第五十五話 一時帰還
第六章 海底神殿
第五十五話 一時帰還
「今までお世話になりました」
第二拠点の玄関口には、一台のエビぐるまが停まっていた。
その周囲には何人もの人が集まっている。
カイ、ノース、そしてボアの見送りをしているところだった。
「なんかあったら、またいつでも頼ってくれや」
タコ郎がカイの背中を軽く叩く。
「ノースくんも気をつけておくれよ。くれぐれも無理は禁物だ」
フルードは、まだ頭に包帯を巻いているノースに釘を刺す。
「はい、わかってます」
「ボアもしっかりやるんだよ」
フルードは、今度はボアの方へ向き直った。
ボアは無言で頷き、カイとノースの方をちらりと見る。
「カイくんは一度、第三部隊に入団したんだ。いつでも頼ってくれて構わないよ。それと、くれぐれも第二部隊隊長には気をつけるんだよ。僕はあいつが嫌いだ。だけど、頼りにはなるよ。僕は嫌いだけど」
「はい、わかりました。ありがとうございます、ラートルさん」
「どうかお気をつけて……。武運を祈ります」
タラバも丁寧に一礼する。
それを見て、三人も頭をちょこんと下げた。
「それじゃあ、行こうか。アンカーへ!」
こうして、アンカーへ向けてエビぐるまが走り出した。
草原を再び駆け抜けるエビぐるま。
その道中、ノースが車内で切り出した。
「第二拠点からアンカーまでは一日で着くが、アンカーから第三拠点まではかなり離れている。おそらく三日はかかる」
「三日も⁉︎」
思わずカイがすっとんきょうな声を上げる。
「ああ。そして第三拠点で第二部隊に入隊。そして――」
「隊長と共に海底神殿へ潜入、だね」
ボアがノースの言葉を引き継ぐ。
ノースとカイが頷いた。
「アンカーの図書館で、なるべく海底神殿の情報を集めよう」
「ああ」
早朝に出発した甲斐もあり、月が出て少し経った頃には、マリネア入り口の門が見えていた。
門を抜けた先には、懐かしいマリネアの街並みが広がっている。
「やっと着いた〜」
そのまま街の中を進み続け、ようやくアンカーが見えてきた。
その城門の前には、一つの人影があった。
暗くてよく見えなかったが、月明かりが辺りを照らし、その姿がはっきりと見えてくる。
「デニズさん!」
カイが車内の窓から顔を出し、その名前を呼ぶ。
エビぐるまを降り、御者に礼を言った後、カイたちはデニズとの再会を喜んだ。
「わざわざお出迎えありがとうございます」
「車輪の音が聞こえたもんでな。長旅ご苦労様。よく無事で帰ってきた。とりあえず中に入ろう」
そう言って、デニズは一同をアンカーの中へ招き入れた。
ノースの怪我はまだ完治していない。
そのため、一同は治療所で話をすることになった。
「久しぶりですね」
そう言って出迎えたのは、白衣を着た女性――ネリッサだった。
「どうも、ご無沙汰してます」
ネリッサの言葉に、カイは軽く頭を下げる。
前に会った時よりも、穏やかな雰囲気になっているように感じた。
「ノースさんは軽く処置をするので、こちらへ」
そう言って、ノースはネリッサに連れられ、奥の部屋へ向かっていった。
それを見届けてから、デニズが尋ねる。
「君は確か、第一部隊副隊長のボア君だね」
「はい」
「向こうはしばらく復旧にあたると聞いている。なるほど。それでフルードが君をよこしたのか」
「はい。カイくんとノースくんを手助けするようにと言われて……」
その言葉に頷き、デニズはカイの方へ向き直る。
「カイ、ポートのことは残念だったが……その顔は、何かまだ考えがあるんだな?」
「はい。俺たちは、しばらくしたら海底神殿へ向かいます。デニズさんも何か知っていることがあれば教えてください」
「海底神殿か……。あまりおすすめはできないな」
「……! なんでですか?」
「お前たちの報告を受け取ったすぐ後に、第三部隊からも報告を受けてな……。どうやら海底神殿付近に、大量の海獣が突如として現れたらしい」
「そんな……」
「お前らの話と合わせて考えるなら、おそらく敵の策略なのだろう。だとしたら、近づくのは危険だ」
地底軍側も、本格的に動き出してきたのか。
確かに危険だ……。
「デニズさん」
「?」
「タラッサは明らかに俺を狙っていました。なんでなんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、辺りに沈黙が走った。
やがて、デニズが口を開く。
「……わかった。簡単にだが、教えてやる」
デニズはボアの方を見る。
「ボア君、悪いが、しばらく退室していてくれないか?」
「……わかりました」
渋々了承し、ボアが部屋を後にする。
扉が閉まる。
室内に残ったのは、カイとデニズだけだった。
「今から話すのは、単純だが大事なことだ」
そう言って、デニズが話し始めた。




