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帰る場所は海の底  作者: cat-run
第四章 深海突入

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第三十七話 繋がる思い

第四章 深海突入

       第三十七話 繋がる思い


タラッサを目の前に、カイは拳を握りしめる。


 そのまま、タラッサの顔へ拳が直撃する――そう思っていた。


 しかし、その瞬間。


 地面から巨大なヒラメが現れ、カイとタラッサの間に割って入った。


 カイの水流拳はヒラメに直撃する。


 だが、その巨体によって衝撃を吸収されてしまった。


「くそっ!」


 カイは後方へ飛び、一旦距離を取る。


 するとヒラメは、逃げるカイに向かって身体の中心からビームを放った。


 その攻撃からは、強いアクアエネルギーが感じられる。


「くっ!」


 カイは何とか身体をひねり、ビームをかわす。


 その瞬間、ある仮説が浮かんだ。


「もしかして……海底にいる海獣は、お前らが作り出したのか?」


「だったら何だ」


 あまりにもあっけらかんとしたタラッサの態度に、カイの怒りは頂点に達した。


「お前らの生み出した怪物が、一体どれほどの隊員を犠牲にしたかわかっているのか!」


 この部隊に入って、まだ十日ほど。


 それなのに、目の前で三人もの隊員が命を落とした。


 その事実が、カイの脳裏に焼き付いている。


 しかし、タラッサは攻撃の手を緩めない。


「気に入らない奴らには邪魔をする。この世界じゃ常識だ」


 タラッサが手をかざす。


 すると、どこからともなく巨大なタツノオトシゴが現れた。


 その口から、凄まじい勢いでアクアエネルギーを帯びた水が噴射される。


 水流が地面へ激突し、土煙が舞い上がった。


 カイは走りながら、何とか攻撃をかわしていく。


 だが、そこへさらにカマスの群れが迫ってきた。


「はあ……はあ……はあ……」


「避けてるだけで俺を倒せると思ってんのか? 俺はまだ、手も足も出してねーぞ」


 カイは一気に後退し、態勢を立て直す。


 このままでは、こちらが消耗する一方だ。


 ここまで来れば――もう、未完成の「あれ」を使うしかない。


「お願いします。アスターン師匠……俺を守ってください」


 カイは神経を研ぎ澄まし、集中する。


 目を閉じ、深く息を吸う。


 周囲の音に意識を集中させる。


 魚の大群が、カイへ向かって迫ってくる。


 まだ……。


 まだだ……。


 来る!


 最初の一匹!


 目を閉じたまま、カイは最初に突っ込んできたカマスをするりとかわす。


 次のカマスも。


 そのまた次も。


 魚たちの猛攻を避けながら、隙を見つけてカウンターを叩き込む。


 タラッサは、興味深そうに目を見開いた。


「あれは……水面の術⁉︎」


「バカな! 昔の技だぞ! 今のガキが使えるはずねぇ!」


 しかし、タラッサは何かに気づいたように、ハッとした表情を浮かべる。


 そして、弱々しく呟いた。


「……アスターンか」


 その間にも、カイは確実に間合いを詰めていく。


 アスターンから半日ほど教わった技術と、図書館で読んだ本を参考にして編み出した、カイ独自の水面の術。


 視覚を遮断し、相手のわずかな動きを察知できるほどまでに集中力を高める。


 最後の魚をかわした。


 残るは、タラッサと巨大なタツノオトシゴだけ。


 カイは一気に間合いへ入り、近接戦へ持ち込む。


 タラッサは水を操り、柄の長い斧を作り出して応戦する。


 斧が振られる。


 しかし、カイはそのわずかな予備動作を察知し、紙一重でかわしていく。


 だが――


 水面の術は、まだ攻撃面では不完全だった。


 避けることはできても、攻撃へつなげられない。


 カイは斧をかわすと同時に、水流拳でカウンターを狙う。


 しかし、タラッサは斧で受け止めた。


 再び斧が振り下ろされる。


 カイは水球を作り出し、斧の威力を相殺する。


 斧が水球へぶつかった瞬間――


 ドォン!


 水球が弾け、周囲に水煙が立ち込める。


 視界がはっきりしない中、斧と拳による激しい攻防が繰り広げられる。


 タラッサの斧捌きは見事なものだった。


 一撃一撃が確実に急所を狙ってくる。


 速度が上がる。


 見切れ!


 そう、自分に言い聞かせる。


 しかし――


 ついに斧が、水面の術を突き抜けた。


 カイの胴へ向かって、一直線に迫る。


 まずい!


 確実に入る。


 水を作り出す時間もない。


 ――間に合わない!


 そう思った。


 しかし、斧がカイの身体へ届くことはなかった。


 カイの胴の前に、一枚の水の膜が現れ、斧を受け止めていた。


 この耐久性。


 そして、この位置の正確さ。


「ラートルさん!」


「まったく、隊長に君のことを頼まれたから追おうとしたものの、速すぎて追いつけなかったよ。これは立派な亀への虐待だね。それに、やっと追いついたと思ったら、見覚えのない強面の男が海衛団の隊服を……」


「長えよ!」


 痺れを切らしたタラッサが、斧を振り抜く。


 距離こそ離れていたが、斬撃によって生まれた衝撃波がラートルへ襲いかかる。


 しかし、ラートルはそれを簡単に防いだ。


 だが、タラッサは隙を与えない。


 再びカマスの群れをけしかける。


 あっという間にカマスたちに囲まれ、ラートルの姿が見えなくなる。


「わざわざこんなところまで来たのに、失礼じゃないか」


 その言葉と同時に――


 カマスたちが一斉に吹き飛ばされた。


 おそらくラートルは、水の膜で自分を囲み、それを一気に拡張したのだ。


 膜にぶつかったカマスたちは、その勢いのまま弾き飛ばされていく。


「何なんだ、お前は……」


 タラッサが呟く。


 ラートルは胸を張る。


「海衛団第三部隊副隊長兼、第三部隊の盾。ラートルとは僕のことだ」



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