新鮮なガルーダの死体をギルド内に顕在させてしまったのだ。
もちろんその後は阿鼻叫喚。
後からギルドカード見せれば信じてもらえたんじゃないか?と思ったが後の祭りだった。
そして今、尋問に近い形で別室にて詰め寄られている。
何故かブルムの街のギルドのエライさんも同席している。
「………ギルドカードを不正に改竄した痕跡もない。これは間違いなく君たちの功績なんだね。」
エライさん、名前はローレンスさんといったか、が口を開いた。
壮年の渋い感じの人だ。
一応ここギルドのギルド長(一番偉い人)をしているらしい。
ならこんなとこにいていいのか?ガイレン山脈に行かなくても?と言ったのだが、元冒険者とかではないので行っても足手まといなんだそうだ。
「いや、まさかEランク、しかも昨日冒険者に成りたてのホントの新人達が、ガルーダを倒すとは…しかも片手間で。」
「倒したのはこいつ。」
クリスが俺を指差す。
「まぁ、倒せるとは思ってなかったんですが。」
でも一撃ってのは弱すぎだろうよ。
「あれはね、空を飛ぶから危険度は結構高い。Cランクのパーティー数個、もしくはBランクパーティーが担当するべき魔物なんだよ。」
しかも魔法も使うらしい。
使わせる前に倒してしまったから知らなかった。
「ビッグボアの討伐履歴といい、今回の功績といい、ちょっと審議しないといけないことがたくさんあるね。」
ローレンスさんは困った顔をしていた。
取り敢えず、今日は遅いので帰ってもいいとのことだ。
後にまた来てもらう必要があるから、と連絡先を聞かれたので泊まっている"凪の宿"を教えて、宿に戻ることにした。
「なんであんたあんなに強いのよ。」
「いや、ビッグボアなら初めて会った時に既にクリスも一人で狩れる様になってたじゃん。」
あの衝撃的な出会いを思い出す。
「あれは森の中で木々に隠れながら、何時間もかかって弱らせたの。今でも、あんたみたいに正面切ってぶつかって倒せる魔物じゃない。」
それでも倒せることには変わりないのでは?
実際問題、剣一本で遮蔽物も何もないところで正面から戦うなんて、現実にはほぼありえない。
そんな状況になる時点で、逃げることを考えるのが懸命だろう。
偉そうに考えるが、俺もつい一ヶ月前までは日本でただのサラリーマンやってたんだよなぁ…
「まぁまぁ、とにかく宿に戻って飯でも食べよう、腹ペコだ。」
結構長い時間ギルドで拘束されてしまった。
周りはもう真っ暗だ。
俺たちは足早に宿へと帰るのだった。
読んでいただきありがとうございます!
明日は…何時に更新できるかな…




