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帰る場所は海の底  作者: cat-run
第四章 深海突入

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第二十九話 旅路

第四章 深海突入

       第二十九話 旅路


 カイたちは今、エビぐるまに揺られ、北の地ペルシアへ向かっている。


「到着は夜になりそうだ」


 地図を見ながら、ノースが言う。


「すごいっすよ、先輩! なんすか、あれ!」


 ポートは、次々と現れる未開の地に興奮しているようだった。


 カイはというと、バッグの中から海藻で包まれた何かを取り出す。


「なんすか、それ?」


「これはね……」


 焦らすカイ。


 そして、包みを開く。


 中から出てきたのは、イワシをバンズで挟んだ、ハンバーガーのような食べ物だった。


 ポートは興味津々に見つめる。


「マールが作ってくれた、イワシバーガーでーす!」


 その言葉を聞いた途端、ノースとポートは嫌な笑みを浮かべる。


「愛妻弁当だな」


「あいさいべんとうっすね」


「ポートまで何言ってるんだよ!」


 愛妻弁当というものをポートは知らない。


 だが、ノースの言い方を見て、何かを察したようだ。すかさず復唱する。


 イワシバーガーを食べながら、三人は仲良く談笑した。


 マリネアを出て、草原へ出る。


 海底の草原は幻想的で、エメラルドグリーンの光を海藻が反射している。


 しばらく進んだところで、カイはふと疑問を口にした。


「なあ、前々から思ってたんだけど、この徽章のおじいちゃんって誰なの?」


 徽章の中心には、老人の横顔が形どられている。


 こういう機会に聞いておくのも悪くない。


 しかし、二人はその言葉を聞いた途端、動きを止めた。


 しばらくの沈黙が流れる。


「先輩、知らないんすか⁉︎」


「おいおい、嘘だろ、お前……」


 ポートでも知っているということは、世界共通の常識なのだろう。


「ほら、俺、この世界に来てまだ一年も経ってねーだろ?」


 自分は無知なわけではないということを、必死に弁明する。


「その人は……」


「四大神の一人、ポセイドン様だ」


「よんだいしん?」


 思わずポートみたいな反応をしてしまう。


「四大神は、水、炎、土、雷を司る神様のことっすよ」


「ポセイドン様は水を司る神様で、海底王国の建国者だ」


「海底王国の建国者ってことは……」


「プロテウス様の先祖だ」


「なるほど……」


 新事実だ。


 ポセイドンという名前は、地上でも耳にしたことがある。


 やはり、多少は歴史や神話がリンクしているらしい。


 だが、あのポートが博識に見えてしまう自分が、なんだか恥ずかしい。


 エビぐるまの旅は、長く続いた。


 空が暗くなってきた頃――


「もうすぐ到着します」


 御者さんの言葉とともに、前方から街が見えてくる。


「あれが、ペルシアっすか」


 ポートが感嘆の声を上げる。


 ペルシアの街は、マリネアとは違い、田舎のような印象を受ける。


 そこら一帯に、古民家が広がっていた。


 ペルシアの街へ入り、古民家の間を縫うようにして、エビぐるまは進んでいく。


 やがて、街の奥から、れんが造りの巨大な建造物が見えてきた。


「あれが……」


「海衛団第二拠点でございます」


 カイの言葉を引き継ぐように、御者さんが言う。


 近づくにつれ、その大きさに圧倒されていく。


「こんな街には、場違いすぎるだろ……」


 入り口が見えてきた頃、入り口の前に人影を見つける。


 暗くてよく見えない。


 だが、人間の頭ではないことだけは確かだった。


「カニだ」


 頭はカニだが、頭から下は執事服をビシッと着こなしている。


 入り口の手前で、エビぐるまが停車する。


「お待ちしておりました。カイ様、ノース様、ポート様でございますね?」


「はい」


「長旅、ご苦労様でした。私は海衛団第二拠点管理人のタラバと申します」


 男は丁寧にお辞儀をした。


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