第六十四話 第二部隊
第六章 海底神殿
第六十四話 第二部隊
「うわっ! 何だこれ」
辺り一面に、ゴツゴツとした塊が生えている。
「これは海底サンゴですよ」
ボアが説明する。
「は? サンゴって浅瀬に生えるものじゃねーの?」
「カイさんのいた世界では分からないですが、こちらでは海底サンゴで通ってます」
「へぇ……」
文化の違いというか、生態系の違いというか……。
何とも面白い。
「もうすぐ着くぞ!」
ノースが前方を指差す。
イグニス族の集落を出発してから、翌日。
ようやく目的地へ辿り着く。
ここまで、本当に長かった……。
地上にいた頃だって、こんなに長期間にわたる移動をしたことはない。
「せめて、電気があればなあ……」
そんなことを呟きながら進んでいると――。
海底サンゴの隙間から、煉瓦造りの巨大な建物が姿を現した。
「あれか!」
カイが声を上げる。
「造りが一緒だから分かりやすいな!」
建物は、第二拠点と同じように集落の中に位置している。
相変わらず、無理やり後から付け足しました感がすごいな……。
三人は建物の前で二輪トビウオを停める。
「出迎えはなしか……。なあ、入っていいかな?」
「いいんじゃないか?」
ノースの言葉とともに、扉を開く。
中はフロントのような造りになっている。
しかし――誰もいない。
「ずいぶんと静かだな」
室内は少し薄暗い。
「留守でしょうか?」
ボアがそう言った、そのとき。
フロントの奥にある扉が開いた。
そこから、一人の男が出てくる。
「なんだ、てめーら」
若い男だ。
どこか目つきが悪い。
そして――青い瞳をしている。
「えっと……こんにちは。今日から第二部隊に入隊させていただく、カイとノースとボアです」
「ん?」
男は三人をじろじろと見る。
「てめーらか。ホイホイ隊の間を移動している、落ち着かない隊員っていうのは」
「ははは……」
どういう噂だよ、そりゃ。
「まあいい。うちは人手不足が日常なんだ。お前らにも骨になるまで働いてもらう」
「……」
こわっ!
第三部隊のアットホームな雰囲気とは大違いだ。
「あの……」
「ああ、俺の名はネイビー。第二部隊の隊長だ」
「た、隊長⁉︎」
薄々そんな気はしていたが……。
「えっと……」
聞くんだ。
海底神殿のことを!
カイが口を開こうとした、その瞬間――。
ネイビーが鋭い目つきでこちらを見る。
「ひっ!」
思わず身を引く。
「か、かっこいい髪型ですね……」
「あん?」
「何言ってんだよ、バカ!」
ノースが小声で耳打ちする。
そして、思い切って切り出した。
「俺たち、海底神殿へ行きたいんです。ぜひ、許可をいただきたい!」
「海底神殿……だと?」
その言葉を聞いた瞬間、ネイビーの目つきが変わった。
「冗談は弱さだけにしろ」
「え?」
「てめーらみたいな雑魚が、あんなところへ行ったら五秒も経たずに死ぬだろうよ」
「んなこと、やってみないと分からないでしょうよ!」
カイが思わず叫ぶ。
隊長だろうが関係ない。
言いたい放題言いやがって!
「威勢だけはあるようだな」
ネイビーは鼻で笑う。
「だが、言葉じゃなく実力で示せよ。まあ、まずは足りない脳を補うことから始めたほうがいいな」
「あ⁉︎」
「やめろ、カイ」
ノースがカイの肩を押さえてなだめる。
「けっ!」
ネイビーはそれだけ言うと、こちらに背を向けた。
そして、そのまま奥の部屋へと戻っていく。
「ちっ、あいつ!」
「言い方はアレだったが、隊長の言う通りだ。実績を出して証明するんだ」
「ぐぬぬ……」
ラートルさんが言っていた通りの捻くれ者だな……。
「なあ、アレが本当に海衛団の二番手なのか?」
「とにかく、部屋へ行って荷物の整理をしましょう」
ボアとノースに促され、部屋へ向かおうとする。
だが――。
ここで、ふと気づいた。
「……部屋って、どこだよ⁉︎」
カイが叫ぶ。
「部屋の鍵がカウンターの上にあるわよ」
「え?」
後ろから、女の声がした。
三人が振り返る。
そこには、ピンク色の髪をした十代後半ほどの少女が立っていた。
「あの……君は?」
カイが恐る恐る尋ねる。
少女はピンク色の髪を靡かせながら答えた。
「私は、第二部隊副隊長のティアよ」




