第三十三話 部隊の足跡
第四章 深海突入
第三十三話 部隊の足跡
前方から姿を現したアンコウのような海獣は、目玉をグリグリと動かしていた。そして、その焦点がこちらへと定まる。
「左右によけろー!」
タコ郎の指示で、隊員たちは左右へ散る。
すかさず、アンコウの特徴でもある、頭から垂れ下がった竿のようなものに光が集まり始める。
次の瞬間、集まった光が前方へ向かって放たれた。
その威力は凄まじい。
攻撃が止んだと同時に、タコ郎が手をかざす。
すると、手についていた五本の指が伸び、触手へと変化する。
五本の触手は素早く動き、海獣へ次々と攻撃を加えていく。
「総攻撃だ!」
その合図と同時に、隊員たちも水の術を海獣へぶつけていく。
遅れを取るまいと、カイも右手を構え、手のひらから小さく鋭い渦潮を放つ。
全方位から集中攻撃を受け、海獣が悶える。
「ぐおおおお!」
そんな低く重い唸り声が、周囲へ響き渡る。
やがて海獣は抵抗できなくなり、海の底へと落ちていった。
カイは、意外とあっさり終わってしまったことに多少の戸惑いを感じつつも、先へ進む隊員たちの後についていく。
その日は、それ以上の収穫はなかった。
「いや〜、疲れましたね。ノースさん」
「ああ。深海へ潜るというのは、なんだか不思議な感じだな」
初日の任務を終えた二人は、疲れでふらつきながら部屋へと向かう。
ノースが部屋のドアノブに手をかけ、扉を開く。
「おお、お邪魔してるぞ!」
タコの頭が目に入る。
ノースは、そのまま扉を閉めた。
……なんかいた。
「どうしたんすか? ノースさん?」
どうやら見間違いだったようだ。
そう割り切って、もう一度扉を開ける。
「おお、お邪魔してるぞ!」
デジャヴ?
「いや〜、ごめん。いきなり部屋の中にこの人がいたら、びっくりするよね」
位置的に壁の陰に隠れていたカイが、ひょっこりと顔を出す。
「にいちゃん、それはどういう意味だよ……」
「えーっと、どちら様?」
ノースの背中から、ポートも顔を覗かせる。
「えーっと、話を整理すると……第三部隊隊長とは前からの知り合いで、偶然再会を果たしたと」
ノースはカイの話を整理しつつも、まだ混乱しているようだ。
「そうなんだ。このタコ郎さんには、病院でちょこっとだけお世話になったんだ」
「ちょこっとってなんだい」
「仲良しなんすね、お二人さん」
「いやー、でも、にいちゃんたちはついてるな。もし一人でも第二部隊とかになっていたら、海底王国最南端の第三拠点に移されているところだ」
タコ郎が、ガッハッハと豪快に笑う。
「最南端にも拠点があるんだ」
カイは初めて知った。
「なんだ、知らなかったのか」
「現在、オーシャンドームと結界の間の深海エリアは四つに分割されていて、それぞれ北東エリア、北西エリア、南東エリア、南西エリアに分かれている。ここ、真北に位置する第二拠点では、第一部隊と第三部隊が左右に分かれて、それぞれ北西エリアと北東エリアを担当している」
「なるほど……。ん、待てよ……。じゃあ、第二部隊は南東と南西の二つを担当してるの?」
「ああ、現在はな……」
「もともと、第二部隊の管轄は南東エリアだけだったんだ」
「?」
「にいちゃんらみたいな若い奴らは知らないだろうが、昔は第五部隊っていうのが存在していてな。そこが南西エリアを担当していたんだ」
「第五部隊……」
カイとノースは息を呑む。
ポートは、ただポカンとしている。
「その感じ……にいちゃんらは、もう知っているようだな……」




