第五十二話 永久機関
第五章 手記の記憶
第五十二話 永久機関
辺りには水煙が立ち込めている。
テラの腕に、落下の反動を利用して突っ込んできたアスターン。
対するテラは、土で強化した腕で守りを固めている。
テラに食い込んだアスターンの指に、アクアエネルギーがこもる。
「どけ!」
先程までの余裕っぷりとは一変し、テラが全力でアスターンを引き剥がす。
ものすごい力で、アスターンは数メートル吹き飛ばされる。
――こいつ……。アクアエネルギーを拒絶しているのか……? チャンスだ!
そう思い立ったアスターンは、アクアエネルギーを拳に纏わせ、テラに突進する。
「この借りは必ず返してやる」
そう言うと、テラは砂を辺り一面に勢いよくばら撒き、その姿を消した。
「くそ、逃げられたか……」
辺りは半壊状態で、あちこちに泥や砂が撒き散らされている。
そんな様子を眺めながら、アスターンはその場にドカッと膝をつく。
「少し無理をし過ぎてしまったな……」
周囲の建物は崩壊し、地割れが多発している。
その中には、タコ郎とブラインがうずくまっていた。
「まったく、手間をかけさせる」
そう言ってクラックは、手中に土の剣を再び作り出す。
一歩ずつ、タコ郎たちの元へ歩み寄る。
その時、ブラインが立ち上がった。
足は震えていて、鼻血が出ている。
隊服もボロボロで、かろうじて徽章だけが紫色に輝いている。
「はあ、はあ、はあ……」
呼吸が荒い。
ブラインはブルーカッターを作り出し、ふらつきながらもクラックにぶつける。
しかし、カッターは力なく土の剣で砕かれてしまう。
「あれを受けて、まだ立つ力があるとは……。海底人も侮れんな」
ブラインは鼻血を袖で拭き取り、再び戦闘態勢に入る。
「ブライン……、よせ」
タコ郎が力なく言う。
「ごめん」
そう言い残して、ブラインはクラックの元へ駆け出す。
両手にカッターを携えて。
「いいね、まさに戦士の鏡だ!」
そう言って、クラックも剣を構え直す。
カッターの刃と剣がぶつかり合う。
クラックは凄まじい速度の斬撃を次々と繰り出す。
ブラインも残された力を振り絞り、カッターで応戦する。
――まだだ。まだ終われない!
二人の戦いを眺めていたタコ郎も、ふらつきながら立ち上がった。
体勢を立て直し、足で地面を強く蹴り上げる。
そして、触手を巧みに操り、ブラインを避けながらクラックへ向かって伸ばしていく。
触手が複雑に絡み合う中、二人の激しい戦闘は続く。
クラックは先ほどのように鋭く速い斬撃を繰り出そうとするが、触手に意識を持っていかれてしまう。
一方、ブラインのカッターの勢いは増大していく。
どうやら、あの地震はかなりのエネルギーを消費するようで、クラックには最初ほどの勢いがない。
――いける!
「だあああっ!」
カッターの刃が、クラックの体を斜めに裂く。
「ぐっ!」
クラックの顔が歪む。
「畳みかけろ!」
タコ郎が叫ぶ。
ブラインはもう一度、肩から腰にかけてカッターを振り抜く。
「吹き飛ばせ! 土の手!」
クラックの悲痛な叫びとともに、ブラインは土の手に弾き飛ばされる。
しかし、タコ郎の触手がブラインを受け止めた。
「まだだ、だが勝てるぞ!」
クラックの様子を見ながら、タコ郎が言う。
クラックの胸の傷は、徐々に治りつつある。
――考えろ! 必ず弱点があるはずだ! 必ず!
クラックはこちらに向かって突っ込んでくる。
「来るぞ! 構えろ!」
ブラインとタコ郎は、クラックを迎え撃とうとした。
その時だった。
ブラインの胸を、何かが突き抜けた。




