第四十三話 次なる目的地
第四章 深海突入
第四十三話 次なる目的地
「やあ、初めまして。君がカイくんだね? 話はノースくんから聞いているよ」
「どうも……。隊長さんなんですか?」
「ああ。僕は第一部隊隊長、フルードさ」
体に包帯を巻いた男が、軽く自己紹介をする。
「さっきの海底神殿って……」
「海底神殿……。それは初代海底王、ポセイドン様を祀った神殿のことだ」
「ポセイドン様が……」
ポセイドン。
胸の徽章の中央に刻まれている、海底王国の建国者だ。
「でも、なんでそんなところの名前が?」
「海底神殿は南西エリアに位置していて、今ではほとんど手入れもされていない。中には罠がたくさん仕掛けられていてね。今では、足を踏み入れる者もいないんだ」
「もしかしたら、そこに何か手がかりがあるかもしれない」
正直、論理的な根拠は何もない。
そんな危険な場所へ向かうなんて、バカみたいな話だ。
ただ――。
「ポートに繋がる手がかりがあるなら、行ってみる価値は十分にあると思う」
俺の考えを、ノースが口にする。
手がかりが何もない以上、藁にもすがる思いで行ってみるのも悪くないはずだ。
「もしかしたら、ポセイドン様に会えるかもよ」
「生きているんですか?」
「都市伝説だよ。ポセイドン様は生と死を繰り返しているっていう、ただの噂さ」
フルードは軽く笑う。
そして、こう続けた。
「この先、ボアを連れていくといい。若いが、とても頼りになるよ」
「ボア?」
「第一部隊副隊長だ」
ノースが補足する。
「いいんですか⁉」
「ああ。彼は軽傷だし、聞いている通り、北のエリアではしばらく活動できない。連れて行ってあげてくれ」
「分かりました。寛大なご配慮、感謝します」
カイは丁寧に頭を下げる。
「ノースくんのこともお願いね」
「分かりました」
「ちょっと、フルードさん! どういうことですか⁉」
ノースが声を上げる。
「さあ、療養生活が終わったら、アンカーへ出発だ」
そう意気込んで、カイは病室を後にした。
ポート。
もし、あれがお前からのSOSなら――俺は、それに応えてみせるよ。
* * *
その夜。
タコ郎は治療所を退院し、自室へ戻っていた。
しばらく海衛団としての仕事から離れていたため、部屋の整理でもしようと思い立ち、重い腰を上げたのだ。
部屋には、大量の報告書が乱雑に散らばっている。
タコ郎はそれを一枚一枚拾い集め、ファイルに綴じていく。
三冊分の報告書を整理し終えたところで、次に本棚へ手を伸ばした。
「ん?」
そこで、ふと気づく。
棚の奥に、小さな本が引っかかっていた。
タコ郎はそれを手に取る。
その瞬間――目の色が変わった。
「これは……」
それは、長い間見つからず、半ば諦めていたノートらしきものだった。
表紙に記されたタイトルは――。
『手記』




