第二十四話 後味
第三章 泥沼
第二十四話 後味
「いける!」
勝利への兆しが見えてきた。
テラの顔は、怒りで歪んでいる。
「デニズ、もう一度行くぞ」
デニズが走り出す。
それと同時に――
「何度も同じ手を喰らうかよ」
そう言って、テラの背中からニョキニョキと土でできた太い腕が生えてきた。
降りかかる巨大な拳を、デニズは剣で受け止める。
しかし、その威力を完全に受け止めきることはできず、デニズの体は三十メートルほど吹き飛ばされた。
アスターンも渦潮で応戦するが、太い腕によってかき消される。
「くそ」
「おいおい、さっきの威勢はどこへ行ったんだ?」
巨大な拳が、再びアスターンへと迫る。
それに向かって、アスターンも拳を振るった。
水流拳と土の拳が激突する。
周囲に砂埃が舞い上がる。
しかし、力で押し負けたアスターンも吹き飛ばされてしまう。
「あと、それ返して」
そう言って、テラが拳を握る。
すると、ジャム瓶の中に入っていた土塊から、勢いよく無数のトゲが飛び出した。
瓶は砕け散り、解放された土塊たちは、テラの体へ戻っていく。
「本当に君らは哀れだね」
そう言い残し、テラは周囲を見渡す。
「ターゲットの女は? クソ、また逃したか……」
テラがそう考えていると、背後からデニズが斬りかかってきた。
「しつこいな……」
テラの裏拳が、デニズに炸裂する。
離散した土を封じても、攻撃を与えても、こいつには効かない。
「泥沼だ」
デニズが呟く。
「くくく、想定外のことが多かったが、隊長の首はいい手土産になる」
そう言って、テラはデニズへ近づいていく。
デニズは起き上がり、呼吸を整える。
――来る!
「あっ?」
テラは不意に横を向いた。
その先にあったのは、水球。
それも、半径十五メートルほどもある巨大なものだった。
テラはそれに気づいたものの、動き出すのが数秒遅れた。
次の瞬間――
水球がテラに直撃し、爆散する。
砂の混じった水煙が、辺り一帯に広がった。
すかさず、デニズとアスターンが距離を詰める。
次の瞬間――
デニズの体が宙を舞った。
「は?」
体に強い衝撃が走る。
そのまま地面へ転がった。
水煙は、まだ消えていない。
「どうなった?」
そのとき――
ドカン――!
轟音とともに、アスターンが水煙の中から飛んできた。
デニズが、とっさに受け止める。
「アスターンさん、アス……」
アスターンの胸には、先端の鋭く尖った土の破片が突き刺さっていた。
身体から体温が抜けていくような感覚に襲われる。
水煙の中から、二つの赤い光が近づいてくる。
テラの赤い瞳が、妖しく輝いている。
「ククク、三十年越しの決着といったところかな」
横たわるアスターンに向かって、テラが口にする。
「テ、ラ……」
アスターンが、かすかな声で呟く。
「すまな、かっ、た……」
その言葉に、テラは目を見開いた。
「なぜ謝る? おい、答えろ」
しかし――
アスターンが答えることは、もうなかった。




