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帰る場所は海の底  作者: cat-run
第三章 泥沼

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第十七話 予兆

      第三章 泥沼

       第十七話 予兆



 早朝。


 カイはクローゼットの前に立っていた。


 隊服に袖を通す。胸元には、紫色に輝く徽章が飾られている。


 今日から、新しい任務が始まる。


 これまで行っていた訓練の時間はなくなり、一日を通して海底王国のパトロールに徹することになる。


 それに伴い、今日からパトロールを専門とする第四部隊に所属することになった。


 さらにレベルが上がれば、他の部隊へ移ることもできるらしい。


 つまり、この第四部隊は海衛団に所属する者なら、誰もが一度は通る道なのだ。


 今日はまず隊長へ挨拶をし、その後、実際にパトロールを行う予定になっている。


「おはようございます! 朝から張り切ってるっすね、先輩!」


 ポートが起きてきた。


「まあ、新しいことには誰だってワクワクするだろう?」


「いいっすね! そう言われると、俺もなんだか気合いがみなぎってきたっす!」


 俺がワクワクしている理由は、それだけではない。


 久しぶりに王城から外へ出られるのだ。


 もしかしたら――マールにだって会えるかもしれない。


 そんな淡い期待を胸に、カイは食堂へと向かった。


「おはよう、ノース!」


 一足先に席を取っていたノースへ、元気よく挨拶する。


「今日は一段と元気だな」


「久々に外に出られて嬉しいんだよ!」


「ハメを外さないようにしろよ」


「ああ、わかってる」


 第四部隊の隊長へ挨拶するため、新しく入隊した俺たちは講義室へと集合した。


「隊長って、どんな人なんだろ」


「何せ、海衛団を率いる存在っすからね。かなりの実力者でしょうね」


「そういえば、隊長の徽章って何色に光るの?」


「そんなことも知らないのかよ」


 ノースが呆れたように口にする。


「青と緑の中間の色だよ。ちなみに団長は緑色」


 ん?


 青と緑の中間色……?


 どこかで見覚えがあるような――。


 そう思った、その瞬間。


 講義室の扉が開いた。


 そして、一人の男が入ってくる。


「は?」


 黒髪のマッシュルームヘア。


 腰には、金色の柄をした剣を携えている。


 その人物には、見覚えがあった。


 初めて王城へ行ったときの帰り道。


 マールも一緒にいた、あのときだ。


 あの男は俺に――「カギにはなるな」と、訳のわからない警告をしていた。


「第四部隊へようこそ。俺は第四部隊隊長のデニズだ。これからよろしく」


 デニズは教壇に立つ。


「これから、軽くオリエンテーションを行う」


 オリエンテーションを終えると、さっそく実際にパトロールをすることになった。


 正直、デニズに聞きたいことはたくさんある。


 だが、今はぐっと堪え、パトロールに専念することにした。


 パトロールは二人一組で行うことになっており、俺はポートと組むことになった。


「ワクワクしますね、先輩!」


「先輩?」


「あっ、ごめん。どうした?」


「先輩、なんか変っすよ?」


「そう? いつも通りだと思うけど……」


「ときどき、隊長の方を見てるっすけど……あの隊長に、なんかされたんすか?」


「いや、そういう訳じゃ……」


 なんといえばいいのかわからない。


「なんかあったら言ってくださいね!」


「まったく、頼もしい仲間を持ったよ」


 出発前に、非常時用のベルを渡された。


 なんでも、これを鳴らせば隊長が駆けつけてくれるらしい。


 こうして俺たちは、パトロールへ出かけた。


 久しぶりに歩く街は、相変わらず活気にあふれている。


 そんな街を歩いていると――。


 ドカッ。


「すいません! お怪我は?」


「ごめんなさい。へへっ、昔から注意力散漫なもんで……」


 どうやら、誰かとぶつかってしまったらしい。


 ぶつかる直前まで、まったく気がつかなかった。


 ぶつかった相手へ視線を向ける。


 そこにいたのは――茶髪に、赤い瞳をした少年だった。


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