第二十五話 帰結
第三章 泥沼
第二十五話 帰結
戦場には、デニズとテラの二人。
そして、デニズの腕の中には、戦い抜いたアスターンが眠っている。
この状況を打開しなければならない。
だが、感情任せに動いても、良い結果はついてこない。
それは、腕の中で眠る恩師から教わった言葉だ。
二つの感情が渦巻き、デニズは硬直していた。
一方、テラも腕の中のアスターンを見つめている。
十五秒ほどの硬直状態が続いた後――
テラが土の腕を振りかぶる。
しかし、その腕が振り下ろされる前に、何かがテラの胸を貫いた。
「あ?」
テラは、自分の胸を見つめる。
タコの触手?
触手が引き抜かれたと同時に、テラが振り返る。
しかし――
次の瞬間、触手による連撃を正面から受けた。
「ガハッ」
デニズも、攻撃を仕掛けた者へ視線を向ける。
そこには、タコの頭をした衛兵が立っていた。
胸には、青緑色の徽章。
「海衛団第三部隊隊長、タコ郎。ただいま参上した」
「タコ郎さん!」
「デニズ、すまない。ここへ来るまで手間取った」
タコ郎の目に、デニズと、その腕の中にいるアスターンの姿が映る。
タコ郎は何も言わず、そのままテラの方へ向き直った。
「我が国で暴れているのは貴様か」
「次から次へと忌々しい。心の広い僕にも限度があるんだよ!」
「ただ――」
テラは、ふっと笑う。
「ひとつだが、やりたいことはできた。今日のところは退散しよう」
「待て、逃さんぞ」
タコ郎が追撃する。
しかし、その攻撃も虚しく、テラは砂となり、風に乗って飛んでいった。
「くそ」
「やはり、退院直後は動きが鈍るわ」
「タコ郎さん、その……」
「何も言わんでいい。お前のせいではない」
「でも、なぜタコ郎さんがこんなところに? 管轄外でしょう」
「あの嬢ちゃんと、ばったり出会ってな」
タコ郎の視線の先には、マールがいた。
マールはアスターンの姿を見て、硬直する。
「アスターンを解放してやろう」
タコ郎がデニズの背中を叩く。
外は、少しずつ明るくなってきていた。
――早朝。
王城内には、アスターンの訃報が届けられていた。
「そんな、アスターンさんが……。まだ、何にも教えてもらってないですよ……」
カイは寮の部屋で、机にゆっくりと伏せる。
「そうか、アスターンが……」
外から差し込むエメラルドグリーンの光に目を細めながら、プロテウスは一言呟いた。
こうして、事件は大きな傷跡を残して幕を閉じた。




