第四十二話 残されたのは
第四章 深海突入
第四十二話 残されたのは
「なんで、ポートが……」
一瞬、聞き間違いかと思った。
一体、どういうことだ?
あのポートが……?
「だって、そんな素振り、一度も……」
「兄ちゃん、気持ちは分かるが、いったん落ち着こう。今、第三部隊が捜索にあたっている。第二部隊にも協力を要請している」
「カイくん、隊長の言う通り、まずは冷静になりなよ。君も僕も、その傷を治すところから始めないとね」
「ラートルさん……」
カーテンが掛かっていて気づかなかったが、隣のベッドにはラートルが横たわっていた。
「ラートルさん! よかった……。助けていただいて、ありがとうございました」
「副隊長が隊長の指示に従うことも、隊員の身を守ることも当然のことだよ。それに、あの状き――」
「さて、問題はこれからどうするかだ」
タコ郎が割って入る。
いつものことすぎて、もう何も感じない。
「このまま第三部隊で活動するのもいいが、君たちには他にやることがあるはずだ」
「やること?」
「治療後、カイくんとノースくんは、一度休養も兼ねてアンカーへ戻ることをお勧めするよ」
「え? 戻るって、まだここに来て十日ですよ?」
「まあ、そうなんだが……ここにいても、部隊の復旧までには時間がかかる。第一部隊も第三部隊も、酷いダメージを負った。しばらく、深海の探索は不可能だ」
「これからの行き先のヒントとして、第二部隊に行ってみるのがいいんじゃないかなと、僕は思う」
「第二部隊ですか?」
「あそこは人手不足が日常だからね。喜んで入隊を受け入れてくれるはずだよ」
「そんなに部隊をコロコロ変えていいんですか?」
「あまりいいことじゃないけど、プロテウス様なら認めてくれると僕は思うよ」
第二部隊……。
南東、南西エリアという広範囲で活動している部隊だ。
「あそこは、海衛団の二番手が隊長をやっている。少し捻くれてはいるが、いい知恵を授けてくれるはずだ」
「ありがとうございます。少し考えてみます……」
やはり、二人の言う通り、一度アンカーへ戻るべきなのだろうか。
マールは元気だろうか。
「先輩! このイワシバーガー、めっちゃうまいっすね!」
あのポートが、裏切った。
そんな事実を、受け入れることはできなかった。
* * *
数日が経ち、傷の痛みも和らいでいった。
普通に歩けるまでに回復したカイは、ノースのもとへ向かっていた。
ノースは自分よりも酷い状態らしく、まだ動くことができないらしい。
それでも、話さなくてはいけない。
ポートのこと。
そして、これからのことを。
病室の扉をノックする。
第二拠点の病室は二つに分かれており、重症患者の部屋と軽症患者の部屋に分けられている。
目の前の扉は、重症患者用の病室だ。
扉を開ける。
中には、包帯を巻いた重症患者たちがベッドに横たわっていた。
「ひどい……」
その中に、ノースの姿を見つける。
「ノース、調子はどうだ?」
思いのほか外傷は目立たない。
しかし、それでも見るからに元気がなかった。
「カイ……。話は聞いてるよな」
「ああ。大体は……」
しばらくの沈黙が流れる。
こういう時、何を話せばいいのか分からない。
「カイ、俺はポートを信じている」
ノースの口から、思いもよらない言葉が告げられた。
あれほど憎んでいた地底人と、ポートが繋がっていたというのに……。
「ポートの言葉が、妙に引っかかっていたんだ。『あとは神頼みしかない』って」
「神頼み?」
「ああ。その違和感を、隣の隊長に話したら、とある場所の名前が出てきたんだ」
「海底神殿だね」
突然、隣から声がした。
驚いてそちらを見る。
そこには、緑色の髪をした若い男性が横たわっていた。




