第三十四話 誘われた先には
第四章 深海突入
第三十四話 誘われた先には
「そうか、すでに知っていたのか……。第五部隊のことを……」
「タコ郎さんは何かご存知なんですか?」
ノースが尋ねる。
「いや、もう三十年も前のことだ。それに、何があったのかなんてのはわからん」
「……」
「タコ郎さん、話が変わるんだけど、ひとつ聞きたいことがあって……」
「なんだ?」
「カギって、何のことだかわかるか?」
「カギ?」
「カギってあれだろ? ドアを開けるやつ」
「いや、そうじゃなくて……。どうやら世界のカギらしいんだ」
「世界のカギ? どこでもドアの鍵じゃあるまいし……。悪いが、思い当たる節はないな」
「そうか。ありがとう」
「やれやれ、少し話し込んでしまったな。俺は戻るとするか……」
「遅くまでありがとう、タコ郎さん」
タコ郎の背中を見送ると、ポートが痺れを切らしたように叫ぶ。
「さっきから何の話してんすか!」
それからしばらく、海獣との戦闘を繰り返すうちに、カイたちはだんだんとこの環境にも馴染めるようになってきた。
タコ郎の実力は本物だった。
戦闘技術だけでなく、隊員たちを率いる力も凄まじいものだった。
そんなある日のパトロール中のことだった。
「下に何かがいる! 警戒態勢!」
タコ郎が声を張り上げる。
隊員たちが足を止め、周囲を警戒する。
何だか、水が重たく感じる。
いつもとは何かが違う。
水の流れが、少しずつ変化していく。
何かが近づいている。
ゴォッ!
ところどころから、そんな音が聞こえてくる。
何かが蠢いている。
その時だった。
カイのすぐ後方で、何かがものすごい勢いで動いた。
「うわっ!」
次の瞬間、カイの体が激しい水流によって吹き飛ばされる。
「なんだ? 何が起こった?」
何かが動いた方へ目をやったカイは、絶句した。
自分の後ろにいたはずの隊員が、三人も消えている。
ゴポゴポゴポ……。
不穏な音が辺りに漂う。
「隊長! 何か様子がおかしいよ! 撤退したほうがいいんじゃない?」
副隊長のラートルが口を開く。
「うむ、総員引き返せ! 撤退だ!」
しかし、もう遅かった。
何かが勢いよく、一同の中心へ突っ込んでくる。
避ける暇などなかった。
だが、突っ込んでくる方向が少しずれていたためか、カイたちは再び激しい水流に吹き飛ばされた。
遠くから、隊員たちの叫び声が聞こえる。
カイは今度こそ、その姿を捉えた。
それには、いくつもの翼と、ナマズのようなヒゲが生えていた。
しかし、その本体は紛れもなく――ウツボだった。
散り散りになる隊員たち。
ウツボとカイの目が合う。
ウツボは一瞬にして標的を定め、カイに向かって突っ込んできた。
速すぎる。
ダメかと思った、その瞬間。
ウツボとカイの間に、誰かが滑り込んできた。
それと同時に、水の膜が辺り一帯へと広がる。
水の膜を張ったのは、ラートルだった。
ウツボは、ラートルの作り出した膜へ頭から激突する。
五十メートルほどもあるウツボの突進を受けても、その膜はびくともしない。
これが、「第三部隊の盾」と呼ばれるラートルの実力だった。
ウツボが怯んでいる隙に、タコ郎が触手を振り抜き、重い一撃をお見舞いする。
確実にダメージが入っている。
そう思った、その時だった。
カイの隊服が、グイッと引っ張られた。
「うわっ!」
ものすごい力で、カイの体が引っ張られていく。
「カイくん!」
「にいちゃん! ラートル!にいちゃんを頼む!」
どうやら、どこかへ連れ去ろうとしているようだ。
凄まじいスピードで海中を進んでいく。
引っ張られる中、カイはこの力の正体に気づいた。
普通の大きさのカマスが、カイの隊服を突き刺し、ものすごいスピードで泳いでいるのだ。
「くそ! 何なんだ!」
ぐんぐんと引っ張られていく。
数分後、ようやくカマスが減速し始めた。
見ると、すぐそこには巨大な岩がゴロゴロと並ぶ岩場があった。
カマスは一切の迷いなく、岩場の隙間へ入り込んでいく。
カイも必死に岩を避ける。
そして、岩場を抜けた先には――巨大な空洞が広がっていた。
その中には、住居のようなものがいくつも立ち並んでいる。
「ここは、一体……」




