↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰る場所は海の底  作者: cat-run
第五章 手記の記憶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/68

第四十七話 なんてことない日常

第五章 手記の記憶

       第四十七話 なんてことない日常


「タラッサです……。よろしくお願いします」


 少年は無愛想な様子で自己紹介をすると、軽く一礼した。


「俺はブライン! よろしくね!」


 さすがと言ったところか……。


 初対面の相手にでも、容赦なく距離を詰めていく。


「俺はタコ郎だ」


 タラッサは不思議そうな顔で、こちらを見つめている。


「それじゃ、行こっか」


 ブラインはタラッサの手を引いて、王室を後にした。


 タコ郎も王室を出る前にプロテウスへ一礼し、二人の後を追う。


 王城を巡りながらコミュニケーションを取っていくうちに、タラッサという人物が少しずつ分かってきた。


「タラッサは、なんで海衛団に?」


「昔から憧れだったんだ。この国を守るために戦う、かっこいい姿が」


「へ~、立派な理由だね。俺よりも年下なのに、すごいな」


「ブラインさんは、何で海衛団に?」


「ブラインでいいよ。ん~、私利私欲になっちゃうんだけど、地上へ帰りたいんだ」


「地上へ……帰る? ブラインは地上から来たの?」


「うん。ここの世界も楽しいし大好きなんだけど、やっぱり人間というのは故郷を求めちゃうんだよね」


「そうなんだ……。タコ郎さんは?」


「よしなよ。タコ郎は無職を切り抜けたかっただけなんだから」


「おい、言い方に悪意を感じるんだが……」


「それは……なんか、すいません」


 真に受けたタラッサが、軽く頭を下げる。


「な~んてね、冗談だよ。タコ郎は僕を助けるために入団してくれたんだ。まあ、さっきの話も半分本当だけど……」


「お前は一言余計なんだよ」


 ブラインは、軽く笑っている。


 それから数日が経った。


 ある日の昼休み。


 タラッサが一人、中庭にうずくまっていた。


「タラッサじゃないか。何をしているんだ?」


「ああ、タコ郎さん。これは、その……」


 タラッサの視線の先。


 茂みの中には、三匹のアジがいた。


 ――なんと、そのアジたちは宙を浮いている。


「何だ、これは⁉︎」


「どうやら、僕のアクアエネルギーは魚たちと通じることができるみたいなんです」


「ほー、アクアエネルギーはすごいな」


 アクアエネルギーの存在を知ったのはつい最近だが、その可能性には驚かされる日々だ。


「それ、大きな武器になるんじゃないか?」


「えっ?」


「自分の強みを活かして、磨いていけば、それは自分の大きな武器となる。これは、亜人差別を受けていて、アクアエネルギーも扱えない俺に、『触手で戦えばいい』と教えてくれたときのアスターン師匠の言葉だ」


 タラッサは最初こそ戸惑った様子を見せていた。


 しかし、すぐに笑顔になった。


「ありがとうございます。少し、自分に自信が持てました」


 そう言って、タラッサはアジを連れて城内へと戻っていった。


 我ながら、いいことを言った。


 タコ郎は内心誇らしげに胸を張る。


 こうして、自分の言葉が誰かの助けになる。


 それが、なんだかとても感慨深かった。


 そんなことを思っていた、そのとき――。


「なに、にやけてんの?」


 そう言って、背中を肘でつつかれた。


「ブライン!」


「ぷぷ、珍しいもん見れたよ」


 焦りと恥ずかしさから、タコ郎はブラインの後を必死に追いかけていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。