第四十六話 亜人
第五章 手記の記憶
第四十六話 亜人
「よかろう。入団試験を受けることを許可しよう」
プロテウスは、渋々了承した様子だった。
「ありがとうございます」
タコ郎は深々と頭を下げる。
「最後に一つ、よろしいですか?」
口を開いたのは、またもブラインだった。
「なんだ」
「なぜ、プロテウス様は亜人に対して距離をお取りになられているのか、少々気になりまして……」
タコ郎のことを案じてくれたのだろうか……。
「すみません、プロテウス様。お気になさらないでください」
タコ郎は必死に付け足した。
「いや、良い」
プロテウスはタコ郎を見る。
「確かに、貴様には邪険な態度を取ってしまっていたかもしれないな。すまなかった」
「これは亜人の体質なのだがな。我々海衛団が保有している貴重なエネルギー源に、アクアエネルギーというものがある」
「アクアエネルギー?」
「ああ。我が海衛団のほとんどが、そのエネルギーを使って戦っている。だが……亜人は、どうやら外部からのアクアエネルギーを受け付けない体質らしいのだ。こればかりは、どうしようもないな」
「だから、最初から亜人の入団希望者が減少するように仕向けたのですか?」
「ああ、そういうことだ」
プロテウスは淡々と答える。
「はっきり言ってしまえば、貴様が入団試験に合格することはないだろう」
ここまできっぱりと言われてしまうのなら、本当に不可能なのだろう。
「だが、海衛団もアクアエネルギーを使うことが全てではない」
「……? どういうことですか?」
「アスターン、入れ」
「はっ! 失礼します!」
返事とともに、扉からアスターンが入ってきた。
「もし、貴様の覚悟が本気というのなら、アスターンに体術を教わるといい。アスターンが認めれば、入団を許可してやろう」
「いいのですか⁉︎」
「言っておくが、アスターンを経由しての入団試験は、普通の試験よりもきついぞ」
一瞬、タコ郎の気持ちは揺らぎかけた。
だが、すぐに踏みとどまる。
「やらせていただきます!」
こうしてブラインは普通の入団試験を、タコ郎はアスターンによる厳しい体術の試験を受けることになった。
そして二人は、それぞれの試験を無事に突破することができた。
「いやー、タコ郎が挫折しちゃうんじゃないかと思って、ヒヤヒヤしたよ」
「ったく、厄介ごとに巻き込みやがって」
「ごめんごめん。でもタコ郎さ……最初に会ったときより、今の方が生き生きとしているよ」
「!」
「鮮度のいい魚みたいにね」
「それは冗談と受け取っていいのか?」
そんなことを話しながら、二人は王城へ戻ってきた。
「それでは、各々の課題に取り組むように! タコ郎はこちらで体術の稽古だ」
アスターンの修行は、入団してからもなお続いていた。
最初は他の隊員たちから物珍しそうな視線を向けられていたが、今ではすっかり打ち解けている。
そんなある日のことだった。
「タコ郎様、ブライン様。プロテウス様がお呼びです」
「わかりました」
「プロテウス様に呼ばれるなんて、タコ郎、何かしたんじゃない?」
「だとしたら、お前も呼ばれているんだから道連れだな」
「ちょっと、やめてよ」
二人は王室前の扉までやって来た。
タコ郎は恐る恐るノックをする。
「入れ」
扉を開ける。
そこには、一人の十歳くらいの少年が立っていた。
「今日から入団する新人だ。城を案内してやれ」
少年が二人の方を向き、自己紹介をする。
「えっと、タラッサです。よろしくお願いします」




