第三十一話 渦巻く陰謀
第四章 深海突入
第三十一話 渦巻く陰謀
朝、目を覚ますと、知らない天井が視界に入った。
ここはどこだと五秒ほど考え、意識がはっきりしてくるとともに、昨日の記憶も蘇ってくる。
ここは第二拠点か……。
昨日の長旅の影響で、ぐっすり眠っていたらしい。
ジリリリリリ!
館内にサイレンのような音が鳴り響く。
隣で寝ていたノースとポートも、何事かと飛び起きた。
「朝でございます。隊員は速やかに支度をして、食堂まで降りてきてください」
室内の天井に設置された放送用スピーカーから、タラバの声でそんな文言が繰り返される。
どうやら、この拠点はモーニングコール付きらしい。
なんと親切なのだろう。
「なあ」
カイが口を開く。
「あの放送用スピーカー、ぶっ壊さない?」
「やめとけ」
すかさずノースが止める。
支度を済ませ、三人は食堂で朝食を囲んでいた。
「では、ノース君。今日の予定はなんだね?」
「お前、自分で覚えとけよ……」
そうは言いつつも教えてくれるところが、ノースのいいところなのだ。
「今日は最初に隊長へ挨拶に行って、そのあとは各部隊で任務に参加するっていう流れだ」
「なるほど……」
「なるほどっす……」
「あれ、俺、今日から単独なの?」
一瞬の沈黙。
「先輩! 心は一つっすよ!」
ポートが励ましてくれる。
「……」
準備を済ませた三人は、一階から階段を使って降りていく。
ノースによると、どうやらこの第二拠点はオーシャンドームの端に隣接していて、地下から直接海底へ繋がっているとのことだ。
その地下には、部隊準備室というものが部隊ごとに分けられているらしい。
今から、そこへ向かうというわけだ。
「じゃあ、第一部隊はあっちだから……」
「ああ、お互い頑張ろうな!」
拳を合わせて、二人と別れる。
三という数字が書かれた扉。
おそらく、これだろう。
こういう新しい環境は、最初が肝心だ。
深呼吸をして、扉を開けようとした、そのとき――
「あれー? きみ、ぼくとどこかで会ったことあるっけ?」
この喋りの速さと回りくどさは……。
振り返る。
そこには、亀の頭。
「ラートルさん!」
「あれー? 僕の名前知ってるの? やっぱり君と僕、どこかで会ったよね? それとも僕が第三部隊の盾とかいう異名がついたから、ひょっとしてそれで知ったとか? んー、どっちだろう? 君の徽章は綺麗な青紫色をしているから、ひょっとして隊長の言っていた新しく入ってきた人だったり……」
「俺はカイって言います! 今日からここでお世話になります! あと、あなたとは王城のノースの部屋を尋ねたときに会いました!」
はっきり、それでいて早口で話を進める。
「あー、そういえば、あったような気がしないでもないような気がしないでもない」
「どっちですか?」
ダメだ。
このままだと、目の前の扉が一生開かない。
「失礼します!」
そう叫んで、扉を開けた。
中には衛兵が一人。
赤い頭。
赤い触手。
タコだ。
タコが頭になっている。
その頭には見覚えがあった。
その人物が振り返る。
「へえっ!」
変な声が出た。
相手もこちらを見て、目を丸くする。
「にいちゃんじゃねぇか!」
「タ、タコオヤジ……」
空気が凍りついた。
――一方その頃。
ある国の料亭にて。
「ご報告に参りました。タービダイト様」
向かい合って座っているのは、タービダイトと呼ばれる人物と、テラであった。
「海底王国に潜入し、仰られていた二名のカギを発見することができました。しかし、邪魔が入り、始末することができませんでした。申し訳ございません」
「そうか」
「成果といたしましては、アスターンの始末に成功したことです」
「ほほう、アスターンとな」
「はい」
「因縁の相手に決着をつけられたのか」
「まあ、良いじゃろう」
「これで成果がなければ、お主を危うく消し飛ばすところじゃった」
「そうかそうか、やはりカギは実在したか!」
タービダイトは、そう言って甲高い声を響かせて笑う。
「なら、今後の方針も決めていかねばなるまいな。プロテウスを殺すために」




