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帰る場所は海の底  作者: cat-run
第五章 手記の記憶

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第五十話 水の師

第五章 手記の記憶

       第五十話 水の師


「すっかり出遅れてしまった。急がねば!」


昼間の街中を駆け抜けているのは、アスターンだ。


「しかし、地底人がなぜこんなところに……」


嫌な予感が後を絶たない。


一刻も早くタコ郎達と合流しなくては……。


そんな中、一般人に紛れていた者の殺意が、確実にアスターンへと狙いを定めた。


スッと、アスターンの目の前にナイフが突き立てられる。


それにいち早く反応したアスターンは、紙一重で腹に刺さるところだったナイフをかわした。


そのお返しに、ナイフを突き立てた張本人へ水流拳をぶつける。


そいつはモロにくらい、商店街の一角にある魚屋へと吹き飛んでいく。


生簀に思い切り激突したが、それでもフラフラと立ち上がる。


「いい、拳ですね」


その姿が白日の下に晒される。


茶髪の中年女性だ。髪は肩までかかっている。


何より目を引くのは、紅に染まった瞳だ。


「なんだ、お前は……」


「私……いや、僕は地底国皇帝のお膝元、テラと申します」


「やはり、その気配……地底人か……」


「気配でわかるんですか? すごいですね」


テラは感心したように目を丸くする。


見た目は中年女性だが、中身はもっと得体の知れない何かだ。


アスターンは周りの住民が避難したことを確認すると、すぐさま手中に渦潮を生み出し、テラへとぶつける。


建物が砕け散るほどの勢いだ。


「多少の手荒な真似は許して欲しい」


渦潮が見事に当たったテラの体は、その勢いで弾け飛ぶ。


しかし――。


弾け飛んだ土の塊が別の場所へ集まり、再び人型を成していく。


その間にアスターンは、水の槍や棒を大量に頭上へ浮かべ、テラめがけて発射する。


「防げ、土の手」


その言葉とともに、テラの背中から土の手が生えてきて、槍を弾き返す。


「チッ……」


アスターンは舌打ちし、水流拳で連撃を試みる。


巨大な土の手と水流拳が真正面からぶつかり合う。


拳から放たれる衝撃波が周辺に飛散する。


「くくく、無駄だよ」


気味の悪い笑いを浮かべながら、打撃の速度を上げていく。


その勢いに押され、アスターンは後ろへ吹き飛ばされる。


衝撃に流されるまま住居の壁を突き破っていく。


一軒、二軒と突き抜け――三軒目の長机に激突する。


「ガッ……ッ」


しかし、テラは間髪入れずに土を固めた球を目の前に作り、発射する。


アスターンは水の壁を作り、勢いを相殺して防ぐ。


「まだまだ!」


そう言って地面に手をつき、そこからエネルギーを放出する。


エネルギーを受け取った地面はウネウネと蠢き、アスターンの足元まで来ると、急に爆発を起こす。


その反動で、アスターンは空中に放り出される。


――くそ、水面の術で反応できない。この凄まじいパワーとスピード。何という奴だ。


地上からは、土でできた無数の細い触手がアスターンに狙いを定め、襲いかかってくる。


「せせらぎの舞!」


空中で身を捻り、触手を受け流していく。


まるで川のせせらぎのように。


触手を全て退けたアスターンは、地上にいるテラに向かって急速に落下していく。


周囲に水のまりを携え、どんどん加速している。


――この距離では避けるのは無理だな。


「いいぜ、来いよ!」


テラは足を開いて、どっしりと構える。


アスターンは拳を握り、水を纏わせる。


水流拳と水のまりが、テラに向かって激突する。


周囲には水煙が舞う。


地面が割れるほどの勢いでアスターンの攻撃が炸裂するが、テラも何重にも土を重ねて強化した腕で、アスターンの攻撃を受ける。


二人の攻防の勢いで、周囲の建物にヒビが入る。


「があああっ!」


アスターンは咄嗟に指にアクアエネルギーを込める。


「!」


ここに来て初めて、テラに焦りが生まれた。


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