第二十二話 泥沼の先に
第三章 泥沼
第二十二話 泥沼の先に
「カギ……」
この世界に来て、耳にした言葉。いまだに、その意味が分からない。
「お前がどんな答えを欲しているのか知らないが、俺は答えるつもりがない」
知っていたとしても、このまま正直に答えれば、すぐに殺されるだろう。ここは黙秘を使う。
「くくく、いくら頭を使ったところで無駄だよ、カイ兄ちゃん」
「この質問はただの興味本位。別に黙秘を行使したところで、僕は気にせず殺すよ」
「ぐっ……」
「さあ、本当のことを言うなら今のうちだよ。答えてくれたら、カイ兄ちゃんに有益な情報を与えて、あの世へ見送ってあげるよ」
「………わかった」
「俺はカギっつう言葉は聞いたことがあるけど、それがなんなのか、俺にはさっぱり分からねー。もし何か知ってるなら教えてくれよ」
「へー、カギを知らないんだ」
「カイ兄ちゃん、かわいそうだね」
「?」
テラの言葉の意味が分からない。
「じゃあ、カギが何の鍵を指すのか教えてあげる。僕は約束は守るタチだからね」
「約束は普通に守れよ……。それで、何の鍵なんだ?」
「それはねー」
「焦らすなよ」
「世界」
「は?」
「カギってのは、世界の鍵って意味。あとはあの世で考えてね」
そう言って、地面から土がニョキニョキと生えてきた。先端は鋭く尖っている。
「じゃあね」
そう一言添えて、先端の尖った土の矛先がカイへ向けられる。
どうすれば……。
そのとき、カイに向かっていた土が軌道を変え、テラの体を守るように伸びた。
「チッ……」
テラが軽く舌打ちする。
その直後、水の触手のようなものがテラの体を縛りつけた。
「随分と早い到着だったね。アスターン」
「終わりだ。観念しろ」
「くくく、僕には終わりという概念がないんだよ。老化で忘れちゃった?」
「アスターンさん!」
すると、水の触手に溶かされるように、テラの体が崩れていく。
ドロドロに溶けたテラは触手の隙間から流れ出し、地面へと落ちていく。
すかさず、アスターンの手から水が炸裂した。
溶けたテラは水によって、さらに散り散りになる。
「やったのか?」
しかし――
地面に落ちた土の塊が動き出す。
散り散りになった土は、いくつもの塊となったまま、出口へ向かっていく。
「させるか!」
アスターンは渦潮を生み出し、土の塊たちにぶつける。
ものすごい量の水が、倉庫内を駆け抜けた。
「大丈夫か?」
アスターンがカイの元へ駆け寄り、縄を解いてくれた。
「ありがとうございます。助かりました」
「礼なら、そこの二人に言うといい」
見ると、倉庫の出口にノースとポートが立っていた。
「ノース! ポート! 無事でよかった!」
二人の元へ駆け寄る。
「先輩も無事でよかったっす」
「本当に良かった」
三人で抱き合う。
「再会を喜ぶのもいいが、まだ戦いは終わっていない」
「へ?」
「奴は、ほぼ不死身に近い。おそらく、儂の術でも倒しきることはできなかったはずじゃ」
「そんな……」
ここで、嫌な予感がした。
一筋の汗が頬を伝う。
「あいつ、もう一人殺すって言ってた」
まずい!
犠牲者が出てしまう。
「急いで行かないと……」
「君らはここで待っていなさい」
「また、待機命令っすか?」
ポートが痺れを切らしたように声を上げる。
「相手は強大じゃ。それに、逃げることは恥じゃないぞ!」
そう言うと同時に、足元から水が吹き出した。
アスターンはその水に乗り、そのまま行ってしまった。
「アスターンさん……」
「それにしても、どうしてここが分かったんだ?」
「ここに来る前にあいつと対峙してたんだけど、そのときにくらわせたアスターンさんのアクアエネルギーが、奴の体内に残っていたんだ」
「つまり、それを追ってきたと……」
「へー」
さすがとしか言いようがない。
帰ったら、特訓してもらわなければ。
しかし――
アスターンの背を見たときに感じた、嫌な予感を拭い去ることはできなかった。




