↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰る場所は海の底  作者: cat-run
第四章 深海突入

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/68

第四十話 名前

第四章 深海突入

       第四十話 名前


押し寄せる土の波。


 横に逸れるだけでは、回避のしようがない。


「くっ!」


 ノースが唇を噛む。


「皆さん! イルカーに捕まって!」


 声を張り上げたのはボアだった。


 ボアは掛け声と共に、これまで見たこともないほど巨大な渦潮を部隊の真下に作り出す。


 その渦潮に呑み込まれ、隊員たちとイルカーは上へ、上へと押し上げられていく。


 ノースとポート、そして他の隊員たちも、必死にイルカーへしがみつく。


 イルカーもまた、必死にヒレを揺らしていた。


 ぐんぐんと上昇していき――ついに、土の波の高さを超える。


 そのまま宙を舞い、眼下を通り過ぎていく土の波を見送った。


 どうにか土の波を飛び越えた一行は、そのまま地面へ向かって下降していく。


 そして――無事に着地した。


「一体、今のは何だったんだ?」


 頭をかきながら、フルードが率直な疑問を口にする。


「掴め、土の手」


 どこからともなく声が聞こえた。


 その瞬間――


 ボアの足首に、何かが絡みつく。


「なっ!」


 見ると、地面から生えた土の手が、ボアの足首をがっちりと掴んでいた。


 すかさずフルードが水で小刀を作り出し、土の手を切断する。


 切り離された土の手は、崩れ落ちるように地面へと還っていった。


「何者だ!」


 フルードが声のした方へ向き直り、威嚇する。


 すると、岩陰から一人の男が姿を現した。


 かなり大柄な男だ。


 恵まれた体格をしているものの、どこか気だるげな雰囲気を漂わせている。


 男は、こちらの様子を一人一人確認するように視線を動かしていた。


「質問に答えろ! お前は何者だ!」


 フルードが声を荒らげる。


 男は鬱陶しそうに頭をかいた。


 そして――ノースと目が合う。


 その瞬間だった。


 男の姿が消えた。


「えっ――」


 次の瞬間。


 男の顔が、ノースの目の前にあった。


 わずか三十センチほどの距離。


 男はすでに腕を後ろへ引いている。


 今にもノースへ拳を叩き込もうとしていた。


「土石拳」


 男がボソリと呟く。


 その拳に、ところどころ石の混じった泥がまとわりついた。


 ノースは慌ててガードしようとする。


 だが――間に合わない。


 そう思った、その時。


 二人の間に何かが割り込んだ。


 それは、水でできた巨大なハンマーだった。


 ハンマーは男へ向かって勢いよく振り抜かれる。


 男は片腕だけでそれを受け止め――そのまま数メートル後退した。


 ハンマーを作り出したのは、フルードだった。


「……」


 しばらくの間、両者の間に緊張が走る。


 やがて、男が口を開いた。


「はあ……」


 そして、ため息をつく。


「防がれた。俺はもうだめだ」


 男は頭を抱え込む。


「その、土を使った攻撃……。貴様、地底人だな?」


 フルードが問いただす。


 項垂れていた男は、ゆっくりと顔を上げた。


「はあ……めんどくせーな。どうせ死ぬんだから、名前とかどうでもいいじゃねーか」


 ぶつぶつと独り言をこぼす男。


 一体、何がしたいんだ?


 しかし――あの一撃は、確実にノースを仕留めにきていた。


「僕からすれば、貴様の方がよっぽどめんどくさい。名乗らないなら名乗らないで、こちらは貴様を排除するだけだ」


 そう言って、フルードは凄まじい速度で男の懐へ潜り込む。


 そして、ハンマーを振りかざした。


 男の頭へ向けて振り下ろされたハンマーを、男はまたも片腕で受け止める。


 その瞬間――周囲に激震が走った。


 だが、防がれたことなどものともせず、フルードは攻撃の手を緩めない。


 次々とハンマーを叩き込む。


 激しい衝撃が男の胴体へ連続して襲いかかる。


 それでも男は、その全てを片腕で防いでいた。


 それどころか――一歩も動かない。


「隊長! 下がって!」


 そう言って、ボアもヤスを携えて男へ突っ込んでいく。


 ハンマーとヤスによる激しい攻撃が繰り出される。


 しかし、それでも男は一歩も動かなかった。


「はあ……また叱られる」


 男がため息をついた、その瞬間。


 ドンッ!


 フルードとボアの二人が、空中へ吹き飛ばされた。


 何が起きたのかは見えなかった。


 おそらく、先ほどの土の手による攻撃だ。


 あの土の手を使った攻撃は、以前報告されたテラとの戦いとも一致している。


 二人は地面へ倒れ込んだ。


 ノースはすぐさま水の爪を作り出し、男の次の動きに警戒する。


 それまで固まっていたポートも、銃を構えた。


 男は、こちらへ向かって一歩ずつ歩いてくる。


「ここまで若いやつが、これほどの実力を持っているのか……」


 男は呆れたように呟く。


「全く、本当に嫌になる」


 そして、五メートルほど離れたところで立ち止まった。


 再び口を開く。


「そこの隊長とか言ったっけかな? そんなに知りたいなら教えてやるよ」


 男は気だるげな表情のまま、名を告げる。


「俺は――地底国皇帝のお膝元、ナップだ」


 男が、初めて自らの名を名乗った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。