第六十五話 作戦会議
第六章 海底神殿
第六十五話 作戦会議
「第二部隊副隊長……?」
隊長とは打って変わって、常識を持ち合わせていて話が通じそうだ。
「あなたたちが、新しく入隊する人たちね」
「はい。俺はカイ。こっちはノースとボアです。これからお世話になります」
「うちの隊長がごめんなさいね。いつもあんな感じだから、気にしないで」
先ほどまでの怒りはどこへやら。
ティアの丁寧な対応に、カイは思わず感心してしまう。
「ご丁寧にどうも……」
「それにしても、あなたたち、海底神殿へ行きたいの?」
「あ、はい」
「何かご存知なんですか?」
ノースがさらに詳しく聞こうと口を開く。
「詳しいことは分からないわ。だけど、とても危険なところだと聞いているわ」
「そうなんですか」
「厄介かもしれないけれど、海底神殿へ行くには、あの隊長の協力が必要不可欠よ」
「そんな……」
あの男を説得?
魚に陸地を歩かせる方が、まだ簡単だ。
「一体どうすれば?」
「そうね……」
ティアは少し考え込む。
「ネイビー隊長は実力主義者だから、実力を見せつけてやることが一番ね」
「じゃあ、パトロール中に戦果を上げれば!」
「無理ね」
「へ?」
「あの隊長の目に映る範囲の敵は、瞬殺されるから。おそらく、あなたたちが実力を見せる機会はないわ」
「嘘でしょ?」
どんだけ戦闘狂なんだよ、あの猛獣は……。
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「直接、手合わせするしかないわね」
ここまでの話を聞いて、勝ち目を見出せる奴は、おそらくこの世にはいない。
「あの人、戦闘狂だから、真っ向勝負じゃなくても、戦いになれば必ず食いつくわ」
「つまり、いきなり襲いかかって一撃加えたとしてもオッケーってことですか?」
「何だろう。ただのバカに見えてきた」
「えっ」
ティアは呆れたようにカイを見る。
「まあ、私からのヒントはこんなものね。あとはあなたたちで頑張りなさい」
「ティアさんは、何でそこまでしてくれるんですか?」
カイが率直な疑問を投げかけた。
人の親切心を疑うのは、あまりよろしくない。
だが、初対面の人にここまでするだろうか?
「ただの気まぐれよ」
そう言って、ティアはそそくさと部屋へ戻ってしまった。
「ん~……何だったんでしょうか……」
「だが、おかげで次にやることが決まったな」
「ああ。あいつにギャフンと言わせるんだな」
そう言って、カイは空に向かって拳を振るう。
◇
翌日から、第二部隊としての業務が始まった。
基本的には、第三部隊の仕事とほとんど同じだった。
しかし、第三部隊との違いが一つだけある。
それは――。
隊長が、すべて片付けてしまうことだ。
海獣を発見した途端、ネイビーはもう飛び出している。
「邪魔だ」
水で二本のナイフを作り出し、海獣を瞬殺する。
隊長が愛用しているナイフの形は、何とも奇妙なものだった。
刃の形が、まるで鉤爪のようになっている。
戦闘狂の隊長らしい、殺傷能力の高い武器だ。
隊長と行動している限り、戦果を上げることはできない。
そのため、翌日からは別の班について行くことにした。
第二部隊の管轄は非常に広いため、部隊内でさらに三つの班に分かれているらしい。
こちらの班では戦いに参加できるものの、隊長が見ていない以上、あまり意味がない。
やはり、ティアの言う通りに奇襲をかけるしかないな。
そう思ってはいても、下手をすれば、あのナイフの餌食にされるかもしれない。
そう考えると、なかなか決行には踏み切れなかった。
◇
入隊から三日目の夜。
「ノース、ボア。このままだと時間がない。奇襲作戦を明日に決行したい」
テーブルで考え事をしていたカイが、勢いよく立ち上がった。
部屋でくつろいでいたノースとボアは、一瞬何事かと驚いた顔をする。
しかし、すぐに事情を察した二人はこちらへやって来て、テーブルを囲んだ。
「ああ。それがいいだろうな」
「その勢い的に、カイさんはもう作戦を考えてあるんですか?」
「ああ」
カイは二人を見渡す。
「これより――作戦会議を始める」




