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帰る場所は海の底  作者: cat-run
第六章 海底神殿

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第五十九話 道のり

 第六章 海底神殿

       第五十九話 道のり


「こ、これは!」


「なんや、どうかしたんか?」


「い、いや……」


 むやみやたらに海子のことを明かさないほうがいいだろう。


「とりあえず、海底神殿についての本を借りたい」


「おお、ええで」


 そう言って、そそくさと図書館を後にした。


 地上神ゼウスは、俺と同じ海子だった?


 ゼウスだけは、象徴するエネルギーがない。


 そこまで考えたところで、カイは足を止めた。


「地上……地球……アース……」


 もしかして……。


 ゼウスの司るものは、アースエネルギーなのか?


 もしそれが本当なのだとしたら、アースエネルギーに選ばれたという点でも、ゼウスの瞳の色にも合点がいく。


 もし、この答えが海底神殿にあるのだとしたら……。


「海底神殿へ行かなくちゃならねえ」


 カイは拳を固く握った。


     * * *


「うん、うん。思った通り! カイも使いこなせるね」


 カイの手から溢れ出る、霧状になったアクアエネルギーを見て、マールは満足そうに笑った。


「ありがとう、マール。この力は心強いよ」


「約束……。忘れないでね」


「うん」


 そう言って、カイはグッと親指を立て、手を突き出してオッケーサインを出した。


     * * *


 夜。


 アンカーの道場では、デニズとの稽古が行われていた。


 デニズは動きを一切ぶらさず、ひとつひとつの型をしっかりと作っている。


 基礎が誰よりも身についている。


 そして――めちゃくちゃ強い。


 力任せに振るわけではない。


 それでも、その木刀は正確にカイの手を打ち抜く。


「ッツ!」


 痛みに顔をしかめる。


 その直後、背後からノースの爪が迫る。


 しかし、デニズはそれにも難なく対応した。


「お前ら、動きすぎだ。もう少し動きの取捨選択をしろ。無駄なものを削り、なんでも最小限に抑えろ」


「はい!」


 デニズが強いのはいい。


 だが、ボアがしっかりとデニズとやり合っているのを見ると、少し心が抉られる。


 俺も、もっと強くならないと……。


「お前ら、もうすぐ出発なんだろ? ほら、もう一本いくぞ」


「は、はい……」


 くそ。


 戦果だけで見れば、俺は地底人にやられっぱなしだ。


 このままじゃダメだ。


 このままじゃ……。


 カイは力を振り絞って立ち上がり、再び構え直す。


「よろしくお願いします!」


     * * *


 一週間ほどアンカーに滞在した後、いよいよ俺たちは第三拠点へと旅立つ日を迎えた。


「それでは、行ってきます」


「気を付けろよ、あんちゃん!」


「カイ、くれぐれも気をつけてね」


「稽古で言ったことを忘れるな。気を引き締めるんだぞ」


 アンカーの門の前には、司書さんとマール、そしてデニズが見送りに来てくれていた。


「カイ、はい。これ、お弁当」


「ありがとう」


 マールは弁当を渡すと、小指を立ててウィンクした。


 それにカイも笑顔で応える。


「お熱いですね」


「ああ、いつものことだ」


「聞こえてるぞ」


 ボアとノースがヒソヒソと話していることは、しっかりカイにも聞こえていた。


「そういえば、王様に最近全然会ってねーや。挨拶の一つでもしておけばよかったかな?」


 その言葉にデニズが答える。


「いや、プロテウス様は現在ご多忙だ。俺から伝えておこう」


「そうか」


「おい、そろそろ出発しないと到着時間がズレる」


「ああ、そうだな。じゃあ、みんな。行ってきます」


 そう言って、カイは二輪トビウオに跨った。


 二輪トビウオは、車体がトビウオを模したバイクのような乗り物だ。


 エビぐるまよりも身軽で、スピードも出る。


 どうやら目的地までの道中には大きな山を越える必要があるらしく、エビぐるまだと迂回するしかないとのことだった。


 二輪トビウオに跨った三人は、ノースを先頭にして南へ向かって走り出す。


 マールたちは、その背中を見送った。


     * * *


 マリネアの街を抜けると、二輪トビウオのスピードが一気に上昇する。


「うわっ……!」


 想像以上に速い。


「あの、俺、原付の免許持ってないんだけど!」


 風の勢いに負けないよう、大声を張ってノースに尋ねる。


 正直、出発する前に聞くべきことだった。


「免許? 乗り物に乗るのに許可がいるのか?」


「オッケー、ありがとう!」


 ノースの反応を見る限り、この世界では問題ないらしい。


 二輪トビウオは、凄まじいスピードで海底世界を駆け抜けていく。


 マリネアを離れると、北部の地域と同じように広大な平原が広がっていた。


 遠くに集落のようなものが見える。


 しかし、それ以外には木や岩があるだけで、目立ったものは何もない。


 休憩を挟みながら、半日ほど走り続ける。


 だいぶ進んできた気がする。


「今夜はここに泊まろう」


 そう言ってノースが二輪トビウオを停めたのは、セレベスという小さな集落だった。


 宿に案内されると、カイは部屋に入るなりベッドへ倒れ込んだ。


「は〜、乗りっぱなしで疲れた〜」


「明日は山を越える。その先には火山帯が広がっている」


「火山帯?」


「ああ。そこにはイグニス族がいる」


「イグニス族?」


「女神ヘスティアを信仰する種族で、だいぶ原始的というか……」


「へ〜」


「イグニス族のほとんどが地上人で、一応、海底人と契約を結んでいるから敵ではない」


「ほ〜」


 率直に、世界は広いなと思った。


 まだまだ知らないことが多い。


「なんでも、その火山帯のどこかに炎の神殿があるらしいって噂だぞ」


 また噂か……。


 噂には、あまりいい思い出がない。


「もう今日は寝ましょう。明日も早いんですから」


 一番年下で、一番しっかりしているボアがそう言って明かりを消した。


 カイも、そのまま眠りに落ちた。


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