第六十二話 フレイムエネルギー
第六章 海底神殿
第六十二話 フレイムエネルギー
「は? 海獣ってアクアエネルギーから生まれてるんだろ? なんで炎なんか纏ってるんだよ⁉︎」
目の前で炎を纏う巨大なイカを見て、カイが叫ぶ。
「カイさん、危ない!」
イカの触手の付け根から、勢いよくマグマが噴き出した。
「うわっ!」
カイは慌てて飛び退く。
「本で読んだことがあります。フレイムエネルギーの源は、火山帯の地下深くに眠る結晶だって」
「ってことは、あいつがそれに触れたっていうのかよ?」
炎を纏った触手が、四方八方から迫ってくる。
「くっ!」
カイは水面の術で触手を次々とかわし、隙を見て水流拳を叩き込む。
しかし――。
触手に触れた水は、一瞬で蒸発してしまった。
「冗談だろ?」
バシンッ!
「ぐあっ!」
触手に弾き飛ばされ、カイの体が宙を舞う。
「アッツ!」
耐火の術を宿しているにもかかわらず、熱さを感じる。
「ノース、ボア! 遠距離攻撃だ!」
「分かった!」
「了解です!」
二人が頷く。
ボアは大量の水のヤスを、ノースは水の球を次々とイカへ向けて放つ。
しかし――。
どちらもイカに触れた瞬間、水蒸気へと変わり果ててしまう。
「ちっ! 炎は水に弱いだなんて言い出したのは、どこのどいつだよ!」
カイも巨大な水の球を作り出し、イカへ向けて放つ。
ドォン!
だが、イカは何事もなかったかのように触手を振るう。
「くそ……ダメージが全然入らん」
「二人とも、下がってください!」
ボアが二人の前に立つ。
そして――。
「はあっ!」
巨大な渦潮を作り出し、イカへと叩きつけた。
ゴォォォッ!
凄まじい量の水煙が辺りへと飛散する。
「やったか……?」
水煙の中で、イカが触手を無造作に振り回して暴れている。
「まだだ!」
三人は一度、水煙の外へ避難し、態勢を立て直す。
「どうする……どうすればいい?」
カイが頭を抱える。
「……ッ!」
突然、背中に痛みが走った。
「カイくん!」
「カイ!」
「くそ……」
昨日から、やけに背中が痛む。
あのジジイ、本当に何をしたんだ?
二人は族長のいた民家を出てから、特に痛がる様子を見せていない。
俺だけ、二度目を食らったからか?
ボアの言う通り、早くこいつを片付けて神殿へ向かわないといけないのに……。
ボアは何本ものヤスを飛ばし続けている。
しかし、これではキリがない。
「……なら、直接行きます!」
同じことを考えたのか、ボアはヤスを片手にイカへ向かって突進した。
襲いかかる触手をひらりとかわし、そのまま触手へヤスを突き刺す。
そして――。
「よっ!」
地面へ深々と突き刺し、触手を固定した。
「一本封じた!」
ノースが感心したように叫ぶ。
ボアはそのまま二本目へ向かう。
「二本目!」
素早い身のこなしで触手をかわし、次々とヤスを突き刺していく。
「すごい……!」
カイとノースも援護に回る。
水をぶつけ、少しでもイカの温度を下げていく。
「七本目!」
そして――。
「八本目!」
残すは二本の触腕のみ
「これで……!」
しかし、そのとき。
「……ん?」
カイが違和感に気づく。
イカの様子がおかしい。
固定された触手を利用し、イカは無理やり体を持ち上げる。
そして――。
ドゴォォォッ!
触手の付け根から、大量のマグマを噴射した。
「ヤバい!」
三人は迫り来るマグマから逃げながら、必死に次の作戦を考える。
どうする?
触手を封じても攻撃される。
その瞬間――。
「ぐっ!」
再び、背中に痛みが走った。
「くっ……!」
カイはその場に崩れ落ちる。
その隙を逃さず、イカが再びカイへ向かってマグマを噴射した。
「カイ!」
ノースが飛びつき、カイを助けようとする。
「大丈夫か? カイ!」
「ああ……悪い」
ほんとに何なんだ、この背中の痛みは!
まるで……。
この痛み――前にも感じたことがある。
ふと、デニズの言葉が脳裏をよぎった。
もしかしたら……。
「カイ! また来るぞ!」
ノースの叫び声で我に返る。
二人の目の前には、再び大量のマグマが迫っていた。
「ノース!」
カイはノースを突き飛ばす。
「なっ――!」
そのまま、カイはマグマを正面から受けた。
「カイ!」
「カイくん!」
ドロドロとしたマグマが、カイの姿を覆い尽くしていく。
「そんな……」
ノースとボアは絶句する。
しかし――。
「……?」
マグマの中で、何かが動いた。
「⁉︎」
マグマだまりから、手が伸びる。
そして、少しずつその姿が現れていく。
やがて――。
「……あぶねー」
マグマの中から、カイが姿を現した。
多少の火傷は負っているものの、間違いなくカイ本人だ。
「あぶねー。背中の痛みで動けなくて避けられなかったから、どうなることかと思ったが……」
「どうやら、思った通りだったみたいだな」
ノースが呟く。
カイは自分の手を見つめる。
その手には――炎が揺らめいていた。
「……これなら」
カイはニヤリと笑う。
「イカ焼きにしてやるよ」
そう言って、カイは拳に炎を纏わせた。




